表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/53

15。泣くのはここだけ

「イチはなんで痛かったり辛かったりを話してくれないんだろ?」

 イチの入って行った処置室のドアを見ながら言葉が漏れる。


「昔からじゃん。カッコつけぇ」

 ジュニアも処置室から目を離さない。


 小さい頃はあたしもジュニアも泣き虫で、辛い訓練の後とかイチにはいつも怒られてた。

「泣くのはここだけだぞ。他では泣くなよ」

「うっわっっ。懐かし。そして腹立つ」

 ジュニアと顔を見合わせる。


「あはっ。ホント、ガキが粋がっちゃってさ。

 あたしイチが泣くとこ見たことないかも」

「僕あるよ」

 にまぁっと悪い顔。


「えぇっ。いつ?」

「カエが間宮家に引き取られた日」

 っっ。

 鼻の奥がツンとして目が潤む。

「知らなかった」

「黙ってるって約束したからね。

 あ。言っちゃった」


 クスリと唇から笑みが漏れる。

 そもそもジュニアに黙っておけ。なんて無理難題。


「じゃあ共犯。あたしも黙ってる。

 ジュニアは? 腕大丈夫?」

「僕のは医療用ホチキスでバチンてしただけだよ。半袖にされちゃったけど」

 袖を切られた腕には白い包帯がキレイに巻かれている。

「ミーナさん。あんなんでもやっぱりナースなんだねー」


 ガチャリと音がして処置室のドアが開きミーナさんが顔を出す。

「2人とも入ってぇ」



 処置室の中、ベットカーテンの敷かれたこっち側にドクターと白黒のモニターが見える。


 チラチラ動く荒い画像の一部を指し。

「ここ。黒い塊が見えんだろ? 少量だけど出血が見られる。今日はとりあえず入院して、明日また検査だ。

 出血が収まっていればそれでいいし、拡がっていたらうちじゃ手に負えんから、デカイ病院に行ってくれ」


 ギュッと心臓が痛くなる。

「ドクター。気付いてくれてありがとう。

 大丈夫。だよね?」


 困ったようにぽりぽりと頭を掻く。

「まぁ、少量だしな。何にせよ香絵の消毒が終わったら今日は帰れよ」


「イチと話せる?」


「ちょっと待ってろ」

 ドクターが中に入り、少ししてカーテンが開いた。

 ベッドから身を起こそうとするイチ。


「何でちゃんと痛いって言わないのよ」

 開口一番つい文句が口をつく。


「まぁ、こっちもいろいろ都合があるんだよ」

「意味わかんないし」

 まさに売り言葉に買い言葉。


「とりあえず僕達は帰るね。

 また明日来るから」

 スッと会話の隙間に入ってきたジュニアに肩を押されてドアに向かう。


 あ。

 気づけなくてゴメン。

 言いそびれちゃった。



 ###


 寮のリビングでは、イチを除く4人が顔を見合わせるている。

 今日の出来事の擦り合わせ。

 黒スーツは、巽さんのところでカップルA(カイリとリカコさんね)を襲撃した上の銃刀法違反で検挙。という形になったらしい。


 世に言う「別件逮捕」ね。

 イチの事は明日の検査待ち。

 こういう仕事だし、怪我することも全然珍しくなんてないけど。


 みんなが揃わないのはやっぱりイヤ。


「とりあえず黒スーツ、地下室、高富氏。

 こっち方面はひと段落かしら」


「巽さんが言うには、本庁に身柄を引き渡されてそっから販売ルートなんかの解明にまわるだろうって。

 会社内でも、重役の何人かは密売に関わっていたし、黒スーツに面識あるのもいるだろう」

 リカコさんの言葉をカイリが継ぐ。


「全く手付かずの事があるよね?」

 不満そうなジュニアの声。

「爆弾の件ね」

 分かってます。とばかりのリカコさん。


「そっちは明日葵ちゃんに当たってみる。

 ジュニアが言っても聞かないのは今に始まった事じゃないし分かってるけど、〈おじいさま〉の手前もあるんだからホント、ホンットに注意して動いてよ」


「僕しばらく葵ちゃんに顔合わせらんないなぁ。

 一課のデータベースにハッキングしとこ」

「聞いてんのっっ⁉︎」

 ポーッとくうを見つめてつぶやくジュニアに、リカコさんの額に青筋が浮かぶ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i341773
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