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「で、あるからしてー……」
校長の話は長くて、大半の新入生たちが寝ていた。B組は考え事をしている生徒ばかりだったために寝ている生徒の方が少数だった。
それもそのはずで、校長はすでに話し始めて三十分は経過していたのだ。しかも内容が十分前からループし始めたので、寝る生徒が一気に増えたのだ。
「そのため、我が学園で過ごすにあたり……」
「校長、もういいぞー。代われ」
マイクではなく、肉声で校長を呼び止める人物がいた。そんな不届き者がいるのかと講堂にいる人間がほぼ全員その声のした方向を見た。
そこにいたのはパイプ椅子に足を交差させてふんぞり返っている、三十代前半にしか見えない、長い金髪を後ろでただ結んでいる翡翠色の瞳をした男だった。
一目見て、知らない女性からすれば目を惹かれたことだろう。顔立ちも肌も髪も、全てが整っていてかつ年齢相応の男らしさ、さらには貴族のような気風まで兼ね備えていたのだから。
その席順からして教員枠のようで、近くにいた教員たちは呆れているような、納得しているような顔をしていた。
その男は立ち上がると、壇上に上がり、校長からマイクを奪い去った。そのことに校長はたじろぎながらも、居場所を失ったために壇上から降りていった。
「あー、プログラムを一個飛ばして理事長の式辞だ。紹介に預かれなかったから自分で名乗るが、ルトゥナ・A・バルク・ノアだ。一応この学校の理事長で、簡単に式辞は終わる。入学おめでとう。三年間どう過ごすかは君たち次第だ。魔眼について勉強し、将来に活かしてもいい。魔眼に関わらないいわゆる一般職に進むのもいい。好きに過ごしたまえ。学校生活を満喫しなさい。君たちにはその権利と義務と自由がある。以上だ」
そう言い切って、マイクをスタンドに戻してすぐに自分の席へと戻っていった。本当にすぐ終わってしまい、起きない生徒もいたため聞き逃した生徒も多かった。
「え、あー……。続きまして、新入生総代、挨拶。新入生総代……」
それまでは起きていた一年B組の誰とも話さなかった少年はそこから寝始めた。そこからは全く興味がないように。
明日も18時に一話投稿します。