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第5話:持つべきものはスキルとお金

 生徒たちに文句をつけた後、すでに日は高く上っていた。

 朝の8時近くから話始めてこの時間とは少々熱が入りすぎてしまったのかもしれない。

 今の気分はさっさと昼飯を食べて惰眠を貪りたいところだが、生憎待ち人がいるためここを離れることはできない。

 まあ、これが俺の思い過ごしなら待っている必要もないわけだが。


 そろそろ俺が待っているのも疲れて帰ろうか考え始めていたタイミングでついに待ち人が来た。


 そこには、まるで、俺に会ったのが偶然で驚いているかのような演技をしている『吸血鬼(パティ)』がそこにいた。


「先生!?え?帰ったんじゃなかったんですか?」

「ちょっと心地よい風を感じたくてな、わざわざ屋上までくるの大変だったぜ。」

 パティがとぼけるのに合わせ、俺も偶然を装う。


「それはもう、ここはこの町でもっとも高いところですもんね。階段何段あがってきたか忘れそうになりますよ。」

「まあ、あの階段ほんと“色々”あるもんなー。」

 正直言ってもうここまで来た段階でパティは完全にクロだ。

 屋上に来るまでの階段、あそこには俺が即席で作れる多種多様の罠を仕込んでおいた。

 他の生徒が来ていたら一瞬で五体満足じゃなくなるぐらいのを仕込んだため、何一つ傷を負っていない彼女は普通ではない。

 そして、この仕掛けのせいで彼女は俺が完全に警戒心を丸出しにしていることが理解されてしまっただろう、窓に書いたのはノーカンにしとく、あれはまだ半信半疑だったしな。


「せんせ~?もうそんな風に回りくどいこと言わないで、本題に入りましょう?」

 腹の探りあいはここまでにしろってことか、親友(セラ)に似て待たされるの嫌いなやつか。

「先にとぼけてきたくせによく言うぜ、『吸血鬼』さんよ?」

 その質問と同時に俺はいつでも戦闘に入れるように魔力を廻し始めた。

 始めたんだが。


「いきなりそんな怖い顔にもならないでくださいね?私戦うつもりないですから魔力込め始めるのもやめてくださいねっ!。」

「ッ!?」

 パティが手を振るうと俺の廻り始めていた魔力がかき消された。

 よもや、ここまでやるとは思ってはいなかった、だって他人の魔力操作なんて相当高レベルのスキル持ってなきゃできねえよ、しかもそれを一工程まで省略してるってことはそれ以外も相当高いってことだよな、うかつに手を出すべきじゃなかったわ、唯一の救いは敵対する気はないってところだな。


 それならばと思い、俺は『解析』を始めた。

 解析は相手のステータスをスキルレベルの高さに応じて確認することができる、けっこう重宝するやつだ、実際はそうなんだが。

『解析に失敗しました。』

 ああ、そんな気はしてた。

 実はこの解析、落とし穴があって自分の魔力と相手の魔抑力に応じて成功する。

 つまり、俺の魔力がパティに魔抑力を超えられなかったってことだ。

 まあ、元々俺の魔力は低いし、スキルも全て起こしていない、失敗するのは想定内だ。

 しかも、これは使った相手に使ったことがばれる、だから仲のいい相手でも使ってはならない。

 

 よって、案の定。

「先生、淑女の個人情報を盗み見ようなんて礼儀がなってないですよ?」

 とても不機嫌そうなパティがいた。

 さらに俺のステータス解析してるし、うん、めっちゃ見られてるわ。

 それぐらい、相手の顔を見れば分かる、というか俺のステータスを見たやつみんな気持ち悪くなるからな、なんでか知らないけど。


 パティも例に漏れず、すごく辛そうな顔をしていた。

「なんでこんな化け物みたいな人が私たちの先生なんかになってるんだろ……しかもこれで『第一(ファースト)』じゃないなんて『第一』の人たちってどんな体してるのか不思議です……。」

 人のこと化け物とかこいつには言われたくないわ、お前こそ神話級の化け物だかんな?


