ヒロインに呪いをかけたのは私ではありません!
「お嬢様、最近着ているドレスは少し地味なものばかりじゃないですか?」
「……そうかしら。気にしていなかったわ」
私、マリア・シャルロットはこの国の貴族シャルロット家の長女です。私には両親や侍女に秘密にしていることが3つあります。
一つは魔術を習っているということ。
もう二つ目は数ヶ月前、ドジなメイドが起こした事故に巻き込まれて頭を強く打った際に前世の記憶を思い出したこと。
そして三つ目は前世の記憶によると私はこの国に呪いをかける悪しき魔女になる……可能性があることです。
この世界が前世でプレイしていたゲームの世界と似ており、私ことマリア・シャルロットもそのゲームの登場人物でした。しかもヒロインを虐める悪役令嬢。
王太子を巡ってヒロインと争い……最終的に王太子にフラれてしまうのですが、それを恨んで女性を老婆に変える呪いをヒロインにかけるのです。
最終的に王太子とその仲間によって倒されて、王太子とヒロインは結ばれてハッピーエンドのゲームなのですが……私は死にたくありません。前世の記憶があるということは悪しき魔女になる未来を変えることが出来るかもしれないと、身近なものから変え始めました。
以前は誰よりも目立つように派手なドレスばかり選んでいましたが、前世の記憶を思い出してからは貴族なら誰でも着ているような目立たない普通のドレスを選んでいます。これはヒロインが貧乏貴族の娘なので、着ている服を馬鹿にするというイベントがあるのですが、それを避けるためです。
、ヒロインとのイベントを起こさないように徹底的に避けるか、それともヒロインと仲良くしていくかはまだ迷っています。春から学校でヒロインとは嫌でも会う羽目になるので避け続けることは難しいのですが、なんとなくヒロインと接触することで私にその気がなくても悪しき魔女になる未来になる気がします。
ゲームと違い、セーブやロードも出来ませんので臨機応変に行くしかありませんね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
本日は王太子の誕生パーティです。ゲームの話ではこのパーティーで私マリア・シャルロットとヒロインは初めて会います。国中の貴族の子女が参加するこのパーティーでは同じ貴族と言えど着ているドレス、装飾品に差が出るので、弱小貴族であるヒロインに対して私が難癖をつけるのです。
しかし私はこのパーティーでヒロインと関わるつもりはありません。私のドレスは今までと違い派手過ぎず、貴族としては普通のドレスを着ています。久しぶりに会った知り合いや取り巻きからもと驚かれましたが、「あのど派手なマリア様が…」と本人の前で小声で話すのは失礼なんじゃないかしら。聞こえているのだけれど。
「皆の者!今日は余を祝うために集まってくれて嬉しく思う。時間が許す限り楽しんでいってくれ!」
王太子様の話が終わったので、ヒロインに会うこともなく会場を離れようとすると……廊下にヒロインが!しかも私の取り巻きが囲んでいる!
これはまずい。ここで無視したら何が影響あるかわらかないし……ヒロインと接触するつもりはなかったけど仕方がない。
「アナタ達、何をやってるのかしら?」
「これはマリアさん、御機嫌よう。マリアさんもこの子に言ってやってください。貧乏貴族にこのパーティーは相応しくないって」
まったく。取り巻き達は過去の私に影響されすぎてしまっている。これは学校に行ってからも厄介かもしれませんね。
「相応しいかどうかは私たちが決めることではないわ。アナタ達も貴族の子女ならばはやくパーティーに戻って交友を深めなさい」
「え、マリアさん。今日はどうなさいましたの?」
「いいから戻りなさい。私が優しいうちに」
「は、はい!」
交友も深めずにパーティーから帰ろうとしている私が言えることではないのですが、こういうのは勢いです。
私に叱られたのが効いたのか取り巻き達はすぐにパーティー会場に戻っていきました。
残されたのは私とゲームでヒロインだったソフィー・フィリップだけになりました。私はさっさと帰りましょう。
「あの!」
「何かしら?」
帰ろとするとヒロインに話しかけられました。何か言いたいのかしら。
「さっきは助けてくれてありがとう!」
「ええ、どういたしまして」
「私はソフィー、初めまして!マリアちゃんって優しい人なんだね!」
さっきまで虐められていたとは思えない輝くような笑顔。これは王太子様が惚れてしまうのもわかります。
しかし、あったばかりの人にちゃん付けってどんな教育を受けてきたのかしら。
