寒天語り
ぼくの中に眠るのは
砂浜に干された天草の記憶
煮沸されて麻袋の中で惑う
抽出された粘り気
寒空の下凍えていった
虚ろな味が赤ワインに染まる
ぼくに映るあなたの顔を
思い出す
遠い星に旅立った
葡萄を探しに
常温のままで保てるから
力なく頼りなく美しく
ぼくは蜜柑をのみこむ
きみが望むならば
乳白色になってもいい
或いは立方体におとされて
柔らかな求肥と粒選りな餡
赤えんどうを転がして
黒蜜の魔術を信じたい
やがて全世界をのみこんだ
ぼくに映るきみの顔が
ふやけてる
地球儀入りの寒天なんて
いかれてる