能「生贄」を聴きました
二月四日横浜能楽堂にて能「生贄」が上演されました。
内容が似ている組踊「孝行の巻」との組み合わせです。
「孝行の巻」は以前聴いたことがあり、今回の公演では特に目新しい点も無かった為に
「うん。良く頑張ってるな。楽しみな若手が出て来たな。私ももう少し詞章を覚えよう。」
のようなありきたりの感想だったのですが、
「生贄」は何だか能らしくない能で。
まとまった感想にならない、過剰で贅沢な能でした。
パンフレットによると徳川綱吉、家宣の頃にはよく上演されていたらしいのですがその後廃曲となり、復曲されたのがおよそ三十年前。
多分五番物だと思います。修羅物に近い印象でした。
子どもを連れた夫婦が旅先で生贄のクジを引かされてそのクジが子どもに当たります。
そして大蛇が子どもを食べようとした時に神が現れて大蛇を懲らしめます。
大蛇は改心して以後生贄を求めることはしないと約束して去って行く、という内容です。
子方(子役)も出て、登場人物も多く、生贄を乗せる舟もなかなか派手で。
終盤は神と大蛇の立ち回りもありますから
何と言いますか、歌舞伎っぽい派手さでした。
いつもなら広く感じる三間四方の本舞台がこの能では狭く感じました。
面白かったし、演者も良かったし、はっきり言って儲けもののお舞台でした。
でも言葉にならない(無論私の語彙が足りないせいもあるでしょうが)、目には見えない何か過剰なものがまだあの舞台の上に残っているような気がしています。