「ソフィーさん初めまして。アナタもパーティー会場に戻ったほうがいいのではないかしら?」
「私はパーティー苦手だから……もう帰ろうかなって」
本人は社交的だから、パーティーが苦手に感じているのは家柄の問題でしょうね。
彼女の家は国内で弱小貴族に分類されるから、パーティーにでてもいい気分になることは少ないでしょう。
でもゲームだと彼女はこのパーティーで王太子に一目ぼれされる。未来を必要以上に変えるのは怖いから仕方ないわね。
「私が付き添うからパーティーに戻るわよ」
「え、でも」
「いいから、行くわよ」
「……うん」
ソフィーをパーティーに連れ戻すとちょうど王太子が参加者に話しかけてきているようだった。
あ、こっちに気がついたみたい。王太子が来るわ。
「久しぶりだな、マリア嬢。こちらは?」
「お久しぶりです。ロイ・オーギュスト王太子殿下。こちらはソフィーです。」
「初めまして、ロイ・オーギュスト王太子殿下。ソフィー・フィリップと申します」
「ソフィーか。いい名前だな」
私は王太子と会ったことがあったけど、やっぱりソフィーは初めてだったみたい。
王太子とソフィーが楽しそうに話している。この出会いが私の未来にとって良い方向に進むといいのだけれど。
「ほう、ソフィーは来年から学校に通うのか。私と一緒だな」
「王太子殿下と一緒の学年になれるなんて光栄です!」
「せっかく仲良くなったのだ。王太子ではなく、ロイと呼んでくれないか?」
「はい、ロイ殿下」
王太子殿下はソフィーに名前で呼ばれて嬉しそうだ。ソフィーも会話が楽しそうにニコニコしている。
パーティー会場にいる、他の貴族の子女の目が怖いが王太子がいるのと私がいるのでちょっかいをかけてくる人はいないようだ。
しばらく3人で会話していると一人の男が近づいてきた。
「ロイ、美人に囲まれて楽しそうなところ申し訳ないが、そろそろ時間だ」
「ウィル、もうそんな時間か。二人とも、紹介する。こいつはウィル、俺の親友だ」
「いい加減な紹介だな。ウィルヘルム・ジョゼフだ」
ジョゼフ?聞いたことのない家だがもしかして貴族ではないのだろうか。
親友だから呼び捨てを許されているというのも普通ではありえない。
他に何か理由があるのか、聞いてみたかったが二人はもう行ってしまった。
終わりのあいさつは無いし、私ももう帰るとしよう。
「ソフィー、またね」
「うん!学校で会おうね!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私は魔女の家に来ていた。ゲームの設定では私マリアには魔術の才能があり、数年前から魔女に魔術を習っている。
この魔女はある研究をしている、若返りの魔術の研究だ。本人曰く、女性の永遠の夢らしい。
ゲームの設定ではその若返りの魔術の研究をもとに私マリア・シャルロットはある魔術を作ることになる。それは老化の魔術、女性を老婆にしてしまう呪いだ。この呪いをヒロインに使ったことでマリア・シャルロットは悪しき魔女に認定される。
私は呪いをかける悪しき魔女になるつもりはありませんが、突然止めるとゲームの設定と大きく違いを生み、何かが起こりそうなので継続して習ってます。
「師匠、今日はどんな魔術を教えてくれるんですか?」
「マリアは知りたがりだねぇ、そう毎日教える新しいことはないよ」
魔術は体力を消費して発動する。使うと一気に疲れが来る感じです。魔術の本を読んで知識が増えることで出来ることが増えていく。
私はちょうど入門編を覚え終わった程度なので、これから本格的に魔術が使えるようになる。
「では風聞の魔術を教えてください。師匠も使えましたよね?」
「マリアは恐れ知らずだねぇ。知らないほうが良いことは世の中にたくさんあるというのに」
「もうすぐ学校に通うので知りたいことは多いほうがいいのですよ」
「学校、羨ましいねぇ。若いってのは」
「師匠もまだ若いですよ」
師匠は「マリアは礼儀が出来ているねぇ」と言っている。師匠はもうすぐ60歳ぐらいになるのだが若さに拘っているようだ。
若返りの魔術を使えるようになって青春をやり直したいらしい。
風聞の魔術とは、簡単に言えば耳が良くなり噂話がよく聞こえるようになる。
王太子のヒロインの行動や噂を確認するのに重宝するだろう。どんな方法を使っても私がヒロインに呪いをかける未来にならないようにしなければ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
春になった。これから王都の学校に通うことになる。
