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タメ口先輩とへりくつ野郎の青春記録  作者: 遥風 かずら
第一章:先輩?との出会い
13/22

13.見知らぬおみ足には親切にするのがモットーです。


 朝からエライ目に遭ったと思ってはいけないのだが、相手が先輩ではなく密かに好意を抱いている天然菩薩さまだっただけに、色んな意味でヤバかったと言える。


「アレはしゅうが悪いよ」

「お前には関係無いと思うが?」

「大体何で実乃梨ちゃんに好かれようとしているのか、僕には分からないよ。しゅうの好みはおみ足とか、どっちかというと変態思考じゃんか! それなのに真面目で優しい実乃梨ちゃんに好かれるとか虫が良すぎるよ」

麻野あさのが優しいって? ふっ、俺は彼女の闇を垣間見た。アレはただもんじゃない。だからといって、嫌いになったわけでは無い。もちろん、難攻不落な彼女に好かれるのは並大抵なことではないくらい理解している」


 去年初めて出会った時から、3Sを繰り広げられた俺とその他の野郎どもにしてみれば、隙の無い天然菩薩さまなことくらい分かっている。だからこそ攻略のし甲斐があるというものだ。今後の課題は、彼女を褒めることが出来るかにかかっているだろう。


「ふざけた敬語だか何だか知らないけど、しゅうってバカにしてると思うんだ。だから怒ったんだよ!」

「アホなことを抜かすなよ。さま付で呼ぶことをバカにしているとか、それこそ優雨の思い違いによるものだぞ。仮に優雨のことを優雨さまと呼ばれても、お前はバカにされているとでも思うのか?」

「……い、いいかも。もう一回、言ってみて?」

「優雨さま」

「全身に寒気が走るくらい気持ちいいかも……それもしゅうからだからかな?」

「電気の間違いじゃねえの? 寒気って、それはアレだ。俺を嫌っている証拠だな」

「嫌いじゃないもん!」

「あーはいはい」


 どうやら優雨さまのオツムは、ちっとばかしよろしくない傾向だ。もちろん、バカにするつもりはないが、兄離れさせないと俺が困ることになりそうだ。


「あーだるい」


 朝っぱらから幸先がよろしくなかっただけに、原因不明のオカン……いや、悪寒のようなものに襲われている。その主は隣の席の妹によるものだ。タメ口先輩がキレるのも理解出来るくらいにウザい空気感を醸し出している。


「次はいつ一緒に帰る~?」

「……おやすみ」

「寝るなー! こんっなに、可愛すぎる妹が熱視線を浴びせているんだぞ! 失礼だと思わないのかー!」


 何故に兄萌えをするのか、俺には理解が出来ない。そして妹からの一方的な深すぎる愛情は、興味の無い兄からしてみれば、重荷でしかない。俺にとっては、妹なんぞよりも綺麗なおみ足が……と思いながら深い眠りについた。


「……くん、起きてくれないか?」

「うーん……だが、断る」

「断るというのかい? いいさ、秋くんの寝顔は私には至高の極みになるというもの。願わくば、このまま永遠に目を閉じてくれたら私を幸せにしてくれそうな予感さえしそうだよ」

「――んっ!? ぬぅっ? ど、どういうわけか首が動かせない……だと? そこに見えるは見知らぬおみ足……いや、太ももか? どこのどいつの……」

「ふふ、よく眠れたのかい? しゅうくん」

「な、なんてスベスベな太もも……いや、待てーい! ここは確か教室で、俺の席でなおかつ、まだ授業中だったはずだ! そのおみ足は何者だ?」


 もちろん聞かずとも口調で分かってはいたが、見知らぬおみ足に出会った時には、名を名乗ってもらうのが俺の流儀であり、習わし。


「秋くんに触れられるためのおみ足さ。これは運命なんだよ」

「楓子か。いや、分かっていたぞ。しかしこうも堂々と足を触れさせるのはどうかと思うぞ? これはもちろん説教などではなく……そう、親切心! まだ見ぬおみ足を含め、俺は見知らぬおみ足には親切にすることをモットーとしている」

「相変わらず、秋くんは優しいね。それはもちろん、足に関係なく……私だからなのだろう? ふふ、分かっているよ。秋くんは私にしかそういう反応を示して来ないことくらいはね」

「お、おぉ、わ、分かっているならいいぞ。それで、そのスベスベな太ももをいい加減、離してはどうだ?」


 今が授業中なのか休み時間なのか、もしくはすでに放課後に突入済みで二人しかいない世界なのか。どちらにしても、今の状況を麻野はもちろんのこと、優雨さまは置いといてもタメ口先輩にすら見られたら、俺はこの先どうやって生きて行けばいいというのか。いや、何でタメ口先輩が脳裏に浮かぶんだ?


「……ふふ、秋くんはそれでいいよ、そのままラストには私の愛を受け止めてくれることを期待する」

「ん、お、おぉ?」

「それじゃあ私は行くよ。このままでは視線の嵐にさらされてしまいそうになるからね」

「何? 今なんて言った……? 視線の嵐? まさかと思うが授業中か?」


 楓子があまりに素直だからこそ、周りの音は全くもって聞こえずにいたのだが、まさか?

 スベスベな太ももを堪能したところで、ゆっくり顔を上げてみると、そこには誰もいない教室の空間が広がっていた。

 これもある意味タチが悪い冗談だ。誰もいないのにあんなセリフを放つとは、あまりいい趣味とは言えない。


「……椿くん、わたしには親切にしてくれないのかな?」

「むっ!? そのお声は麻野……? いや、待てこれは現実か? 俺の目の前には確かに誰もいない教室な光景が広がっているが、どこからこの声は聞こえて来ているんだ……」


 とうとう幻聴と幻を味わえるようになったのか。確かに俺は目が覚めて、楓子のおみ足を味わって……ん?


「今、目の前に見える見知らぬおみ足は誰だ?」

「答えが聞きたいか? 椿」

「もちろんです。え? この声、まさか……」

「そのまさかだ。今は授業中だ。先生の授業で堂々と居眠りをした挙句、女子にセクハラとはいい度胸をしているな。一度、栢森にヤキを入れてもらえ」

「う、うそだろ……?」

「お前もタメ口か? とにかく先生の足から手を離せ! 離さないと会議に椿の名前を挙げることになるぞ?」


 女子にセクハラ……すなわち、さくら先生のおみ足を触りまくっていただと!? 楓子の方が幻か? おいおい、俺はどこの世界へ旅立っていたんだ? 一体どこからがリアルでどこからが夢の世界だったのか。

 とりあえず、今はひたすら先輩に睨まれながら先生に土下座をしまくった。

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