待ってるよ
待つのは得意です。昔から。
私の母は神田の生れで浅草育ち、祖父母の頃からずっとその辺り。という江戸っ子のせいか気短かで、待ち合わせをしても約束の時間が三分も過ぎると帰ってしまいます。
「三分も待ったのよ。」
と母は言いますけれど。
私は来るまで待つタイプです。
今はメールでも電話でも連絡が取り合えるので、
せいぜい十分くらいしか待たずに済むのがしみじみありがたいです。
まだ固定電話しか無かった頃は待つのが当たり前でした。元々五分以上前に着くようにしてましたし。
約束を忘れられてすっぽかされた時も一時間くらいは待ってました。でも来ないからさすがに心配して家に電話したら本人が出て謝られました。
「もっと早く電話してくれれば良かったのに」
と半ば呆れられながら。
それ以降、私と友人たちの間では待ち合わせの時間を
「○時から○時X分の間」
とするようになりました。
で、その間に来なかったら欠席扱いにします。
おかげでだいぶ待つ時間が減りました。
Yという東京に住んでいる友人から数年前、電話がかかってきたことがあります。
彼女にとても悲しい出来事があっての電話でした。
私は聞くしか出来ません。
「辛いね。どうしてそんなことがあるんだろう。」と。
一時間ほど電話して。二、三日置いて又電話がかかって、話を聞いて、聞いて。
時間が合えば彼女の家に行って。話を聞いて、私も少し話をして。
ひと月ほど経った頃。
「もう大丈夫、ありがとう」 そう言われました。
今は彼女とは年賀状のやり取りと年に一度か二度電話するくらいです。そして電話する度にさよならの挨拶みたいに尋ねてきます。
「何かあったら、又電話してもいい?」と。
だから私も正直に答えます。
「何の役にも立てないだろうけど。
いつでも連絡しておいでよ。待ってるよ。」
嬉しいことでも辛いことでも。話したいならいつだって。
連絡ください。待ってるよ。