第3話:サボり、ダメ、絶対
お気に入りされてたんですね…ありがとうございます。
初めてなもんでとてもうれしいです。
「ああ!もう何!何なのよ!何がめんどくさいから帰る、って何!?一回来てその上であれ書いて帰ったってことよね!今日は午前で終わりなうえに顔合わせだけだから授業もしないのによ!これは断罪するしかないわよね、パティ!?」
「はいはい、セラちゃん。怒ってるのはわかるけど、このままずっとここで地団駄踏んでるとお昼食べ損ねちゃうよ。ささ、いこっ!」
「え、あ、うん。そうね、そのとおりだ……って引っ張らないで!痛いってば!パティ、私ちゃんと歩くから!」
セラはこのときのことをしっかりと頭に刻み込んでおこうと決めた。
パティがいるときは何よりもお昼を大切にしなくてはならないと。
……腕もげるかと思ったわ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
仕事をサボり、ぶらりぶらりと歩いていた俺は面白いものを見つけた。
俺が勤めている学園の制服をきた女学生が歩いてくるではないか。
「学園は今日から新学期のはず……まさか、あいつら俺と同じサボりか……」
今の俺が浮かべていた顔はおそらくもうそれは血も涙もない盗賊の頭が浮かべるような嘲笑であったと思う。
だって仕方ないだろう、カモがネギ背負って来たんだからな!
俺が思い浮かべるプランはこうだ。
まず、サボりのことを言及する。
あの学園は規則に厳しいからな、規則違反をしていた生徒はそりゃもうすさまじい罰を受けるはずだ。
それを恐れる彼女らに自分の素性は明かさず俺はこう告げてやるのだ、
「飯をおごりな」
これぞ、完璧、俺の計画にくるいはない!
行くぜ!
「なあ、嬢ちゃんたち。お前ら『勇者学園』の生徒だろ?こんなとこでサボってていいのかぁ?」
多少見下したような聞き方をしたが問題ないな、これでこいつらもおびえ「誰が、サボりだって?」
は?
今こいつなんて言った?
「私が!どこぞのクソ教師と一緒でサボりに見えるですって~!?」
訂正、こりゃまずい奴引いたわ。
なんだ、このヒステリックガールは、お兄さん怖いよ、こんな奴見たの生まれて二度目だわ。
そんなことを考えているうちに沸点の低い火山ガールは俺の懐に突っ込んできて拳を繰り出してきた。
相手が学生だということで舐めきった態勢でいたため、防御まで間に合わない俺は咄嗟に後ろに飛びのいた。
接触攻撃のほとんどは同じ方向に自ら飛んでいくことで衝撃を殺すことができるが、彼女の拳にはうっすらと魔力の奔流が見えた。
あ、これやべえな、そう思ったときにはすでに遅く、俺は思いっきり民家の石壁に叩きつけられていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
やってしまった、少し、いやかなり気がたってときに、あのクソ教師と一緒にされて本気でブチ切れ、見ず知らずの青年をふっ飛ばしてしまった。
しかも、これが魔力込みだということが学園側にばれたらどんな罰を受けるだろうか、よくて停学?いや退学だってあるかもしれない。
幸い、目撃者はパティのみ。
こうなったら……
「パティ、このことは誰にも内緒よ。今からあの人のことを消してくるわ。」
「は?え?え!?ダメだよ、セラちゃん!殺人だけはダメ!」
殺人以外なら何してもいいのかといったツッコミも忘れ、私はパティの静止を振り切ろうとした。
「放してパティ!あの人さえ殺せば証拠はゼロなの!退学にはなりたくないのー!!」
「暴力沙汰を隠蔽して退学を回避するために人殺したらそれこそ本末転倒だろうが。」
そういって私の体はあの吹っ飛ばした青年にとり抑えられた、ってあれ?
もう、起き上がってるー!?
うぬぼれているわけではないけど、仮にも私の魔力込みの本気パンチを受けて数秒もしないうちに立ち上がってくるってどんな体してんの?
「心の声が駄々漏れだぞ、暴力女。」
「誰が暴力女よ!私にはセラっていうちゃんとした名前があるのよ!」
「突っ込む所そこかよ……」
「せ、セラちゃん、落ち着いて、いったん落ち着こうね!?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「なんだよ……サボる必要なかったじゃねえか。」
俺は先程の事件の後、セラという金髪にツインテール、おまけに貧乳といったどっかの誰かさんが大喜びで抱きしめるであろう美少女暴力女と、店に入ってからずっと食べ物を咥えている銀髪にポニーテールの食いしん坊美少女から話を聞いた。
その際に俺は二つのショックを受けた。
まず、今日学園の仕事サボる必要がなかったということ。
それともう一つ、飯をたかれなくなったということだ。
「そういえば~もぐもぐ、あなたは~もぐ、だれなんでうか~?」
「パティ、口に物入れながら話さないの。でも、私もそれ気になるわ、答えて。」
えらそうだな、このガキ……すげえイライラするわ。
まあ、しゃあねえから答えてやるか。
「その質問に答えてやるよ、馬鹿女って、蹴るな、おい!蹴るなってんだろ!」
そんなに俺のことが気にいらねえのか、こいつ。
「気を取り直して……っと、俺はディアン、昔はこの町に住んでいたんだがちょっと諸事情で離れててな。最近帰ってきたんだ。」
嘘は言っていない、俺はこの町に8年間、居るが居ないことになってたしな、こいつらが俺の素性を知っている訳じゃねえだろがこう言っておけば問題ないだろう。
案の定知らなかったようで、
「ふーん、そうなんだ。それならこの店のことも知らなくて当然か。できたのつい最近だしね。」
「それなのに、こんなに人気なんですよ!味はおいしいから当然だと思いますけど~」
俺も彼女らに勧められた料理を頼み、口にしてみた。
懐かしい味だ、えーとこれどこの料理だっけか……
「アリティーナの味だな……」
『へ?』
二人とも何私たち知りませんでしたって顔してんだこれぐらい常識だぞ。
「アリティーナってあの北方の鎖国地域のことですか?」
あ?
まじかよ、あそこ今鎖国してんのか……そりゃ知らないか。
「あんた、そんなとこまで行ったことあるんだ……ねえ、他にもいろんなところに行ったことあるんでしょ?教えなさいよ、ここの代金持ってあげるから。」
俺はその言葉に調子にのってうまそうなのを大量に頼んだら、また殴られた。
まったくひどい女だ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
次の日、私は昨日のことを思い出しながら学園の廊下を歩いていた。
出会いはひどかったが、話は面白かった、私たちの知らないことまで知っていた。
もう一度会って話がしたいと思った人は久しぶりかもしれない。
だが、あの人とはもう会えない、そんな気がしながら教室のドアを開けると
「おはようさん、さあ席に着けー……」
そこにはクソ教師がいた。
「あんたかあああああい!!!」
三回も思いっきりぶん殴った人は初めてかもしれない。