 そんなことを考えているとパティからステータスの開示申請が送られてきた。

 ステータスを確認する方法は三つ。

 まず、自分なら解析スキルを持っていなくても簡単なステータスを見ることができる、詳細な情報が欲しければ解析は必要になってくるが。

 次に、先程行った解析スキルの使用、これは多くの人が知っていてかつ使ってい、この世界で持っていない人なんてそれこそ数人程度しかいないはずだ。

 そして最後が開示申請、解析スキルを最大まであげることで相手に自分からステータスを見せることができる、これは強制でないため見なくてもいい。

 今のは文句たれたことに対する侘びか、それとも敵対する意思がないっていう証拠としてのものか、どっちかわからんがありがたく見せてもらうことにする。


「パティ・キリエランド 人族 吸血鬼 先祖返り 真祖

 レベル 37

 HP:24607

 MP:75830

 筋力:38917 

 耐久力:27645

 魔力:94603

 魔抑力:84739

 敏捷力:54281


 おいおいおい、吸血鬼なのは予想ついてたが真祖かよ、正真正銘の神話級の化け物だったか……。

 それに加え、全能力値5桁とかこれ平気で討伐対象になるぞ。

 それプラス、スキルもあるんだよなー、絶対馬鹿みたいなスキル飛び出すぞ、これは。


 スキル

 『解析Lv10』『闇魔法Lv10』『天候無効』『淫技Lv10』『精神魔法Lv10』『隠蔽Lv10』『索敵Lv10』『魔力操作Lv10』『妨害Lv10』『不死』『眷属強化Lv1』『眷属同化Lv1』『再生Lv10』『吸収Lv10』『縮地Lv10』『疾走Lv10』『水魔法Lv10』『氷魔法Lv10』『風魔法Lv10』『状態異常無効』…………


 やはり普通ではなかった。

 まず、数が多い、普通に100個超えてるとわかった瞬間に見るのをやめた。

 それ以外にも不死とか淫技とか絶対持ってたらいけないようなの見えるし、ほとんどのレベルが最大だという点も危険度を上げている。

 正直まともにやりあったら勝てない、こんなの無理だわ。 


 と、思いつつ称号も確認していると、『特殊体質(タレント)』を見つけた。

 特殊体質持ちでもあったか、こいつどんだけ神様に好かれてるんだよ……。

 どれどれ、内容は。


 特殊体質:『淫魔』


 お前か!

 淫技とか持ってきたのお前か! 

 訂正、吸血鬼と淫魔とか神様に嫌われてるわ。

 これはもうさす「まだ見てるんですかぁ~?早くしてくださいよ~。」


「もういいですよね?先生、私が吸血鬼だってことわかったでしょう?実は私の祖母のそのまた祖母が吸血鬼だったらしくて、まあいいんですけど。それで先生の感想は?」

「正直にいうと、先祖帰りなんてはじめて見たわ。で、お前には特に周囲に危害を加えるつもりはないんだな?そうじゃないんなら殺さなきゃいけないわけだが俺はめんどくさいからやりたくない。」

「私だってばれたのはちょっとびっくりですけど、そのぐらいで戦っていいほどの相手じゃないってのはさっきの解析でわかってますよ~、大丈夫です。」


 そいつは良かった、本気で吸血鬼は殺しきるのに時間がかかるからやりたくなかったんだよなー、ってなんか上目遣いでこっち見てるしどうしたんだこいつ。

 そういや、淫魔でもあるんだっけか、やばいなこれ、完全に獲物として見てる目だぞこいつは。

 それを理解しつつもも気づかないふりをして尋ねる。


「なんでそんなにこっち見てんだよ、パティ。俺そこまで見られる理由がないんだが。」

「それは、ええ、先生のせいって言えばせいですけど、今お昼時じゃないですか?私お腹空いてきちゃって!!あと!私の特殊体質も見たと思うんですが!その!先生のその途方もない強さ見せつけられて!本能的に欲しくなっちゃってきたのもあるんですよね!!」


 アカン。

 これは早くどうにかしないと色々まずい、どんどん興奮してきてるのも分かる。

 昨日の大食いは自分の体質を押さえ込んでいた部分もあるんだろう、何とかしないと。

 逃げる?いやいや追いつかれるわ。

 戦う?ここでどんちゃん騒ぎするわけにはいかねえ。

 いっそのこと身を任せる?それだけはあいつに悪いからダメだ。

 考えろ、考えろ、何のための頭だ、何年も休んでたんだから仕事しろ!

 そうしてるうちにパティは俺の逃げ場をなくすように動いている。


 あ。

 あるじゃねえか、一番被害の少ない安全な解決方法が。

 これが通らなかったら戦うしかない、そう覚悟を決めて、俺は叫んだ。


「昨日行った店で昼飯食おう!全部おごるからよ!」


 財布の中身は生贄となった。


今後の作品作りのため、よろしければ評価、感想、ご意見お願いします。

また、質問も随時受け付けておりますので気になった点お聞かせください。

どうかよろしくお願いします。

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