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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第三章 食料調達編
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食材を調達しよう 2

 キッチンを☆PON☆と作りました。


 食堂を☆PON☆と作りました。


 そして、なんと言うことでしょう。古くて何もない厨房は、広々とした階段に早変わりしました。空きスペースに手洗いの為の水道とエレベーターまで完備しており、安全を考え手摺まで付いている階段に家主は必ず喜ぶことでしょう。


「皆さん何をされてるんですか?……あれ、ここ厨房でしたよね?」


「あ、フェズさん。ちょうど良いところに」


 フェズさんが来たので皆と一緒に地下を案内しようと思う。


「厨房は……」


「下にあるから大丈夫だよ。今から案内するけど来られる?」


「一体なにがあるのかは分かりませんが、知っておかない訳にもいきませんので行きますよ……」


 フェズさんが納得してくれたので、皆を地下に招待する。


「ぽちっとな」


 壁に設置されたスイッチを押して階段の電気を付ける。もちろんLED照明だ。蛍光灯より材料も少なくすむので選ばない理由は少ない。私は柔らかい蛍光灯の光も好きなんだけど、今回は消費電力の面からLEDになった。


「あー、そりゃ照明もいるだろうけど電気はどうしたんだ?」


「私知ってるよ!多分アイがレガシーでも作ってたあれと同じだよね?」


「うん、あれと同じシステムを流用したんだ。だから完成度は高いはずだよ」


 ウェスタの疑問にファレンが答える。ファレンが話したがっているので正解とだけ伝えて先を譲る。


「地熱発電をしているんだと思うよ。溶岩に棒を刺してその熱で発電してるんだよね?アイがレガシーですごいのを作っていたのを見てたからね」


「正確には溶岩付近の岩石からだけど、大体あってるよ。さらに今回は大浴場も作るからそっちも楽しみにしていてね」


 ファレンがどや顔で自慢しているので、更に良い情報を投げてあげる。


「あー、あれか。大魔王たぬき事件の切り札だったんだよな。地下500メートルに作られた核シェルター、あんな物まで用意して何の対策をしていたんだか……」


「物資が貯まりすぎて地上に置けなくなっていたから作ってたんだよ。多少地下を掘っても邪魔にならないように作った地下倉庫のはずが、最後は一大テーマパークになっちゃってたんだよねぇ」


 あの事件での最悪の仮定として、ベヒーモスとかリヴァイアサンとかバハムートがダース単位で来る事も一応想定されていたのだ。


 なのでプレイヤー達は事件の時に件の地下倉庫に隠れていたわけなのだが、事件後に一部プレイヤーが倉庫の改築案を出してきたのでGOサインを出したらすごい事になってしまった。


「あの人達はアイの影響を受けていたからね。地上部分はやり尽くしていたから地下を自由に出来て凄く嬉しかったんだと思う」


 ファレンが言う。そういえば皆すごい楽しそうだったなぁ……


「地下で本格的な稲作とか果ては水耕栽培まで可能にしていたものなぁ。正直あの無駄な熱意は称賛に値する」


 ウェスタが貶しているのか誉めているのか分からない感想を言った。


「さすがにこの地下にはまだそんな凄い性能はないけどね。後あるのは地下水汲み上げシステムくらいかなぁ。地下500m位の地下水を加熱殺菌しているのが飲み放題だから凄い美味しいよ」


「塩素入ってないのか。メンテナンスは……って愚問だったな」


「そりゃもう安全対策はバッチリですよ。でも、入れる塩素がないからめんどくさくてもしょうがないんだ……」


 上水道はパイプにタンクを付けて水を入れれば良いと思っている人いたらそれは間違いだ。水道水が飲める品質でずっと家で出ていたのも塩素が入っていたからなんだよ。塩素がなければパイプの中は藻だらけカビだらけで、直ぐに雑菌だらけになってしまう。


 なので各家庭に届くような上水道は近代のように、大量に安い塩素を安定して供給できるような環境でないと不可能なのだ。一件分の現代レベルの上水道を安定させるために、毎日の経路の加熱殺菌に定期的な上水道管の清掃が必要になってしまうと言えば、その労力も分かって貰えると思う。


 など話していると終着点に着いた。


「結構階段を下がりましたが、地下何メートル位にあるんですか……?」


「大体20メートルくらいかなぁ。ちゃんと物資搬入も考えてエレベーターも設置してあるから帰りは楽だよ」


 フェズさんの質問に答える


「……何故にこんなに深くしたんだ?」


「この回りにいろいろ作りたかったんだ。なにを作るかはお楽しみで」


 ウェスタの質問に答える。


「まぁ、フェズさん以外には普通な物しかないんだけどね。じゃあ入ろうか」


 私は扉を開け、証明と空調のスイッチを入れる。


「ここは食堂だよ。学校の学食をイメージしてみました。収容人数は約100名だけど、かなりスペース取ってるから倍は食べられるスペースあるかも」


 やっぱり食事はすし詰めで食べるものではないと思う。


「王様が来ても大丈夫なように厨房と直接繋がった所に会議室兼食堂も作ってるんだけど、内装に凝りたいので完成はまだなんだよね」


「王様達を招く予定なんですか……」


「今後ウェスタの手料理を食べたいとか絶対言ってくるよ?ウェスタ、王宮の設備で作りたいと思う?」


「作れなくは無いだろうけど、下ごしらえをした材料の持ち込みになるだろうからなぁ。そんなめんどくさい事をするならここに連れてきたほうが楽だ」


 フェズさんが不満を言うが、ウェスタに一蹴される。


「まあそういう事だから諦めてね」


「まあ不満があるわけではなく、驚いただけだから大丈夫ですよ。……もうとっくに諦めていますからね」


 フェズさんもなかなかユーモアが出てきた様で何よりだ。


「じゃあお待ちかねの厨房だよー」


 私はまたまた厨房の照明と空調のスイッチを入れる。


「これはまた……凄いものを作ったな。私が修行に行ってたレストランとかよりも数段上の設備な気がするぞ?しかも三ユニットもあるから多数の料理を同時に作る事もできるな」