私が馬車に乗って学校に向かっているとヒロインであるソフィーが走っていた。貴族の淑女に相応しくない急ぎっぷりだ。
そんなとき馬車の窓から見たのにソフィーから気が付かれたようだ。
「マリアちゃん!おはよ!」
「馬車を停めて!……ソフィーさん御機嫌よう。ちょっと淑女らしくないわね」
「ちょっと寝坊しちゃって」
あはは…とソフィーが笑う。そんな笑顔を見ながら思い出した。これ…ゲームでもあったイベントだわ。
ゲームでは私が「頑張ってくださいね、オーホッホ」といって去っていくのだが、ここで見捨てることは出来ないだろう。あと「オーホッホ」というセリフは如何なものか。
「仕方ないわね。馬車に乗りなさい」
「え、いいの!」
「初日から遅刻なんて許されないでしょ」
「ありがとう、マリアちゃん!」
まったく世話がかかる人だ。私はそんなことを思いながらソフィーと一緒に馬車で学校まで向かった。
学校につくと同じ新入生がこちらに気がついたのだろう。
「おい、あの馬車につけられた紋章は、シャルロット家の紋章だ!」
「マリア様か。同学年になれるとは幸せだ」
「恐れ多くてお近づきにはなれそうにないな」
同じ新入生だろうか、学生たちが馬車をみて話しているようだ。
私とソフィーが馬車から降りるとさらにざわついた。
「おい、マリア様と一緒に降りてきた人は誰だ?」
「知らないが、マリア様に負けず劣らずのキレイな人だな」
初日から目立ってしまったが……仕方ないわね。
「なんだか注目されてるよマリアちゃん…」
「ソフィーさん、これからこの学校に通うのだからしっかりしなさい」
「うん、わかったよ」
注目されている原因は私の馬車から降りてきたのが原因だろうけど、ソフィーは美人だから遠からず目立っていただろう。
それに王太子と仲がいいので遅かれ早かれ妬みを買っていたかもしれない。
有力貴族の子女である私とも仲が良いと周知できたのは彼女にとってプラスのはずだ。
私にとっても立場を考えず友達として接してくれる彼女はとてもかけがえのない存在になりつつある。前世では当たり前だった友達がこの歳になって手に入るとは貴族という立場もいいものではないかもしれない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学校に通い始めて数日、私はソフィーと一緒に行動することが多くなった。
同じクラスにだったのもあるし、私に気軽に話しかけてくるのはソフィーぐらいなものだった。
ソフィーはたくさん友達が出来たようだが……私にはみんな話しかけにくいようだ。同じぐらい有力な貴族は王太子を除いて他にいないので当然かもしれない。
ゲームでは取り巻きが沢山いたが、彼女たちは何を起こすかわからなかったのでやんわりと言って解散してもらった。
授業のため廊下を二人で移動していると…前からロイ・オーギュスト王太子とその親友ウィルヘルム・ジョゼフが歩いてきた。
「ソフィー嬢、マリア嬢、久しぶりだな。同じ学校に通っていると聞いていたが中々会えないものだ」
「御機嫌よう王太子殿下」
「御機嫌ようロイ殿下」
王太子がソフィーを先に名前を出したのはよっぽど会いたかったようだ。
時間もさほどないが、さっそく二人は仲良く会話している。
私は手持ち無沙汰になってしまったので、王太子の後ろについているウィルヘルム・ジョゼフと話すことにした。
「ウィルヘルムさんもお久しぶりです」
「ああ、久しぶりだな」
「ウィルヘルムさんは王太子と一緒のクラスなのですか?」
「ああ、ロイが気を使ってくれてな」
パーティーでは話すのが苦手そうで寡黙な人のイメージでしたが、それは学校でも同じようです。
彼ウィルヘルム・ジョゼフについてあのパーティーのあとに調べました。なんと彼は驚いたことに貴族ではなく平民だったのでした。王太子がクラス編成で気を使ってくれたというのはそういうことでしょう。この学校は平民でも通えるのだが、実際に通う平民は少ない。コネを作りたい大商人の息子ぐらいかしら。貴族なら入学金・授業料についてほぼ無料であるが、平民はかなりお金がかかる。平民には正直居心地が悪いのだ。
彼がどうして王太子の親友となったのかは不明だが、ウワサでは剣の腕が立つようだ。常に王太子に付き添っているのは彼の護衛と言う側面もあるらしい。
