彼の始まり~プロローグ2~
その日は三歳の誕生日だった。
産まれてくる子はほぼ全員、魔眼を発現するようになっていた。そのため、三歳の誕生日に魔眼を検査する施設を家族で訪れ、調べるように全世界で法律化されていた。
魔眼の発現は三歳になった瞬間であった。つまり、産まれた時間その時に魔眼を発現し、それ以降力を使うことができるようになった。
そのため病院の方でも産まれてきた子の正確な時間を書き留め、役所で厳格に管理していた。そうでなくては魔眼を暴走させる子どもが現れるからだ。
実際に小さな子ほど魔眼の制御ができず、家族に被害を出すことも多々あった。そのため強力な魔眼を持った子どもや、制御ができない子どもは管理施設で保護という名目上その名の通り管理されることもある。
検査施設で順番待ちをしている家族がいた。
眼鏡をかけた少し太っている父親と、スレンダーで優しそうな母親、母親の膝の上に乗っている男の子の三人。男の子が三歳の誕生日を迎えるまで、あと二十分ほどであった。
施設の女性に名前を呼ばれ、家族全員で一つの部屋に入った。
男の子だけ目隠しを付けさせられて、椅子に座られた。その上で手足を固定していた。
これは魔眼の暴走を防ぐためなのだが、急にこんなことをされたら三歳になる直前の子どもであったら誰でも泣き出す。
それはこの男の子も例外ではなかった。
それでも泣いても意味がないことがわかったのか、数分後には泣き止んでいた。
家族や研究者たちは子どもとは別部屋に待機しており、目隠しを外すことすらアームロボットに任せている。
それほど魔眼の種類によっては危険なのだ。
魔眼の種類は遺伝的な関連性があまりないことが結論付けられている。親と同じ魔眼が発現することの方が稀だからである。
両親が二人とも同じ魔眼であったら子どもも同じ魔眼になることもあるが、その組み合わせですら同じ魔眼になる可能性は低いのだ。
研究者の一人が時間を確認し、カルテに書いてある時間も確認してうなずいた。それを合図にして施設の人間が機械を操作して、男の子の目隠しを取った。
男の子がいる部屋は二十畳以上の大きな部屋一面白い壁に囲まれており、その壁はかなりの強度で作られていた。
どんな魔眼が発現するかわからないのだから、予防線をいくら張っておいても足りないくらいなのだ。
男の子は目隠しを取られて、魔眼も発動しているようなのだが、何も起こっていなかった。そのことで両親が首を傾げていたが、研究者たちはさすがに慣れていた。
「肉体強化系統などの、人の内部に作用する力かもしれません」
「なるほど……。私も妻もそういった力ではないので気付きませんでした」
肉体強化系統の魔眼を持っている協力者に部屋の中に入ってもらい、魔眼を使ってもらい、視界に入ってもらうことにした。そうしないと、何の魔眼だか把握できないのだ。
男の子の左目の視界に協力者の男が入った途端に男は突然倒れた。その倒れ方は不自然で、倒れる直前に心臓を押さえるような素振りをしたと思ったらその男は動かなくなっていた。
男の子は何が起こったのかわかっておらず、研究者たちもざわついていた。
そして次の瞬間。
最大級の危険レベルを知らせる警報が施設中に甲高く鳴り響いた。
明日も一話投稿します。