「単純に使い勝手を良くした最新タイプのシステムキッチンなだけだよ。水周りはダマスカスとミスリルで固めているから安全性は大丈夫だとは思う。また大理石も多用して無駄にリッチさを出してみました」


 でも、このキッチンには凄い問題点があるんだよね。


「でもねウェスタ、まだ気が付いてないようだけどこのキッチンには重大な欠点だあるんだ」


「ん?そうなのか?」


「この世界にはガスが無いので、このキッチンにはコンロがありません!」


「なんだってー!」


 ウェスタが驚くが、そういえばコンロの無いキッチンは一体何と呼べばいいんだろうか。


「IHなら簡単なんだけど、やっぱり直火が良いよね」


「……直火じゃないと感覚が分かりにくいだろうなぁ」


 そりゃそうだろうねぇ。当たり前だけどIHは火力に難がある。


「というわけでファレン、魔法面で何か良い案無い?」


「んー……案が無い訳じゃないんだけど、アイの召喚魔法でなんとかなるんじゃない?」


 なんですとー。ファレンが盲点をついてきた。


「火系モンスターでなんとかしようという訳か。私の知己にイフリートとかフェニックスとかは居るが、火力の調整が苦手なのは私と変わらないんだよなぁ」


 やっぱり火系は制御を放り投げているようだ。


「低級のモンスターでちょうど良いと思うよ?中級以上だとこのキッチン全部が灰になる可能性もあるからね」


 ファレンが忠告してくれる。うん、このキッチンは焦げ目すら付かないだろうけど、中の人間はこんがり焼けちゃうかもしれないよね。ウェスタはその中で笑いながら調理してそうだけど……。


「ウェスタ何か召喚するモンスターの希望あるー?」


「そうだな、火系の小動物系モンスターならいいんじゃないか?」


「よしじゃあ何か召喚してみよう」


「室内で召喚するのは不味くないですか……?」


 フェズさんが言ってくる。


「たぶんここが一番安全だよ。耐火性能抜群な上に絶対に延焼しないから」


「そうだぞ、それに万が一が起こってもファレンが居たら大丈夫だ。広範囲を氷付けにしたら消火も完璧だしな」


 うん、それは大丈夫とは言わない。


「まあさくっと召喚しちゃおう」


 とりあえず火属性のタヌキを召喚してみよう。ダメだったらダメだった時だ。火属性のタヌキ…火属性のタヌキ…と念じて召喚してみる。


『小火熊の召喚に成功しました』


「アン!」


 クマだー!クマが出たぞー!死んだフリだー!


 体長20センチくらいの赤と黒のコントラストがカッコかわいい子熊がでました。ヒグマなのかヒクマなのかは後で考えよう。そして、残念ながら火属性のタヌキは存在しなかったらしい。


「かわいい……」


 ウェスタは既に虜になってしまったようだった。


 一方ウェスタの視線に晒された小火熊は固まってしまっている。あまりの力の差にビックリしているのかもしれない。


 私は小火熊を抱きかかえて安心させる事にした。一応さわっても熱くは無いようで私も安心した。


「君はね、この人の役に立ってもらう為に召喚したんだ。凄く良い人だから安心して欲しいけど、無理そうなら送還するよ?」


 私は小火熊を撫でながらそういうと、少し考えるそぶりを見せてから飛び降りてウェスタの足元にいった。


「たぶん持って貰いたいんだと思う」


 ウェスタは恐る恐る小火熊を持ち上げるが、抱えたとたんに小火熊から火の手が上がる。一瞬何事かと思ったが、単純に嬉しがっているようだ。ウェスタに頭をこすり付けて喜んでいるから多分大丈夫だろう。


「なかなか激しい親愛の表現だね……とりあえずウェスタ以外にはしないように言い聞かせておこう……」


「なかなかいい気質の小熊のようだな。名前はなんと言うんだ?」


「んー……読み方が実は分からないんだけど、漢字で小さな火の熊って書くみたい」


 ウェスタが聞いてくる。『こひぐま』でいいのかな……こういう漢字は微妙に読むのが難しい。


「じゃあ小火(ぼや)(くま)ということで、名前は『ぼや君』にしよう」


 な、なんだってー!その発想はなかったけど、やっぱり神様のネーミングセンスはあまり良くないと思う。


「じゃあ君はぼや君だ!ウェスタのいう事を良く聞くんだよ?」


「アン!」


 私が言うとなかなか良い返事を返したので、とりあえず安心だろう。


「じゃあとりあえず私はぼや君用のコンロを作るから、ウェスタはぼや君と一緒に色々見回っててー」


「分かった。じゃあぼや君、一緒に行こうか」


「アン!」


 とりあえずウェスタの部屋は小火すら起きない耐火性能にしないといけないなぁ……と思いながら、ウェスタとぼや君が倉庫に歩いていくのを私は見送った。


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