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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第三章 食料調達編
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新たなお肉 8

二日前に上げたつもりが(ry

 王様とフェズさんの手の甲に、赤と白の紋様が浮かび上がっていた。


 多分私の言葉が引き金となって、ファレンとウェスタの眷属紋が二人に表れてしまったんだと思う。現れてしまったのは仕方が無いし、まぁ王様は良いんだ。しかしフェズさんを神々の争いに巻き込むことは私は納得できなかった。


 私は守れる範囲だからこそフェズさんを巻き込んだが、守りきれない戦いに巻き込むのは無責任だと思う。なので私にも責任があるし、ファレンは喜びまくっているが一言言っておくべきだろう。


 しかし私が言い出す前に、ファレンは私の様子を見て言いたいことを分かってくれたようだ。非常に良い子なので今の状況を思い出して顔を青くしてしまっていた。


「フェズ……ごめん」


「まぁ……いきなりで驚きましたが何か不都合があるのですか?」


 今後邪神と戦わなければならない状況なので神の眷属になってしまったら、フェズさんが狙われる可能性も高くなってしまうのだ。


 ファレンはフェズさんに頭を下げて謝ったが、フェズさんもファレンと私の顔を交互に見て不安になったようだ。


「うん。それは私の眷属紋で、同じ物を持った人は一般的に英雄や勇者って呼ばれていた事は知っていると思う。だからそれがあったら勇者と同列に思われて狙われる可能性がある……かもしれない」


 そーなのかー。つまりファレンは勇者の親玉だったんだね。


「それは……」

「存じ上げませんで申し訳ありませんでした……!」


 えー……なにこの茶番?フェズさんは土下座してしまっている。それはもう凄い勢いで出鼻を挫かれたファレンは二の句が告げられず『ぽかーん』と口を開けてしまっていた。


 私も一体どうすれば良いのか分からなかったが、フェズさんに話をさえぎられた王様が何とか話を引き継いでくれた。


「魔の神よ。申し訳ないがそれは極秘事項でな……民には伝えていなかったのだ」


 つまり……魔の神が勇者の主だったら何か問題が有るのだろうか?私たちの世界のゲームなら大問題だったろうけど。フェズさんの反応を見る限り、この国も勇者に助けられた歴史があるのかもしれないなぁ。そんな事を考えている私を見て大様は話を続けた。


「アイ殿も深読みはしないで貰いたいのだが、実は紋様の偽造が後を絶たなくてな……。あまりに酷かったので過去に情報操作をした経緯がある。今では上層部しか知らぬからフェズが持っていても大きな混乱はなかろうよ」


 ふむふむ。勇者、もしくは神の眷属を騙って色々な事があったんだろう。


「やけに信仰が集まらないと思ったよ!」


 結構がんばってたのになぁ……とファレンが拗ねてしまった。


「まあ王様は兎に角、フェズさんは一般人だからねぇ。その紋があると危険が危なくてデンジャーなんだよ。下手にファレンの眷属と認識されたら、今回のような『神と神との争い』に巻き込まれる可能性もある」


 うん。これは私にも責任があるし『フェズさん強化計画』を実施する必要があるかも。最低でもどこかの龍を倒せる位はないと安心は出来ないと思う。


「私は良いのか……?」


「王様はウェスタから恩恵受けてるんだから、協力するのは当然でしょう?」


「もちろんその通りなのだから異論は無いが、国の運営の妨げにならない程度でお願いしたいんだが……」


 うんまあいいんじゃない?と凄く適当に返事をしておいた。けどまあ王様に迷惑はかけても、国民に迷惑をかけるのは本意ではないので大きな問題は起こらないと思う。


「……御言葉ですが、ファレンさんはリーシャを救ってくださいました。畏れ多いですが私も皆さんをすでに家族も同然だと思っています。もとから私にできることであれば誠心誠意込めてさせていただく所存ですので、お気になされなくて結構です」


「でも……」


「私は商人です。それに行商人をしていたことも有ります。100%安全などという事はありえませんでしたし、冒険者の方とは比べられないとしても少なからず命を賭けて行動してきています。アイ殿は危険だとおっしゃられましたが、私がモンスターの群れに囲まれるのとファレンさんの眷属になる事、どちらが危険だと思われますか?」


 今のフェズさんなら普通のモンスターの群れに殴られても傷一つ付かないよね?という空気を読めない言葉は隠しておいて、フェズさんの問いに私は頷いて答える。


「うん、どちらもフェズさんにとっては死亡フラグと言うのは同じだね。理解しているなら勿論私は反対しないよ」


 納得してくれてよかった良かった。実はフェズさんが拒絶しても納得して貰えるように話を持っていくつもりでした。自治領のトップが英雄の類いと周りの国に認めて貰えるなら、かなり有利だとかソロバン弾いてないよ?逃げられないようにとしか考えてません。