貴族である私と会話するのはウィルヘルムにとっても面白くはないかもしれない。けれどソフィーと王太子が話していて離れられないのはお互い一緒だから我慢してもらおう。それからソフィーと王太子の会話が終わるまで、ウィルヘルムとの話を続かせてた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学校に通い始めて数ヶ月、今日はいつもより朝早く目が覚めた。何か嫌な気配を感じ、私はとっさに防御の魔術を使った。効果は1回だけ攻撃から身を守る術だがその1回が大事だ。
とっさに使った魔術は成功し、そして砕けた。やはり何かの攻撃だったのだろうか、しかも魔術での攻撃だ。
私はこの攻撃を回避できたことに安堵したが……直後女子寮の各所で悲鳴が響いた。
急いで女子寮のロビーに出てみるとそこには沢山の老婆が……
ここは学校、寮母としてお婆さんが数人いるがこの数は違う。服装をみるとうちの生徒、まさか。
そう思った矢先、私の予想を裏付けるようにちょうど部屋から出てきた老婆が話しかけてきた。
「ふぁ~、なんだか騒がしいね。あ、マリアちゃんおはよう!」
「え、アナタ、もしかしてソフィー?」
「?そうだよ。どうかした?」
「アナタ、起きて鏡を見たかしら?」
「まだ見てないけど、顔に何かついてる?」
「アナタ、お婆ちゃんになってるわよ」
「え!?」
どうやらソフィーも老婆になってしまったようだ。
これはゲームでの事件と似ているが異なることもある。まず私が犯人ではないことだ。
ゲームでは私マリア・シャルロットが王太子に告白し、フラれた逆恨みで老婆に変える呪いをヒロインであるソフィーにかける。しかし私が犯人でないのは私がわかっている。
それに老婆の数だ。学校の女子寮だけでも呪いの被害者はかなりたくさんいるようだ。というか呪いにかかっていないのは私だけかもしれない。
しかし、ゲームでは老婆になる呪いかかるのはヒロインだけだったはずだ。被害の範囲がまだわからないが、到底私にできる芸当ではない。
私は呪いにかかる前に防いだから問題ないが、呪いの解呪は難しい。犯人がわからない以上、老婆の姿から戻らないため騒ぎは一向に終息する気配を見せなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「マリア嬢。決して貴女を疑っているわけではないが、貴女が呪いにかかっていないのは気配を察し呪いを防いだと?」
「ええ、そうです。オーギュスト国王陛下」
騒ぎから半日が過ぎ、私は王の間に呼び出されていました。
老婆の呪いは王都中の女性にかかっており、私だけが呪いにかかっていない。この状況で犯人として疑われるのも仕方ない。
それに私には呪いを防いだ……つまり魔術を使えるという疑わしい点がある。
「貴女が師事していたという魔女、まだ見つかっていないそうだ」
「そうですか……」
私の師匠の家は空き地になっていたらしい。家は幻覚の魔術を使って作っていたのかしら。
無事であればいいのだけれど。
「父上、マリア嬢が魔女だったということは事実。嘘をついているかもしれません」
「しかし、それだけの理由で処罰するわけにもいくまい。それに老婆の呪いを解かねばならん」
「呪いをかけた魔女を殺せば解けるのではないでしょうか」
王太子ロイ・オーギュストが剣を鞘から抜き、こちらに近づいてくる。
ソフィーが呪いにかかっているので必死なのはわかる。しかし、このままでは私が殺されしまう。でも、ここで逃げだしたら疑われるだけ。
結局、ゲームと同じで私が魔女として死ぬ未来は変わらないのかもしれない。
心の中で必死に祈りつつも私は身動きできないまま、王太子が剣を振り上げたとき……勢いよく王の間の扉が開いた。
「ロイ、ちょっと待て!」
「マリアちゃん大丈夫!?」
王太子の親友ウィルヘルム・ジョゼフと老婆になってしまったソフィーが入ってきた。
ソフィーはそのまま王太子から私を庇うように抱きしめた。
「ロイ殿下、マリアちゃんは悪いことはしてません!」
「しかし、ソフィー、この王都に疑わしい者はマリア嬢しか居ないのだ」
「それでも!私は親友を信じます!」
ソフィーが願うようにぎゅっと抱きしめてくれる。信じてくれてありがとうソフィー。
「ロイ、焦っているのはわかるが頭を冷やせ」
「ウィル、お前まで」
ウィルヘルムも王太子を説得してくれています。彼がソフィーを呼んできてくれたのでしょうか。
一度しか話したことがないのに……彼も私を信じてくれたのでしょうか。
王太子も落ち着いたのか剣を納めてくれました。しかし、呪いについて何一つ進んでいません。
こんなとき師匠が入れば何かがわかるのでしょうか。いえ、そもそも師匠はなぜ居なくなったのでしょうか。
ゲームでは若返りの魔術を応用して老婆の呪いをヒロインにかけた。それは魔術の失敗を利用した呪いだったけど、もし若返りの魔術が成功した場合は何の代償も払わずに若返るのでしょうか。
