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支えてくれている夢の話

沖縄民謡を習い始めて結構な年数になりますが、あまりの下手さ、上達の無さに辞めようと思ったことが過去に数回あります。

その度に様々な人たちに励まされ、慰められ、助けられ、力づけられて、そのお陰でなんとか続けています。

それでも、ある時もう辞めよう。と決めた数年前の夜。夢を見ました。


私は三線(さんしん、と読みます。所謂蛇皮線です。)を入れたケースを背負い、電車に乗りました。車内はお年寄りばかりで、座席がほぼ埋まっている程度の混み具合です。空いていた所に座りながらケースを下ろし、身体の前で抱くようにします。

すると、隣に座っていたおじいさんが、

「おや、三線だね。島唄(沖縄民謡のことです)習っているの?」

と話しかけてきました。

「本島の唄だけですけど。」

私がそう言うと、その車内に乗っていたお年寄りたちがわざわざ席を立って口々にアドバイスをし始めたのです。曰く (方言は標準語にします)

「声の良し悪しは気にしない方が良い。」

「歌詞の意味は出来るだけ調べなさい。」

「歌なんぞ誰にでも歌える。上手い下手は気にするな」

「アクセントに注意して」等々。

方言で話してくるので聴き取るのに必死になっていたら、私の前に小柄なおばあさんが来て、私の手を両手で包むようにしながら握ると、

「歌はね、歌い継いでいくものだけど、それを聞いた人が『ああ良い歌だなあ、もう一度聞きたいなあ』と思ってくれないと残らないのよ。だからね、あなたに歌を教えてくれる人だけでなく、民謡が好きで聞いてくれる人にも感謝するんだよ。そうやって、大和(本土)にいるあなたのところまで歌が届いたのだよ。これも縁だからね。」

孫に言い聞かせるように、優しく話してくれました。

そして、電車がホームに入り始めると、皆さんから

「さあ、あんたはここで降りなさい。元気でね。頑張りなさいよ。」

と言われ、確かにここで降りるのだけど、そんなこと話したかなと思いながらお礼を言って開いた扉からホームに降りました。

扉が閉まって電車が動き始めました。皆さんが手を振ってくださいます。手を振り返して見送ると、電車はレールを離れ、夕陽に向かって走っていきました。

「ああ、皆さん西へ、あの世へ帰るのですね。私のためにわざわざ寄ってくださったのですね。ありがとうございました。」

そう思った途端、目が覚めました。


今でも、この夢の中でおばあさんに言われたことが私の支えになっています。




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