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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第三章 食料調達編
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新たなお肉 7

 クーデターが起きて王城が陥落。このままだと王家は存亡の危機だ!


 その当事者の王様に一言。




「ぷっ、ざまぁ」


 ウルトラ上手に応援できました!




『『ゴフッ!!』』


 アイの煽りは こうかばつぐんだ!


「いやいや、ちょっと待て。お前たち受けすぎじゃないか!?」


 止まっていた時間が動き出すと、王様サイドの皆さんが大変なことになってしまいました。やっぱり皆思うところがあったようでかなりの状態異常に掛かって生命の危機に瀕しています。


「緊張を和らげる為に本音をぶちまけたら、皆が過呼吸に陥ってしまいました。てへっ☆」


「アイ殿……感謝はするが、もう少し建て前で本音を隠してもらえると助かる……正直イラッとした」


 うん、正しく自業自得だから仕方がない。因みに王様の横暴ぶりをあまり知らないフェズさんは、ビックリしたのか心配顔で私と王様を見ている。もちろん知っているファレンは爆笑している側だ。


 しばらくすると王様チームは気力でかなり戻ってきたようだが、ファレンはまだ爆笑している。王様は多分ファレンから詳しい情報を聞きたいのだろうが、一応は神様なので強くは言えないようだ。


「して……魔の神よ。黒幕が居るのだろう?」


「はぁはぁ……ケホケホ……うん居るよー、勿論居るよ。でも……ざまぁ。アッハッハッハ!」


 王様の問に答えるだけ答えて再度遠い世界に旅立つファレン。どうやらこれ以上の情報は引き出せないようだ。王様は自分の無力を痛感したのか遠い目をして語りだす。


「この機会にクーデターや暗殺を企む者が出ないとも限らんのでな、城や重要施設はアイ殿が見たレベルの警戒網を敷いている。派閥も分散させていたので兵力的にもクーデターをさせるのは人間には不可能だ。……つまり、アイ殿のような理不尽な存在か、神が力を貸さねば実行出来ないだろう」


 王様は酷い言いぐさである。地味に怒っているのかもしれない。


「クーデターは予測していたんだ?」


「私が逆の立場なら材料が揃えば起こしていたからな。失策で何百年と守護して貰っていた神に愛想を着かされ、アイ殿を知らねば奴隷開放も売国と取られかねない。更にはこの亡国の危機だ。野心家なら王の首を狙うのは致し方あるまい」


「あー……。マジごめん」


 私はあまり気にしていなかったが、国の内情は色々大変だったらしい。


「構わんさ。問題はどこの神がクーデター派に付いたかだ」


 王様はチラッとファレンを見る。まだ笑いが残ってはいたが、ファレンは王様が何を求めているか分かったのだろう。一転真剣な顔な顔になる。


「私はこの件に関しては部外者だからね、あまり荷担するわけにはいかないんだ。火姉ぇが協力するのは問題ないんだけど……」


ファレンは考えるようなそぶりを見せて十秒ほど黙り混む。そして満面の笑みで告げた。


「火姉ぇは『料理の仕込みが忙しいから、下級神くらい独力でなんとかしろ』だってさ」


おおっと!王様より仕込みを取った!それで良いのか守護神!?さらにファレンの笑顔は輝いている!


地味にファレン『ざまぁ』より酷い煽りをしている気がするが、この件に下級神が関与しているとい事も伝えてくれているので……イーブン?



「独力でなんとかなる訳無いではないですか……」


「どちらにしても諦める訳には行かないが……神々の戦いの余波で、国土が焦土にならなくて安心しているのも事実なのだ」


 領主さんは落ち込み、反対に王様は安堵している。


「ねぇねぇ、下級神ってどれくらいの存在なの?ウェスタよりは当然弱いとは思うけど」


「確かに聞いておきたいな。事前に分かっていれば何かしら有効な対策を検討する事もできるだろう」


 バハムートさんクラスとかだったらかなり準備をしないいけないし、相手の戦力が分かれば避難準備等もはかどると思う。


「火姉ぇは……正直比較対象として役に立たないからねぇ。分かりやすく言うとベルン、来てた魔王の10倍くらいかなぁ」


 なーんだ。所詮は下級なのかー。


『……』


 うん、たぶん皆にはすごい敵なんだと思う。私にそう思わせてしまうほど、領主さんの顔芸がすごい……。


「そんなに深刻にならなくても良いんじゃない?目の前の理不尽な人が現状を放置するわけが無いし」


「えー?」


 ファレンがさも当然のように言ってくる。まあ久々の防衛戦だし、王城も攻めないといけないかもしれないし、結構楽しそうなイベントではあると思うけど。


「『えー?』とか言いながら目が輝いてるよ?殺る気満々じゃないですかやだー」


 やる気は満々だけど、一個だけはっきりさせておかないといけない事がある。便利屋になるつもりは全く無いのだー。


「とは言え、いくら神が介入したといってもクーデターの鎮圧なんてお断りだね。王様の尻拭いをしなければならない理由もないし、相手にも主義主張はあるから私が邪魔をするのは筋違いだ」