師匠が長年研究している魔術だ。自分の身に降りかかる代償は出来る限り防ごうとしているでしょう。しかし他人へは……
私の頭の中にある考えが浮かんだとき、王の間に女性の声が響き渡りました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「オーホッホ、泣かせてくれるじゃないか。マリア、疑いが晴れてよかったねぇ」
「この声は……師匠?」
「そうだよ、お前の師匠さ。私は若返ったのさ」
「もし若返っても、オーホッホ、は如何なものかと思いますが」
突然強風が吹き荒れ、部屋の中に私の師匠が現れました。
このタイミングで現れたということは見ていたということかしら。
「久しぶりだねぇオーギュスト王」
「久しぶりだな、魔女イリス。少し出てくるのが早いのではないか?」
「弟子が殺されそうになるのを見ていられなくてねぇ」
大事件を起こしたはずなのに師匠は落ち着いています。
王も「出てくるのが早い」とはまるで来ることがわかっていたような口ぶり。
「師匠、もしかして師匠が犯人なのですか?」
「そうだよ、マリア。これはねぇ、魔女の試練なのさ」
「魔女の試練?」
魔女の試練とは何のことだろう。王も師匠を捕まえるつもりはないようです。
普通なら死刑確実、しかし師匠は殺されないことを確信しているような……まさかオーギュスト王もグルだった?
私の予想が正解だったようでオーギュスト王が話し始めた。
「そう、これは魔女の試練。王位を継ぐものに魔女が与える試練なのだよ」
「王位を継ぐもの……?つまり王太子殿下に与えられた試練だったのですか?」
「マリア嬢、その通りだ。巻き込んですまないな。イリスに弟子がいることを聞いていて今回の試練に使わせて貰った」
どうやら私は巻き込まれただけらしい。殺されていたらどうするつもりだったのだ、いい迷惑だわ。
「父上!その魔女が犯人ならばなぜ捕らえないのです!」
「ロイよ。これはお前が王になるための試練だったのだ。そこのソフィーを除いて、他の女性はすべて元に戻っておる」
「王は常に冷静でなければならない。お前はマリア嬢の意見も聞かずに魔女ということで殺そうとしたな。」
「それは……」
「残念だが、お前は王として失格だ。代わりに双子の弟のウィルヘルムを王とする」
え!ウィルヘルムが王太子の双子の弟だったの!?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
いつの時代も貴族はパーティーをやってばかりと平民に言われているがあながち間違いではありません。
本日はウィルヘルムの次期王決定のパーティです。
あの事件で冤罪をかけられた私を守ったことで彼は次期王に決定しました。
じつは王太子が双子ということに驚きましたが、継承争いを起こさないようにするため隠していたらしいです。二人は全然似てないので気が付きませんでした。
私は悪しき魔女として処刑される運命を逃れることが出来たようです。あの時、ウィルヘルムがソフィーを連れてきてくれていなかったら私は死んでいたでしょう。あれから全然話せていないので、このパーティーでちゃんとお礼を言わなきゃ、と考えるとウィルヘルムが近づいてきました。
「ウィルヘルム王太子殿下、お久しぶりです」
「久しぶりだな、マリア嬢。しかし、王太子殿下と言われるのは恥ずかしいものだな」
そんなこと気にしない性格だったと思っていましたが、今日は緊張しているようです。
何か言いたそうに口を開きましたが、結局黙ってしまいました。さすがに自分が主役のパーティーは緊張するのかしら。
しばらくすると意を決したようにウィルヘルムが口を開いた。
「マリア嬢、その、良ければ俺と踊ってくれないか?」
「はい?」
パーティーで貴族の嗜みとしてダンスをします。もちろん男性側がお誘いをするのが普通です。しかし、寡黙なウィルヘルムには少し似合わない気がします。
ウィルヘルムも慣れないのか顔を真っ赤にしています。すこし前は頼りになる人のイメージだったのですが、今はこちらが支えてあげなきゃいけない感じがします。
「……ダメか?」
「いえ、喜んで」
これからどうなるかはわかりませんが、ゲームに無かった私と彼の未来はまだ始まったばかりです。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
GWがデスマーチで潰れてしまった勢いで書いたので細かいところはご容赦ください。