「フェズ殿は一般的な商人でしかないはずでは?能力的にもかなり無理があると思いますが……」


「ふっふっふ……只の素人じゃないんだよね。今のフランツ王が腰の剣で切りかかっても、素手のフェズと良い勝負になると思うよ?素手同士なら言うまでもない位の差があるのは間違いない」


「フェズ殿は何かの達人なので……?」


 私の腹黒い考えはおいて置いて、王様の疑問にファレンはどや顔で答えた。まぁ事実なので私は何も言わない。


「いや、普通の商人だよ。毎日美味しいお肉を食べまくってただけの……ね」


「勝ち負け以前の問題でしょう……それは……」


 王様も理解できたようでよかったよかった。


「アイ殿……?勿論子供達には食べさせていない……訳はないな」


「一杯食べて、すくすく元気に育ってるよ」


「……それは何よりだ」


 皆もりもりお肉も食べてるけどまだまだ魔力上がってるからね。子供達も今はレベル1だがレベルが上がるのが楽しみだなぁ。


「で、具体的にはこれからどうするので?こうなった以上、この街を上げて全面的に協力させて頂きます」


「そうだな……早ければ敵の第一陣が明日の朝には来るだろうが、そんなに多数は来ないだろう。クーデターを起こした事による王都内部の安定に一日。戦争の準備に二日。進軍に一日。普通は早くてもこれくらいかかるからな。……だが王城を制圧した部隊はまず間違いなく早めに来るだろう。その対策が目下の最優先課題だとおもう


 うん、その判断は正しいと思う。私も一番の懸念はその部隊に中に入られる事なんだよね。


「とりあえず直ぐに門を閉鎖して篭城の準備に入ろう。それとお金と食料はどれくらいある?」


 食料は調達の目処はたってるけど、やはりお金もあった方が良いだろう。とりあえず備蓄は聞いておくべきだと思う。


「この街の兵士が1500程度ですが、全ての民の食料もとなると切り詰めても一月持たないでしょうな。お金も戦争の準備で無くなる程度しかありません……」


「この街は砦ではないからな。モンスター相手なら十分だったんだが」


 申し訳なさそうに言う領主さんを王様がフォローする。むしろ私はそんなにあったことに驚いたんですが……。モンスターがでる森が近いので備蓄を多くしていたのかもしれない。


「うん、それだけあれば全く問題ないよ」


 私の言葉に領主さんは安心したようだ。


「……たが、他の街の兵力をあてにはしないのか?下手をしたら相手の最大兵力はこちらの十倍以上だぞ。兵数は多いに越したことはあるまい」


「他の街の領主さん達には自分達の地域の治安の維持をお願いしたい。戦火を広げさせるわけにはいかないからね」


 さすがに時間もないので作戦を練る時間はない。時間があれば戦闘を起こさせない事が可能なのだが、今回は流石に無理だろう。なら相手には悪いが被害を最小限にするのが一番だと思う。


「アイは今回どうするつもりなの?この街を魔改造すると後が大変そうだけどー?主に領主さんとフランツ王が」


「今回はミドガルズオルムさんにお願いしようかと」


 ファレンの言に王様と領主さんがビクッとする。ぶっちゃけ改造してもね、時間がないから中途半端になってしまうんだ。一週間位あれば色々できるけど多分早いと深夜には先発が来るだろうし、そんなのは楽しくない。


 なので今回の獲物……げふんげふん、召喚するのは一回顔が出かけた所で還したあのミドガルズオルムさんです。


「あー、なるほどなるほど。万能蛇さんなら確かにどうしようもないね」


「一番の問題は、この世界の蛇さんが素直に言うことを聞いてくれるかどうかかなぁ」


「私も一緒だし、問題ないんじゃない?」


 ファレンの太鼓判も貰えたので作戦はこれで行こう。


「じゃあ私に外の対応は任せてくれていいから、王様達は中のをお願い。なので戦争の準備はいらないから、街の治安維持に全力を上げてね。結構お金余ると思うけどお金もちょっと欲しいんだ。だから使って良い分を大体で良いから教えて欲しい」


「アイ殿はどのくらいの籠城になると考えているんだ?」


「んー、短くて三日?長くて一週間かなぁ」


「三日……!?」


 王様は私の答えに絶句してしまった。多分作戦を聞いたら驚くだろうなぁ。


「え、そんなに作戦聞きたいの?聞いたら後悔すると思うよ?」


 相手が時間くれなかったのがいけないんだ。私は悪くない。


「そんなことは断じて言ってはいないが、聞かぬ訳にはいかないだろうが……」


 王様はため息混じりに答えて来たので、今回の作戦の全貌を心置きなく話すのだった。





「……正直クーデター犯に同情してしまいますなぁ」


「犯人には悪いが、私に休暇をくれただけなのかもしれん」


 領主と私がそう思ってしまうほど、アイ殿の作戦は異常だった。逆の立場なら戦う事を放棄するしかないだろう。


「王は犯人の目星が付いているので?」


「無くはないが……神とのパイプを持っているなんて情報はなかったんだ」


 神の守護が有ればクーデターなどしなくても、小国を纏める事でそれなりの国の王になれるのだ。つまり今回のクーデター犯は王家の乗っ取りが目的ではなく、クーデターを起こす事自体が目的だった可能性が高い。