「そう言えば内乱系はダメだと言ってましたなぁ……」


 基本的に内乱とは為政者に問題があるために起こるものといって良いと思う。どちらに正義があるかは置いておいても、防げなかった時点で為政者の失点なのだ。それに部外者が介入すると大体碌なことにならない。


「そんなっ!首都が押さえられた今、王も捕まればこの国は終わってしまいます!どうか……どうかご再考を……!」


 近衛兵の紅一点さんが頭を下げてくる。現状で王様が捕まったらこの国が終わるだろうね。何故終わるかというと、勝手に王家が変わった事にウェスタが怒って物理的に終わる。なので王様を取られる訳には行かないのだ。


「こらこら落ち着くんだよ。アイはフランツ王を見捨てるなんて言ってないでしょ?」


「ですが……!!」


 ファレンが紅一点さんを宥めるが、本人は正常な判断が出来ていない。こういう人にはちゃんとフォローをすることにする。


「まあ身に降りかかる火の粉は払わないといけないからね。領主さんがもう知り合いな事もあるけど、人間だったら愛着がある街を攻撃されたら誰でも守る。例えば守った余波で敵兵がふっとんだとしても、それは自業自得でしかないよね?」


 その国の人の権利を私が妨害する権利は無いといっても、逆もまた然りなのだ。やられたら倍返しだ?


「つまりアイは自分を守るけど、その範囲内にフランツ王がいても相手に渡さないといけない道理はないんだ」


 正確に言うならその判断をするつもりが私には無いんだよ。領主さんや街の人が王様を差し出すというのなら私はそれを止める気はないし、ウェスタも王様が罷免されるに足る十分な理由があれば納得すると思う。まあ実際にはそんな事にならないとは思うけど。


「といいつつ、ファレンも同じだよね。フェズさんやリーシャちゃんが居る以上、この街に危害を加えようとする相手を許すはずが無い」


「そりゃまぁ、素直に殴られないといけない謂れはないからねー?『私が守りたい物』に手を出そうとした時点で、私は当事者になるんだよ」


 二人ではっはっはっとわざとらしく笑い合う。


「黒幕の真意は分からないが……相手詰んでないか?」


「うーん。普通のクーデターなら間違いなく詰んでるね。このクーデターの目的が王位の簒奪にあれば問題ないんだけど、他のカモフラージュの可能性もあると思う。まあクーデターの方はまず成功しないから一先ず安心していいよ」


 クーデターより大きい目的って言うのが皆目見等もつかないけど、その辺りの情報収集も必要かもしれない。


「申し訳ない。素朴な疑問なんですが、何故『内乱には介入しない』等とザルなルールを言う必要があったのですか?」


 先ほど噛み付いてきた紅一点さんがかぶせてくる。険は取れてはいるが、納得はできていないようだった。


「私はただの趣味の一環だよ?」


「趣味ですか……」


 まだ納得できていないようで、私を見ながら考え込んでしまう。結構頭が固い人っぽいから、ここは王様にスルーパスしてしまおう。


「じゃあ王様に聞いてみよう。王様、いまから私が内乱に介入して反乱軍制圧してきて良い?勿論関係ない人に危害が行かないようにするよ?」


 眠らしたり、スタンさせたり、転移させたりと、手段を問わなければ色々方法はあるんだけど。


「今はやめてくれ。さすがに悪手すぎる」


「だよねぇ」


 王様がため息混じりに答えると、えっ?という顔で紅一点さんが呆けてしまった。 


「つまりね。私みたいな『部外者』がでしゃばったら反乱軍も民衆も納得しないんだ。それに結果的に王様はなにもしなかったので舐められる。今回は解決しても内部と外部に火種を抱えると言う最悪な状態になるんだよ」


 私が国に所属したらこの限りじゃないけど、そんなつもりは更々ないので割愛する。


「私はあくまでも領主さんの街に滞在していた召喚術師だけどね?私が居たのは領主さんの手柄になるから、この街を守った事が王様の実績になるんだ。領主さんも王様の配下だからね」


 部下の功績は上司の功績でもあるのだ。


「ファレンやウェスタが出ていくのも国王軽視の風潮に繋がる。だから相手を自爆させて、民衆的にも反乱軍的にも納得できる着地点を探したいんだよ」


「つまりそれは……『邪魔されてムカついたから、首謀者を反論出来ないほど吊し上げる』と言うことか……」


「……だから言ったんだよ?結局は私の『趣味の一環』だって」


 私の邪魔が出来ないように叩きのめす必要があるのは間違いないしね。


「……アイ様は人を陥れる事を趣味にされているのですか?」


 ボソッっと紅一点さんが酷い事を言ってくる。この人も王様を弄られて怒っているのかもしれない。


 でもちーがーうー、目的の為に陥れる必要があるからするだけなんだよ?


