彼の夢 1-1
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オケアマス学園。ユーフォテイム国にある私立高等学校。そこは創立五十周年を迎える学園であり、今日は五十回目の入学式が執り行われる予定になっていた。
そんな新入生たちがこれからの生活に心を躍らせている一年B組の教室の中で、二人の生徒が特に嬉しそうでもなく、ただ時間が過ぎるのを待っていた。
一人は茶髪に紅い眼、黒縁の眼鏡をかけた少年。身長は男子の平均的な高さであったが、身体つきはがっしりしている印象を受ける。かといって何かのスポーツをしているようだとか当てはめることはできず、ただ体格が良いことしかわからなかった。
この少年はたまに教室の前にある時計を見る以外はどこを見ているのか、何を考えているのかわからない様子で、ぼおっとしていた。知人もいないようで、することもなさそうだった。
もう一人は黒髪長髪ストレートに、黒い瞳をした少女。こちらの少女はずっと何かの本を読んでいるようで、他のことは一切気にしていなかった。
そんな二人が隣の席同士でいることが、教室内で異質な空間を作りだしていた。積極的な子が話しかけようにも、話しかけづらい空間が出来上がっている。
ある程度前まで通っていた学校の地域から近い生徒が集まっているはずなので、顔見知りもいたりはする。
魔眼の能力、及び学力が優秀ではないと入れない学校であるためそれなりの人気校なのだが、この二人を周りの生徒は見たことなかった。
この学校に入るためにわざわざ遠くの地域から来たのか、もしくは外国から来たのではないかと勝手に推測を立てて、彼らと話すことは後回しになった。
始業のチャイムが鳴る本当に直前で担任の四十代過ぎた男の先生が教室の中に入ってきたため、席を立っていた生徒たちは慌てて自分の席に戻っていった。
担任が教壇に着いたのと同時にチャイムが鳴った。その正確さに思わずただぼおっとしていた少年が思わず「おお」と感心してしまった。
偶然であっても、計画的であってもどちらでも結局彼は感心していただろう。
「おし、時間になったし簡単に説明するぞ。これから入学式だから全員出席番号順に男女一列ずつ並べー。俺の自己紹介とかは後な。入学式が終わったら全員に自己紹介してもらうから。入学式の最中に何話すか考えてろよー」
先生のその言葉に教室中で笑いが起きていた。その様子を見て教壇の上で先生も笑っていた。
入学式の内容を聞かずに後の時間にある自己紹介で話す内容を考えていろと言う先生がいるであろうか。
「お前ら、どうせ入学式寝るだろ?それよりは寝ないで自己紹介の内容考えていた方が俺がお前らを起こさなくて済む。俺も他の先生に怒られないからな。聞くのは理事長の話だけでいい」
「先生、ぶっちゃけすぎですよ」
一人の男子生徒が笑いながらそう言うと、先生の方も面倒くさいように、本音で語りだした。
「俺だって学生の頃は寝て怒られたんだから、良心的なアドバイスだと思うがなぁ。どうせ校歌とか覚えてないだろ?口パクするくらいなら自己紹介の内容考えとけって。お互い怒られないための妥協案だと思うんだが」
「先生がそう言うならそうしますけど……」
「よし。そういうことだから、廊下に並べー。お前らはA組の後に付いていけばいいから」
午後にもう一話投稿します。