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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第三章 食料調達編
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魔王襲来 5

連日投稿です。

「それで、私の場所と名前はどうやって知ったの?それにベルンは明らかに何らかの魔法にかかっていた。貴女に魔法をかけた上、私の事を知っているような存在が貴女のバックに居るはずなんだよ」


 頭の熊が急に慌て出した。凄く分かりやすいが、明後日の方向を向きながら私に答える。


「……話せないクマ」


 ……話せないクマ、と。


「んー、じゃあ私達に何かするように言われた?」


「言われてないクマ」


「その人は今どこに居るか分かる?」


「分からないクマ」

 

 とりあえず何か危害を加える事を約束したわけではなさそうだが、問題は三つ目だ。この質問でめんどくさそうだけど相手の事は大分わかった。

 

 後の二つは頭の熊も普通だったし、召喚魔法下にあるので事実で間違いない。


 多分ベルンは情報と引き換えに、容疑者の事を話さないようにとでも約束をしていたのだろう。怒られないとは思うが念のためにウェスタに確認する。


「ウェスタ、どういう事か分かった?」


「ん?くまっ子が何も言わないんだから分かるわけがないだろう?」


「だよねー」


 うん、ベルンが何も言ってないとウェスタの証言も取れたので、これは後に回そう。


「アイ、ゴメンね……?」


「いや良いよ、ベルンは弄りがいがありそうな子だし私はウェルカムだよ。誰か知らないけど、もしかすると単純な善意かもしれないしね」


 流石ファレンは気が付いたようだ。ベルンには何も問題は無いので、重要なのは相手が何を考えてベルンを送ってきたのかなのだ。


「弄りがいってなにクマ!?」


 そういう所だよ、とベルンに言うわけにもいかないので話をすり替えることで対応する。召喚陣をベルンから見えないところに展開しながら切り出した。


「じゃあそろそろベルゼブブさんを召喚しようか?」


「いいのクマ!?」


「たが断る」


 この私が最も好きな事のひとつは、凄く喜んでいる奴に「NO」と断ってやる事だ……。


「どっちクマ!?」


 ベルンは地団駄を踏んでいる。やっぱり良いキャラしているなぁ。あまり引っ張るのもかわいそうだろう。



「よし、後ろを見てみて」


「?」


 壁際には肌の浅黒い、ベルンと同じ位の年の少年が立っていた。あの時はゆっくりみれなかったが、見た目はぼさぼさの髪の毛の中東の少年そのままだ。


 こっちの彼はベルンと違い、ボロ布では無くある程度ちゃんとした服を着ている。念のため離れたところに召喚したのは無駄になってしまったかもしれない。


 またこういうやり取りを見せればベルゼブブさんも私がベルンに害を与えてないのは分かるだろうし、状況の把握もし易いだろう。断じてベルンで遊びたかっただけではないのだ。


 彼とベルンは最初は状況把握が追い付いてないのか互いを見て立ち尽くしていたが、状況を先に理解したのか彼がベルンに近づいていった。が、私には再会を喜んでいるようには全く見えなかった。……多分怒ってる。


 ……パァン!


 案の定、少年がベルンの右頬へ鋭いビンタを炸裂させた。それを見たファレンが前に出そうになるが制止させる。顔は止めて欲しいとは思うが、話の通りなら今回は流石にベルンに非があると思う。


「ベルン、何故君を叩いたか分かるかい」


「……」


 ベルンは答えない。まだ状況についていけず、考えが纏まっていないのだろう。


「君は自分の命を何だと思っているんだ!君が居なくなって私がどれだけ心配したか……!」


 そりゃ人間の街に魔族が侵犯してきたら戦闘になってしまうだろうからね。そう簡単にはやられはしないとは思うけど、一人だといずれ討伐されてしまうだろう。


「だって私はあなたの為に……」


「そう思っているのならせめて行動する前に相談してくれればよかったんだ……君が僕の知らない場所で死ぬようなことがあれば、死んでも死にきれない」


 二人は無言で見つめあっている。リア充達爆発しろ。


「はいはい、二人の世界はそこまで。今の状況は分かる?」


 リーシャちゃんの前でこれ以上はいけない。


「いえ、ベルンが無茶をして貴女に確保されたと言うことしか分かってません」


 この人は全く照れないな……そして要点は殆ど理解している気がする。


「未確認飛行魔族が近くにいたからファレンが事情聴取したらしいんだけど、彼女から貴方の事を教えてもらってね。もし今も気持ちが変わらないならベルンと二人でうちに来る?」


