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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第三章 食料調達編
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食材を調達しよう 3

 ぼや君専用コンロ(やけにカッコいいミニチュア椅子付き)を完成させた私は次の段階に計画を移した。


「ウェスタ申し訳ないけど、王城に私を送ってもらってもよいかな?帰りは私だけでも転移してこれるから大丈夫だよ」


「ん?何をしに行くんだ?」


「うん、鶏肉と卵のない生活なんて考えられないのでゴブリンを何とかしようと思ってね。どうせ無限湧きだろうからゴブリンを利用したトラップタワーを作ろうと考えているんだ」


「あー……確かにこっちでも可能だね」


「あの倫理的に物議を醸し出しそうなあれか……」


 二人は非常に微妙そうな顔をした。あっちの世界では地引網とか焼畑とかが普通にされていたから、こんなトラップくらいかわいい物だと思うけどなぁ。


「まぁ、ゴブリン対策程度ならまだ大丈夫じゃない?……素材系トラップタワーも作る予定ではあるけど、あっちの技術は秘匿しないといけないだろうなぁ」


「できればゴブリン対策についても秘匿してもらいたいよ。応用ができるから、概念が広まったらこの世界の初級冒険者の仕事が無くなっちゃう」


 ファレンが私の考えに注意を促してくる。確かに初級冒険者の仕事が無くなったら、冒険者になる人が居なくなって何年後かには大変な人材不足になりそうだ。


「あー確かにね。じゃあ王様には伝えない方が良い?」


「んー、存在だけは伝えておいても良いかも。何か別の事にも使えるかもしれないしね」


「分かったよ。とりあえず秘匿レベルは高く作っておくよ。じゃあウェスタ送ってもらっていいかな?」


 ファレンから王様に伝える許可は出た。元々屋内に作る予定だったからスパイホイホイ機能を付ければ何とかなりそうな気がする。


「付いていかなくて大丈夫か?」


「大丈夫だ、問題ない。ウェスタはキッチンの調子でも確認しておいて。晩御飯期待しているよー」


「分かった。そう言うことならお言葉に甘えさせて貰おう。気を付けて行ってこいよ」


「アイ様、行ってらっしゃい!」


「リーシャちゃんも皆も良い子にしてるんだよー」


はい!キュッ!アン!と一人と二匹から良い返事が来る。私はウェスタが作った転移陣に入って行った。



「到着ーっと」


 到着した部屋にはもちろん誰もいないかった。誰も居ない冷えた部屋は物悲しくなるよね。


 とりあえず呼び鈴があったのでチリンチリンと鳴らしてみる。


 すぐに扉の前の気配が動き、しばらくすると近衛兵の皆さんと一緒に王様がやって来た。が、私を確認すると王様のみ中に入り、すぐに扉を閉めた。


「これはまた、今日はアイ殿だけか?」


「まぁ、奴隷関係はじゃなく今日は別口で来たんだよ。王様は今忙しい?」


「今忙しく無かったら何時忙しいと言えば良いのか分からない程度には忙しいと思うぞ?ちなみに今は宰相に仕事を押し付けて休憩に来させて貰っている……と言えるかもしれない」


 宰相さんの扱いがかわいそうだ。


「そっか、ちなみにどんな事で忙しいの?」


「ああ、一番は食料問題だな。やはり生活必需品が値上がりをするというところで結構叩かれていてな、今の状況だと年単位で少しずつ増産する案が一番現実的な状態だ。最初の一年をどれだけ不満を少なく乗り切れるかが重要になんだがなぁ」


 あれれ~、おかしいぞー?(棒)森にはゴブリンと共生している鶏がかなりの数いるらしい。という事は、ゴブリンさえなんとかすれば半年以内には各家庭で一日1個の卵は食べる事ができるようになるはずだ。


「で、アイ殿は今日はどういう用で来たんだ?」


「うん、やっぱり帰ろうかなって思ってきた」


 あまり直接的な支援はしたくないんだけどなぁ……。


「いや、そんな事はないだろう。アイ殿の目は何か策があるけど言いたくない目だった。しかもこのタイミングで用事を言わないという事は、食料について何か不満があり改善策を携えて来たんじゃないのか?」


 目は口ほどに物を言うらしい。


「んー、実はやろうと思えばこの国の人口全ての食料を賄う事もそれほど難しくはないよ」


「な!?」


「でもその方法は飢饉とか本当にどうしようも無いとき以外はするべきじゃない。何とかなる時にやってしまうと、頑張っている人達の儲けが少なくなって全体の為にならないからね」


 現在壁内部で養鶏をしている人達の事を考えて、加工品を売って卵自体は少数しか流さない予定だったんだけどなぁ……。


「そうか……」


「でもね直接の手助けでなく間接的な手助けで一般市民や奴隷達の生活が改善するのなら、それくらいなら手伝っても良いかなーって思うんだ」


「ほう……?」


 王様の目に真剣な光が宿った。すまんゴブリンと鶏よ。私のプリンとマヨネーズとお好み焼きと目玉焼きとホットケーキとゆで卵と出汁巻き卵と茶碗蒸しと親子丼と……そして何より朝食の卵かけご飯の犠牲になっておくれ。お米まだないけど……。


「王様、ゴブリンウザイよね?」


「まあな……アイ殿が何とかしてくれるというのであれば農地開拓等も進むだろうが、奴らは倒しても倒しても沸いて来るからなぁ……過去の王が大金をかけて森の掃討作戦を行ったんだが全く効果が無かったそうだ」


