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おでん 色々

おでんって不思議な食べ物だなぁと作る度に思います。


今は亡き父は幼少期を静岡で過ごしたせいかおでんと言えば静岡風おでんでした。

だし粉がつかない、黒ハンペンと黒つみれが入っていない我が家のおでんのことを「おでんもどき」とずーっと呼んでいました。


母にとってのおでんは田楽でした。豆腐や茄子の串焼きに味噌を塗ってまた軽く炙った「味噌田楽」です。

東京下町の、住み込みの使用人が何人もいる商家で育った母の実家ではおでんを家庭で作って食べることがなかったそうです。

街角の店で焼いて売っている田楽を学校の帰りやお稽古の帰りに友人と一串買って食べるのが楽しみだったのよ、と話してくれたことがありました。

煮たおでんは結婚して初めて見て、それをおでんだと言われてびっくりしたのだとも。


私が小学生の頃、近所に越して来た同じ学年の女の子のNちゃんは大阪育ちでした。私には聞き慣れない大阪の言葉がとても可愛い人でした。

ある冬の朝。一緒に登校している時にNちゃんがすごく真面目な顔をして尋ねてきました。

「あのな、こっちにはおでんに『コロ』や『スジ』を入れんの?」

聞いたことの無い単語に頭の中が?だらけになりましたがNちゃんの真面目な顔を見て、私も真面目に

「えーとごめん。聞いたことないからわかんない。食べ物の名前、なんだよね?知らないなあ。」

と答えました。Nちゃんはため息をついて

「そうかぁ。おでんのことを関東炊きともいうから同じ物が入っとると思とったけど。」

と寂しそうでした。

昨日おでんを作ろうとしたNちゃんのお母さんがおでんの材料として欠かせないコロやスジを見つけられずに止むを得ずそれ無しのおでんになってしまって。家族全員が物足りない思いをしたのだと。

それで我が家の話をしたところそれは驚かれて。

「じゃあ、うちが思い浮かべるおでんと、誰かが思い浮かべるおでんは全然違うことがあるってことやん。びっくりやわ。」


後に知りました。

「コロ」は鯨の脂身の脂を絞ったもの、

「スジ」は牛のスジ肉を柔らかく煮たもの、らしいです。


今は通販という便利なものがあって。

黒ハンペンもコロも手に入るけれど。

でもだからって私が作るおでんと誰かが思い浮かべるおでんが同じになったわけではないわねえ。

今は、兵庫に住んでいるNちゃんはどんなおでんを作っているのでしょうか?












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