大魔王たぬき事件 2
3/9 改定しました
私は怒っていた。
どれくらい怒っているかというと『激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム』を通り越して『超新星ムカおこエンドオブエンシェントジェノサイトブレイバァァァ』位である。でも多分あと3回くらい変身を残している。
一年前の事件があったのでアイン城砦には多数の人が暮らしている。が、計画時から大規模な城の予定地を空けていてもらい、安定したら城を魔改造する予定にしていた。もう城の形は出来ているので、マスタークラフターとしての総力を上げて『遊ぶ』つもりだったのだ!作ったものを多数の人に見てもらえて尚且つ感想をもらえると言う、最高の『遊び場』が一年半もかけてまさに完成しようとしていたのだ!!
その場所を破壊し、略奪する為に『敵』は来ようとしている。
怒らない訳がなかった。
この時の事を義賊(笑)さんは後にこう言っていた。『逃げられない』と思ったと。とてつもない危機を感じたと。その後に『敵』認定されたプレイヤーの話を聞いて、自分ではなかった事に安堵しながら『無茶しやがって…』とPKer達の冥福を祈ったという。
義賊(笑)さんには即情報の収集に動いて貰った。反応がおかしかったが大丈夫だろうか。
すぐに追加情報が来た。詳しい人数等はまだ不明だが、敵は馬鹿か天才かのどちらかだったらしい。
なんと相手は奪った武器の性能を掲示板にのせ、『強い武器やアイテムの寡占は悪だ!全プレイヤーに利益を還元するべきである!』『この武器を作ったアインというプレイヤーは過去にTOPギルドを潰した元凶の人物だ!』終いには『我々は正義だ!今回の攻城戦は一般プレイヤーからも参加可能とする。我々の今の環境を変える為にも多数の参加を願う!』と。
日時は三日後。時間と場所も指定して掲示板で宣伝を行っていたらしい。
私は思った。『知らねぇよ』と。
万が一、この件が『話し合い』として面談の申し入れ等であったら、他のプレイヤーから疎まれるPKerだったとしても、ある程度の譲歩はしたかもしれない。もちろん個人に対する譲歩ではないのだが。
しかし相手が選んだのは、『問答無用』の略奪行為だった。あの事件のPKerと同じく表面を正義で覆ったテロリストと変わらない。だが相手は寨をなげてしまったので、すでに交渉は手遅れである。
結局のところ私も奴等と同じだと言うことは理解はしている。だから相手が『奪いたい』と言うなら私は『守りたい』から守るだけだ。
私はどうやってこの『怒り』を晴らすか計画を練っていった。
情報を聞いた『アイン城砦』や『ツヴァイ』の住人達は共に戦うと申し出てくれた。申し出はとても嬉しかったがここで住人達が戦うと、プレイヤーvsクラフター集団の対立という『あの事件の再来』を招いてしまう。その事態だけは絶対に避けないといけない。なんとか参加して貰えない理由と『憂さ晴らし大会の詳細』を説明し、納得してもらった。何も反論がなかったのは『笑顔が怖かった』かららしい。
三日後が来た。
こちらの戦力は左軍たぬ騎士200、中央軍たぬ騎士100、右軍たぬ騎士200、伏兵としてグリフォンたぬ騎士が200、後戦場に関係ない海に海軍2000である。
相手の兵力は総数1500。細かい兵科は不明だが、召喚モンスターや魔術師系のプレイヤーも見て取れる。
他の陸戦空戦戦力は、『アイン城砦』と『ツヴァイ方面』の防衛と少数は偵察に当たってもらった。別働隊が居る可能性も考えていたが、1500は相手の戦力のほぼ総数であると情報があったので問題ないだろう。海軍は持ち場が無いので、とりあえず全軍海域の警戒をして貰っている。
たぬ騎士達は煌びやかなとても高価そうな装備で身を固めている。実際性能はかなり高い。たぬ騎士シリーズの中では最も高性能といっていい。しかし今回のミッションは難易度が高い。たぬ騎士達に怯えが見えているのは気のせいではないだろう。
私は城砦のプレイヤーに最高の装備を作って貰った。レイドボスの素材をふんだんに使いまくり、名実共に最高の神話クラスの装備で身を固めていた。
そして何も知らない人から見ると、500vs1500という圧倒的に不利な戦いが始まろうとしている。
敵軍の塊の中から敵の指揮官と思われる騎士が出てきた。奪われた武器を持っている。仕方が無いので私も城壁の上に出た。
「われら解放軍は総数1500を数えている!今回の目的はあくまでも秘匿されている技術の解放だ!戦いは双方の為にならない!速やかに降伏すれば悪いようにはしないと約束しよう!」
でも略奪しまくって、クラフターに色々強要させたいんですね、わかります。本気でその目的を果たそうとするなら、まず話し合いをするべきだろうに……。話し合いの前提がこちらの降伏とか、それは既に話し合いではない、戦後処理だ。
余りにひどい宣戦布告内容なので、こっちはたぬきのパーカーの胸元をギュッと握りながら情に訴えかけてみる事にした。
「私は悲しい!この街は一年前のあの忌まわしき事件によって、心に傷を受けたものが集まって出来たものだ!諸君らはあの過去の過ちを繰り返すつもりなのだろうか!!私は私の家族を守る義務がある!諸君らも、自らの家族を害する意思から守りたいと思うなら!剣を置いてもらいたい!」
……あ、かなりざわついてる。
「くっ、我々には正義がある!皆の戦力の向上のためにも今は戦わねばならんのだ!全軍突撃だー!」
内心やっぱり脳筋かと思いながら、後日『大魔王たぬき事件』と呼ばれる出来事が始まった。