「騎士なら素振り等の訓練をしたことの無い人は誰も守れないよね?それと同じであくまでも目的の為にしないといけないからやってるだけで、これは趣味じゃないよ。戦う事が趣味の人と、素振りが趣味の人。その二つくらいの違いがあるんだ」


 騎士の素振りと私の権謀術数は全く別の物だけど、目的の為の手段だという事は同じだと思う。 


「私の趣味は物を作って見て貰う事だよ。楽しく遊ぶ為に頑張ってたらこうなっちゃっただけなんだ」


「アイ殿……普通の騎士にそれは理解できるとは思えん。事実だけのべると、アイ殿は私に全面的に協力してくれている訳だ。理由としては私が不利になるとアイ殿の自治領が無くなったり、奴隷解放が中止になったりしかねないからなんだがな。どうした、何か不満なのか?」


 がんばって説明したのに却下された私はとても不満です。


「いえ……アイ様の今までの行いが聖人や賢人の類いだったので、話の内容に驚いてしまっただけです。申し訳ありませんでした」


 だが私は大魔王なのだ!


「私は突き詰めると私の為だけに行動してると思ってるからね。奴隷の生活が向上しようが、王様の命が助かろうが、根本は私の我儘だからそんなに感謝をして貰おうとは思ってないよ」


「助けられた方は普通はそれなり以上にに感謝すると思うが……」


「ううん、奴隷の事だって現状より立場が悪くなる可能性だってあったし、金銭的被害を受けて私を恨む人もいるからね。そう言う可能性や人間を容認している時点で、私は悪人と言われても仕方がないと思ってる。勿論喜んで貰えるのは純粋に嬉しいんだけどね」


 私の行動を偽善だと言う人はゲーム内でも多々いたが、偽善じゃく独善なのだ。なので嫌なことはしない。めんどうな事はしない。うん、多分凄くめんどくさい奴だと思う。


「……アイ殿の台詞は何故か心に染み入りますな」


「そうだな……私よりも王らしいかもしれん」


「王様は国や民のため。私は自分の為という差があるけどね。まぁ私は私自身の王だから当然だね」


 小さいときから言われ続けてきた言葉がある。その言葉は未だに私の目標でもあるのだ。


 しかし何故か私の言葉を聞いたとたん、王様はポカーンとしてしまった。


「どうしたの……?」


「今、アイ殿はかなり深遠なことを言ったような気がするのだか……?」


「……?」


「あれだよ『自らを自らの王足らしめん』だっけ。アイがよく言ってた好きな言葉。」


 あー、それね。


「自分自身の王にすらなれないなら他人が王と認めるわけはなく、自分自身の王にすらなれないなら自分自身の十全を発揮できるわけも無い」


 私はこの言葉を生活のメリハリをつける為にリアルでもゲームでも結構紹介してたりする。これは結構突き詰めて考えていくと奥が深い考え方なのだ。


「まあ、私は私の主であればそれでいい。後は主に恥じないように行動するだけだよ」


 たぶん私のスタンスで生まれてくるのはただの気分屋だけどね。


「そうか……非常に役に立つ至言を貰ったな。今この考えを形にすることはまだ出来ないが、私に足りていなかったものが分かった気がする」


 私もすごい好きな言葉だけど、今の状況の王様には全く役に立たないんだけどねー。まあこれが終わったらじっくり考えて答えを出してくれる事を期待しよう。


 とか考えてたら、王様の右手が輝きだした……?明鏡止水でも悟ってしまってシャイニングなのか!?


『熱っ!』


 王様の手の甲には赤い紋様が浮かび上がっていた……とおもったら同じくフェズさんからも叫び声が上がり、手の甲にも白い紋様が浮かび上がっている。


「これは……まさか!」

「あーー!!私の眷属紋だ!」


 フェズさんの手を握ってぶんぶん振っている。


 ファレンはこれが何か知っているようだが、……もしかして嵌めた?


「火の神……」


 王様がつぶやいたので後ろを見ると、ウェスタが私の背後に転移してきていた。料理をほっぽって来るくらいの事は起こっているのだと思う。神の眷属云々はウェスタから聞いていたが、殆ど適正がある人はいないって言う話だったけど……。


「ふむ、やはりそうか。後で詳しい話を聞くとしてが、今はアイに任せていいか?」


 どうやら確認にきただけで、やっぱり料理のほうが優先らしい。


「勿論!晩ごはん期待してるよ」


「心得た」



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