 第一この国には火の神が既にいるのだ。あの人の性格上、捨てる事はしても奪われる事を良しとするとは思えない。


「つまり誰がクーデターを計画したのかが問題なのですな」


「いや、違う。クーデターの理由はそれほど重要ではない。問題なのは神がクーデター派についた理由だ。それが分かれば私にも出来ることが有るだろうになぁ」


 そう、いくら人間対策は完璧であったとしても相手には神がついている。残念ながら神の目的が分からぬ限り、我々には対策は立てようがないのだ。


「まぁ、アイ殿は何か策があるのだろう。我々は内部の混乱を最小限にすることに尽力すれば良いさ」










 王様たちが色々話し合っていた頃、私は史上最大のピンチを迎えていた。まさしく大ピンチ。虎の尾ならぬ狸の尾を踏み抜いてしまったのだ。


「……アイ様、弱いものいじめは駄目なんだよ?私がされたことにアイ様は怒ってくれていたよね?」


「……はい」


 私はリーシャちゃんの目の前で正座をしている。何故かと言うといつもの乗りで自爆してしまったのだが、海よりも深く山よりも高い理由があった事を話しておきたい。





「ベルン、バアル、ちょっとお出掛けしよう」


「私もいくよー」


 私の言葉にまず反応したのは横のファレンだった。ファレン先生は着いてくるのは確定だから主張しなくても大丈夫だよ。


「戦争クマ!?」


 ベルンがテンションMAXで返事をしてくる。何と言う殺る気まんまんな熊なんだ……


「ベルン、君はその服をボロボロにするつもりかい?」


「いや、そんなつもりは……」


「なら、もう少しおしとやかにならないとね」


 ベルンは慌ててバアルに答える。だか何を隠そう、その服は破れても再生する一品なのだ!しかも破れても防御力は下がらないので、破いてしまっても私は一向にかまわん!!


 だがやはり保護者は保護者だった。


「新しい子を召喚するのにここじゃ狭いから、一緒に来て欲しいんだ。ちょっと大きい子だからね」


 そりゃ大きいよ。最大直径10mくらいあったはず。


「分かりました。同行させていただきます」


「分かったクマ」


 ベルンとバアルの同意は得られたので顔合わせは問題なさそうだ。


「アイ様……私も連れていって貰えませんか?」


「あら、リーシャちゃんも見に行きたいの?」


 危険はないと思うけど何らかの事故はあり得るので、リーシャちゃんはお留守番をしてもらうべきだと思う。思っていたのだが、次の瞬間に瓦解した。


「はい!私もアイ様のようになりたいんです!!」


「リーシャちゃん!!」


 ひしっ!!


 私は言うや否や左手で抱き締めて右手で頭をもふっていた。耳がぴこぴこして凄く気持ちいい。


「アイ様、苦しいですよ~」


「いくらでも見に来ていいよ!むしろお持ち帰りしたい!!」


 私はリーシャちゃんの魅力にメロメロだ!


「はっはっは。どこにお持ち帰りしようというのかね?」


「バ○ス?」


 お持ち帰りする場所が砕け散りました。


 ファレンのボケにオートでツッコミが入ったことで、私は強引に現実に引き戻されてしまった。


「じゃあ気を取り直していこうかー!」


「おー!」

「……おー?」


 私の宣言にベルンとリーシャちゃんが合いの手を返してくれたが、微妙に疑問系なのは愛嬌だと思う。しかしベルンはなんであんなに嬉しそうなのか後で聞いてみる必要がありそうだなぁ。






 目的地について最初に話したことは用件とは全く違うことだった。


「良いことおもいついた!ファレン、ジ○リ系とか良作映画とかこっちにもって来れないかな?子供の情操教育になかなか良いと思うんだけど」


 バ○スで思い付いたのは誰でも想像がつくと思う。


「不可能ではないんだけどね……この世界は魔法があるからデリケートなんだよ」


「と言うと?」


 なんの問題が有るんだろうか。魔法があるからこそ受け入れられやすいんだと思うけど。


「過去の勇者がロケットパンチを広めたところ……」


 ロマンが理解されなかったとかかな?


「手を無くす人間が続出した」


 うん、子供は結構無くすよね。びょーんと飛ばしてソファーの下に入ってしまったり、隙間に入ってしまったり……って、


「生身か!!」


「生身だよ」


ファレンはため息混じりに答える。普通ガントレットを飛ばしたりするんじゃない……?一体勇者は生身の手を飛ばして一体何をしていたんだ……。


「うん、非常によく分かったよ……」


 つまり、知識があったら実現出来てしまうと言うことか。確かにそんな危険物を広めるのは出来れば遠慮したい。手が無くなった人はその後どうなったのか聞くのが怖すぎるよ……。




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