 ああ、やっぱりモンスターの沸き条件とかはまだ研究すらされていないのか。


「んー、多分なんとか対策は打てると思う」


「ほう、どんな策なんだ?」


 王様がウキウキした感じで私の先を促してくる。


「王様、今からいう事は他言無用だよ。この技術を転用したら怖い魔の神様がやってくるからね」


「勿論他言はしないと誓う。また転用もしないが、要望があるときはアイ殿達に相談するくらいは良いのだろう?」


「状況次第で、とだけ言わせてもらうよ」


 準備は終わったので本題に入りたいとおもう。


 私はミスリル製のラーメンの器を大小二つ取り出した。そして大きい器を普通に置き、小さい器を裏返して器の中に置く。そして小さい器の裏面である頂上にみかんを置いた。


「このみかんを取りたい場合は王様はどうする?」


「そりゃそのまま手に取るさ」


「うん、じゃあ王様の大きさが小豆サイズだったらどうだろう」


 私は小豆を大きい器の縁から中に入れる。もちろん小さい器の縁で小豆は止まった。


「つまり小豆がゴブリン、みかんが餌というわけか?奴らの数は多い、この程度の深さでは仲間を踏み台にして越えてくるぞ」


「王様、真ん中の小さい器を持ち上げたらどうなる?大きな器の底には落とし穴と輪切りトラップがあると仮定してみて。もちろん両方の器はつるっつるで絶対に上ってこられないよ」


「定期的に上げ下げするのは普通無理ではないのか?」


「そこは継ぎ目を加工すれば大丈夫。継ぎ目をノコギリの刃みたいに加工してその一番深い部分でゴブリンが下に落ちるようにするんだ。それを少し斜めにすれば上からは落とし穴の見えないデストラップの完成だよ」


「しかも労力をまったく使わずに昼夜問わずゴブリンの魔石が手に入る上、方法を変えれば他の動物や魔物も対象になるのか……」


「自動的にゴブリンを抹殺してくれる一国に一台は欲しいと評判の、名付けて『ゴブリンホイホイ1号』です!」


「いや、一台じゃ足りないだろう」


 王様が理性的なツッコミをしてきた。


「さらにこれを調査に来た他国のスパイもホイホイ出来る機能も付いているというお買い得商品ですよ!」


「とりあえず何台買えば良いんだ……?」


 王様は相手をするのがめんどくさくなってきたようだ。


「その辺りは試作を作ってから考えよう。まあ分かって貰えていると思うけど、概念さえ分かっちゃえば幾らでも応用できちゃうんだ。なので防諜機能をかなり高めで作るし、国としても絶対に近づかないように警備と周知を徹底して欲しい」


 何も知らない一般人をホイホイしてしまったら流石にかわいそうなので、警備は必須と言えるだろう。


「勿論周知徹底させる。しかし理解してみると只の物凄い落とし穴なだけなんだが、なんで誰も思いつかなかったんだろうな……」


「それが奴隷制度の弊害だとも言えるね。どれだけ有能な人物が揃っていても、有能な人が無駄な事を考える暇が無いと技術は発展しないんだよ」


 だからこそ国力を集中させる戦争とかが技術を発展させるって言うんだよね。変人達が普通の生活では必要の無い事をずっと考えていられる上に実証まで出来るんだから、そりゃ技術革新の一つや二つ起きると思う。


「アイ殿……それは私に伝えてもいい事なのか?政治を司る者として聞き捨てなら無い事をさらっと言った気がするが……」


 あー、そりゃ理解してたら奴隷の対策なにかやってるよねー……


「まあ良いんじゃない?奴隷を解放して時間が経てば必然的にそういう状態になるし、ポロリしちゃってもさほど大きな影響は無いと思う」


 中世のレベルの人達にというなら、たぶん物凄く重要な考え方を伝えてしまった気がする。けどまあ奴隷解放時のメリットを伝えている時点でこれくらいは誤差だろう。


「……質問があるんだが良いか?」


「なに?」


「アイ殿は何故政治に関わろうとしない?それこそ王族と婚儀を結べば、その国は軍事でも経済でも世界を征服する事が容易いだろうに」


「嫌だよそんな意味の無い事するの。その程度の事も王様分かってないの?」


 私は王様の言葉に、少し不機嫌気味で返事を返す。


「我々では絶対に無理だが、貴女なら何か案があるのかと思ってな。すまない、少し心配になってしまったんだ」


「王様は心配する点が間違っているんだよ。世界の征服を心配するより、世界の崩壊を心配しないといけない」


 この世界に銃火器とか広めてしまったらどこぞの世紀末並みになっちゃうよ。


「すまなかった、謝罪する。アイ殿の気持ちを考えていなかったな……」


「分かってくれれば良いよ」


 この話はあまりしたくないので話を強引に切り上げる。


「で、作る場所はどこにする?」


「位置はアイ殿に一任する、森周辺は緩衝地帯になっているからそれほど問題はないはずだ。……そうだな、これも持って行け」


 王様は私に短剣を渡して来た。性能は高くは無いが、装飾品としては中々のものだと思う。


「これは?」


「その短剣の柄には王家の紋章が彫られている。乱用はして貰いたくはないが、大体の揉め事はその剣で対応できるはずだ」


「良いの?」


「良いも悪いも無い。ここまでの事をしてくれた恩人に何も恩を返せていない事への、せめてもの罪滅ぼしだ」


 王様がくれると言うのなら役に立つかもしれないし貰っておこう。


「じゃあありがたく貰っていくね。用事が終わったから帰るけど何か他に用はある?」


「用は山ほどあるけど今は置いておくさ。とりあえず完成したら視察に行くから連絡をしに来てくれれば良い」


「了解。じゃあ完成したら迎えにくるよ。それじゃあねー」


「ああ」


 王様に別れの挨拶をして私はフェズさんの店に転移していった。



いつもお読みいただきありがとうございます。

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