「それは勿論此方からお願いしたい位ですが……」


 彼が目を開いて答えてくる。濁している所は強引に進めても良いだろう。


「じゃあオッケーと言う事で、私の事はアイって呼んでね。貴方の名前はベルゼブブで良いのかな?」


「……ベルゼブブは種族名……クマ」


 ベルンは少し泣いているのか声を震わせながら、ベルゼブブ(仮)さんの背中に抱きついている。


「私の名前はバアルという。ではアイ様今後とも宜しくお願いする」


「うん、宜しくね。でも目立ちたくないから出来れば様付けはやめてくれると嬉しいな」


「ではお言葉に甘えてアイ殿と呼ぶことにさせてもらおう」


 話が綺麗に纏まって良かった良かった。




「……アイが『様付け』でボケるのを期待した私達はどうすればいいの!」


 ファレンのツッコミに横でフェズさんも頷いている。


「だって召喚されたら様付けしたくなるのは仕方なくない?おべっかでの様付けは許さないけど、こう言うのは拘る人もいるからねぇ」


 実際にはファレンにネタを盗られた意趣返しなのだが、執事さんとかメイドさんとか居るしねぇとそれらしく言ってみた。やはりごまかし切れず、ファレンはとても不服そうだった。


「まぁお察しの通り不都合な点が幾つかあってね。ベルンには言ったけど貴女達に依頼する仕事が無いんだよ」


「やはり我々では力不足なのか……」


 バアルは凄くしょげてしまった。擬音語で『しょぼーん』がバックに見える気がする。


「逆だよ逆、貴方達は力が強すぎるんだ。今一番欲しい人材が護衛なんどけど、街中で貴方達に護衛なんてしてもらったら私が怒られるよ」


 私はお手上げ感を表しながらバアルに告げる。もちろん此処も街中ではあるのだが、此処を拠点に決めた時点で中の事が漏れるような温い対策はしていないのだ。


「むしろ貴方達に護衛が必要なのか……?」


「そうだね……例えば私達がついうっかり本気で反撃してしまったら、この街はどうなるか想像できる?」


 今更の質問が来たので、問題の本質を分かりやすく質問してみた。


「……そういう事か。良く分かった」


 不本意ながらバアルは凄く納得してくれた。ウェスタならまだしも、今の私ならそんなに被害は出ない……はずなんだけどなぁ。


「私もファレンのお陰である程度は制御出来ているけど、正直一般人への力加減とか分かっていないんだよね」


 無いとは思うが、デコピンで街のチンピラが爆発するような某世紀末覇者になっている可能性も無い事も無い……無いよね?


 なので今後の事を考えたら、この街の平和を守る為にも当分護衛は必要だと思う。


「力では役に立てないことは理解した。なら技能を役に立てては貰えないだろうか」


「技能って?」


「我々は元々豊穣を司る眷属だったから作物関係には強いぞ。ベルンも地、水魔法のエキスパートなので五穀豊穣間違い無しだ」


 んー、私だけでも不作知らずだし、身も蓋もないが耕す耕地が無い。何より出来ることに魔王二人の力を割くのは間違っている気がする。


 というか豊穣を司る眷属を落とすとか、光の神は何を考えているのだろうか……


「農耕も今後お願いするかもだけど、畜産にも造詣があると嬉しいかも?」


「畜産って何クマ?」


 ベルンがバアルを見るが、彼も首を振ってしまっている。ベルンも元に戻ったがバアルにべったりだ。色々迷惑をかけたので思う所はあるが、あまりに周辺環境が酷くなると召喚権限で嫌がらせをしたくなってくる。主にベルンに。


「食用の動物を自分達で育てる事かな……?」


 内心の葛藤を抑えながら答えたが、少し考える素振りを見せた後に聞いたことが無いと二人とも黙ってしまった。


「アイ、魔族領は食糧となる魔物が多いから畜産は全く行われていないんだよ」


 ファレン先生が疑問に答えてくれたが、こうなると二人の仕事が無くなってしまう……


 ふと、リーシャちゃんの姿を見て50名ほどいる子供達の姿が頭に浮かぶ。


 魔族の王と呼ばれる人達が子守とか……それはそれで面白そうだ。


「そうだね後は……子守とかは?」


「子守なら何度もやってるクマ」


「5歳から10歳くらいまでの子が50人くらいいるんだよね。6人のお姉さんが皆の面倒を見ているからそれを手伝って貰う感じかなぁ」


「何で50人も子供ばっかりがいるクマ!?」


 ベルンの顔がドヤ顔からの驚愕へ変わる。一人二人なら出来ても50人と言われては流石に無理なようだ。


「まあ子供は人族も魔族も変わらない。分からなければ聞けばよいだろう」


 さすがバアルは慌てていない。落ち込んで引き篭もっていたとは思えないほどの勇壮さだ。


「じゃあ二人にはお姉さんの手伝いをお願いするね。ウェスタと私で夜ご飯を準備しておくから、ファレンとリーシャちゃんは二人を手伝ってあげて貰っても良いかな?」


「わかったよー」


「分かりました!」


 こっちですよー!とリーシャちゃんが二人の手を取って元気に部屋から出て行く。その後をフェズさんとファレンがくっついて行った。


 まぁあの二人が上手く出来るかはわからないが、二人の性格なら問題はないと思う。寧ろ問題は、某お肉を食べまくった子供達や大人達がどんな状態になっているのかという事だ。


 その辺りを後で相談しないといけないなぁと思いながら、やっぱり今日の夜ご飯を大成功させるためにも調理器具等の調整等をウェスタと二人で話していた。


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