ネットニュースを見て思わず叫んだ…………「神は死んだ!」
この物語はフィクションです、実在する人物ry
その日神は死んだ
俺の聖剣 白州ハツバイキュウシの一撃で、神は体を大地に縫い止められた
黒髪の美丈夫、この世界の唯一神 ラブアンドピース様は苦しげな表情で俺を見つめている
「な、何故この様な事を……」
自分の身に起こった事が理解できないのか、それとも俺がした事が信じられないのか、聖剣に貫かれながらも、俺を心配するような表情で問いかけて来た
ハァー……俺は深いため息を吐き、自分の罪を知らない神を睨みつける
「自分がやらかした事をまるで理解してないようだな……」
「私がやらかした事……だと……」
言外にお前に非があると言ってるのに、心当たりが無いとでもいうような顔をしやがった
ならば……教えてやるよ、お前の罪を!
「俺は毎日仕事から帰って、ちょっといい酒を1杯呑むのを唯一の癒しにしてたんだ……」
「……」
所謂晩酌だが、俺は酔う為に飲んでる訳じゃ無い、単純に美味しいから飲んでるのだ
故につまみは無い、あってもせいぜい塩かオリーブの実くらいだ
タンプラーを氷で満たしてから酒を注ぐ……それをゆっくり呑むのが、俺のプライベートタイム、中二風に言うと、魂を癒す黄昏時なのだ
……それを、その大切な時間を…………
「それなのに、俺が今一番ハマってるウィスキー《白州》が発売休止になったんだ!」
「あー、なったね」
ブチッ!と何かが切れる音がした、それはきっと堪忍袋……はもう切れてるから、理性とかだったのだろう
「なったね-、じゃねーよ!お前の責任だろうが!」
「ちょっ、なんで!」
おいおい、素でびっくりしてんじゃねーよ、まさか知らなかったとは言わせねーぞ
俺は聖剣をグリグリとラブアンドピースに体重をかける
「痛いっ、ちょっ痛いから!」
「ならしらばっくれるんじゃねーよ!俺がどれだけ絶望したか分かるか!ネットニュース見て、飲みかけのコーヒーを落としそうになったんだぞ!思わず会社の同僚に「今日飲みに生きません?奢りますよ」と言って散財しちまったんだぞ!」
ふーふーふー!荒ぶる俺の心に呼応するかのように、聖剣白州ハツバイキュウシから怒りのオーラが溢れ出す
これは俺の絶望より生まれた神を恨む心その物
「聖剣じゃないよね!」
白州の発売休止を聞いて、神は死んだと思った裏返った信仰心
「僕のせいじゃ無いよね!完璧なとばっちりだよね!」
俺はこれから何を晩酌の酒にすればいいんだ……
「他のお酒買いなよ!最近なら台湾のカバランとか有名じゃないか」
ピクッ
「カバラン……だと……」
今……神は……言ってはいけないことを言った……
「あれ……もしかしてカバラン嫌い?」
ドンッ!
俺は力の限り大地を踏み神を睨みつける、人の気も知らないで、よりによってカバランの名を出すとは、万死に値する!
「……カバランは飲んだ事がない……」
「じゃあなんで怒ってるんだ?……もしかして台湾が」
「一度行った事があるが、飯は美味いし人情気溢れる人が多いしで、かなり楽しかった」
「なら、何が「近くに売ってねーんだよ!!」」
「は?」
そう、近場はもちろん車で一時間圏内でも売ってある店を探し出せなかったんだ……正確には売ってある店はあった、ただし諭吉が飛んでく値段のしか無かったんだ
だから俺は飲んだ事が無い、飲みたいのに買いたいのに、飲んだ事が無いんだ…
「ネットで買えよ」
すごく冷たい目で神がこっちを見ている、だから俺もすごくバカにした顔で言い返した
「独り暮らしなのに、誰が受け取ってくれるんだよ」
「……土曜日とかの休みに」
「日曜日しか休みない」
「郵便局に…」
「毎日残業で終わった頃には閉まってる」
「会社に届け…」
「酒とか宅配頼んだら間違いなく始末書だな」
「実家に…」
「車で二時間の距離だ、それを無視しても、酒なんか宅配したら、飲むなと言っても飲まれる」
「いやいやいや、それは…」
「正月休みに奮発して、家のも別に買ったにも関わらず、ローストビーフが食われてた……俺が帰って来たときに残ってたのは、ローストビーフにかけるキャビアソースだけだった……」
「えっと……ドンマイ」
顔を背けてドンマイと言われても、全く嬉しくないわ!
「さあ、白州が飲めなくなった絶望と、ローストビーフの恨みを味わうがいい!」
俺は神を縫い止めている聖剣に手を添えると、ありったけの恨みを込めて力を解き放つ
「ちよっ、だから痛いって、暴力系ヒロインが許されるのは二次元だけなんだぞ」
くそっ、神の癖に余裕がありやがる、俺の負の心が足りないのか?もっと、もっとだ
高校時代に好きな子の隣の席になってハイテンションになって、翌日席を代わられた事を思い出せ
初めてのコンパで自己紹介をダダ滑りした事を思い出せ
中学の卒業文集を……
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
「そんな黒歴史で滅んでたまるか-!だいたい発売休止は白州12年物だけだから、高いやつか安いやつ買って我慢しろよ!」
「え?12年物だけなの?」
うっそだー、あっ……スマホで調べたら発売休止は12年物だけって書いてある…………俺がいつも買ってるのは安い四千円のやつだから、関係ないのか
「おい……聖剣が消えたけど、これはどういうことなのかな?」
勘違いだと気付いたから、負の感情で出来てる聖剣が消えたんだよ、だからこめかみをピクピクさせながら近づいて来るのは止めて
「…………土下座したら許してくれる?」
とりあえず正座しながら聞いてみる
ハアー、と疲れ切ったようなため息を吐くのは地味に傷つくから、止めて
「お前らさー、漫画が打ち切りになったり、ゲームの続編が出ないとか、好きな人が引退したとかで、神は死んだ!やら、神を呪う!とか、ホント止めてくれない?僕悪くないじゃん!」
あーうん、神様も辛いんだね、ゴメンて……これこのまま愚痴聞くパテェーンかな……よし
「僕がなにしたって言うんだよ、これでも毎日一生懸命に世界を管理してんだよ、唯一神とか言われるけど、それって独身って事だよ、わかる?僕だって本当は…」
「よし、飲みに行こう!聞き上手で可愛いねーちゃんが居る店知ってるからそこ行こう!なっ!」
無理矢理肩を掴んで歩きだす
個人的にはキャバ行く金があるなら、高いけど美味い居酒屋とかに行きたいけど、こういう手合いはキャバ嬢に丸投げするのが一番楽だ
「財布と携帯持ったか?なら行くぞー!」
戸惑う神様をガッチリホールドして歩き出す、これから向かう店は酒の肴は出前ばかりだが、美味しいお酒は置いてある店だ
お姉ちゃんの相手は神様に任せて、俺はいつもなら絶対頼めないようなお酒を飲もう
そうだ、白州の18年物を飲もうかなー、なんと言っても、お客様が神様なんだから
「…………言っておくが、ワリカンだからな」
「そんな……神は死んだ!」
オリーブの塩漬けとトマトって最高の酒の肴だと思う




