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第6話:お帰りください、赤鬼さん

 生徒たちを叱責して数日が経った。

 いまだに数人以外は俺に満足のいく回答をできていない。

 そのため、今日も俺は教壇に突っ伏して眠っていた。

 今は昼下がり、春の陽気にも包まれて睡眠には最高のタイミングであった。

 このまま至福の時を過ごしたい、すでに睡眠という最強の敵に負けていたディアンであった。


 しかし、そんな幸せもつかの間、彼にとって最悪の災厄がやってきていたのだった。

 「ディアアアアアアン!!見つけたぞ、今日こそお前の息の根を止めてやる!」


 そこには赤髪の、まるでビキニアーマーのような随分と扇情的な鎧を身に着けた、陶磁器のような真っ白な柔肌の女性がドアを叩き割って立っていたのだった。





  ◆ ◆ ◆   ◆ ◆ ◆   ◆ ◆ ◆






 誰だあの人は、なんてことには私を含め誰一人ならなかった。

 彼女はロザミア・ヴェルディ、最強と名高い『第一勇者』(ファーストブレイブ)の中でももっとも強い人物、またの名を『常勝無敗の戦神』と呼ばれた。

 その出自は不明だが、どこかの国の王の隠し子だとか、龍族に育てられた生粋の戦士だとか、挙句の果て彼女は初代勇者と同じように神さまの使徒だとも言われた。

 事実、彼女にはそれを裏付けるほどの強さがあった。


 いったいそんないける伝説がうちのクソ教師(ディアン)になんの用だろう。

 周りの生徒たちも同じような疑問を持ったらしく、コソコソ話し合っていた。

「キャー、ロザミア様よ、ロザミア様!今日もとってもお美しいわ!」

「確かにあの服は素晴しいよな、みんなあの人みたいな服着てくれないかなぁ……。」

「つーか、そんなことよりなんであいつにロザミアさんが用あるんだよ。いったい何したんだ?」

「どうせ、なんか粗相でもおかしたんじゃね?……いや、待てよ?もしかしたら口にもいえないひどいことをしたんじゃないか!?これは修羅場かもしれねえぞ!」

「あんたもういっぺん同じこと言ってみなさい、そのときは貴方の大切なものをへし折ってやるわよ。ロザミア様があんなのと…あ!あんなのと!だ、だんじょのなかなわけないでしょ!」


 途中からゴシップみたいになってたけど知らないふりをしよう、うん、そうしよう。

 だが、パティは知らぬ存ぜぬで過ごそうとは思っていなかったらしく私をその話に巻き込んできた。

「セラちゃん、先生とロザミアさんほんとに付き合ってたりするのかな?確かに先生かっこいいからあるかもしれないよねー。」

 ちょっと待ちなさい。

 何を言っているのかしらこの子は、あのクソ男がかっこいいですって?

 最近先生と、なぜだか知らないけれど、仲がいいからってちょっと贔屓しすぎだと思う、あの男のどこがいいか私には全然理解できないし。

「それはないでしょ、息の根を止めてやるっていったいどんな恋人同士の会話よ。根本的におかしいわ。」

「うーん、そうかなー。でもなにかありそうな気はするよね。」


 そうやって私たちが談義している間にも話は続いていたわけで、気づいたら起きていたあの馬鹿と言い争っていた。


「お前、ほんとにいいかげんにしろよ!?何勝手にやってきてドアぶち壊してくれとんじゃ!直せ!というか学園側にお前が修理代出せよ!俺知らねーからな!」

「だからさっきから言っているだろ、お前が先に私から奪った宝を返せと言っているんだ!それがすんだら金でもなんでも出してやる!」

「あれは最初に俺が見つけたんだろ!お前が取れそうな位置にいたから取っただけでお前のもんじゃねえんだよ!てか、もう売りに出したからねえよ!」

「何をホラ吹いてるんだ!しかも売っただと!?あれは初代勇者の重要な遺品なのに貴様というやつは!許さん、絶対にぶち殺してやるぞ!!」

「さっきから聞いてりゃ貴様だとかお前だとか、俺のことは先輩として敬えっていつも言ってただろ!8年経った程度で忘れんのか!この脳筋野郎、礼儀ってもんを教え込んでやるよ!その体にたっぷりとな!」

「今は私のほうが年は上だ、馬鹿が!だが私はお前と違って毎日その態度に鬱憤が溜まっていたんだ!今日こそ晴らさせてもらおう!!」

「生意気にもほどがあるがそれなら何するか分かってんだろ!!」

「「決闘だ!!!」」


 色々と突っ込みたいところはあったけれど、決闘って聞こえたんですが?

 パティはなんかすごくキラキラした目で見てるし。

 大変なことになる予感しかしないでしょ……。


 

 

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