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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第三章 食料調達編
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食材を調達しよう 1

 昼食も終わり私は物資の確認という名の暇つぶしにきていたのだが、私はこの国に絶望していた。王様からの支援物資の中に、塩とか砂糖とか胡椒とか香辛料多種はあっても醤油とかカレー粉とか味噌もなく、加工調味料系が全滅していたのだ。フェズさんに聞いても知らなかったから多分無いのだろう。


 良く分からない液体もあったが何故か油系が充実しており、植物性の物だけでオリーブ、菜種、大豆、ゴマと4種類もあった。動物性の脂も塊で何種類もあったくらいだ。でもバターなど勿論なかった。


 つまりこの国の人は油と香辛料と塩で生きてきたわけか。


 日本人に喧嘩を売っているとしか思えない。


 大豆はあるそうなので次の補給に回してもらうことにした。ウェスタ談では大豆さえあれば何とか味噌と醤油は作れるらしい。どう何とかするのかは不明だ。私の脳みそでは聞いても理解出来ないだろう。


 今後の食生活のためにやらないといけないことが出来たので即行動を開始しようと思う。


「フェズさん、新しく厨房作って良い?」


「まぁ確かに今の料理場は手狭ですが、あそこを改築するわけではないのですよね?流石に空き部屋もありませんし、場所がないとどうしようも……」


「場所あるよ?」


「どこですか?」


「フェズさんの店」


「ウェスタ様に応接間を明け渡せと……」


 フェズさんが苦悩し始めてしまったのでネタばらしをする。


「明け渡してもらいたいのは地下だよ、地面の下」


「はい?」


「実は私の本領を発揮すれば、一晩でこの店の地下に軍隊すら帰られなくなる城砦を作れるんだよ?」


「わかりました。厨房とその他諸々は作って良いので、国に喧嘩を売るような設備はつくらないでください……」


「さすがフェズさん、ありがとうね!」


 さぁ、言質はとった。あとはやるだけだ。


『ウェスタ、聞こえる?』


『なんだアイか、聞こえているぞ?』


『フェズさんから、地下を自由に使って良いと言う言質をとってきました』


『ああ……この店はまだ自治区じゃないから拙くないか?』


『一応調理場と食堂と居住地域の二層構造を作る予定なだけだから、さほど問題ないかな。しかも厨房は私の今用意できる最高性能を用意するし冷蔵庫とか醸造庫とかつくる予定から、厨房関係施設だけでフェズさんの店の半分はスペース取るよ』


『なん……だと……!』


 寝かせる物とかはインベントリじゃ出来ないんだよね。だからちゃんと保管庫を作らないといけない。これで肉もちゃんと寝かせて最高のタイミングで食べることが出来るようになるのだ。


『だから2階層は厨房と食堂だけになっちゃう。流石に60人近く居るから食堂が大きくなってしまうのはしょうがないよね』


 今の奴隷部屋で地面に座って食べているのは衛生上あまりよろしくない。違った、私の精神衛生上だ。


『厨房は性能面でさくっと決まったんだけど、食堂どんな感じにする?昔ながらの学食風にするか、和風にするか、某魔法学校風にするかまだ決まってないんだよね』


『……冷暖房完備か?』


『ウェスタ、私を誰だと思ってるの?床暖房すら完備だよ』


 こうなったら貴族の庭園をイメージしてバラ園とか噴水とかつくってみようかなぁ。


『まぁ、アイならリフォームも一瞬だろうから最初は普通にやってみたらどうだ?いきなり奇をてらうのもどうかと思うぞ』


 心が読まれていたようだ。


『ふむふむ、分かったよ。とりあえすさくっと作ってしまうから後で感想頂戴ね』


『ああ、わかった。完成したら呼んでくれ』


 ああしまった、地下への階段の場所決めてなかった。だけどもう古い厨房は要らないよねと、あそこを入り口にしようと勝手に決める。




 そしてすぐに厨房跡地予定地に到着した。


 さあ久しぶりの時間がやって参りました!


 今日の助手さんを紹介(召喚)したいと思います!


『召喚!たぬ騎士!』


 目の前に召喚陣が広がり、何かが中から出てくる!


「キュっー!!」

 

 今度こそたぬ騎士だー!成功した!


『ファレン隊員!ファレン隊員!』


『はいはい、何?アイ』


『たぬ騎士の召喚に成功した!』


 多分すぐに食いついてくるはずだ。


『おっけー!すぐに行く!』


 さすがのホイホイ具合である。悪い人についていかないか心配になってきた。


 ひとしきりモフっていると、ファレンが何故かリーシャちゃんを抱えてやって来た。あれ、リーシャちゃん大きくなった気がする……気のせいだろうか。


「アイを探していたからついでに拉致してきたよ」


「なんだかアイ様に呼ばれた気がしたんですが……っ!」


 リーシャちゃんはたぬ騎士を凝視して動かない。


 たぬ騎士は私にもふられて気持ちが良さそうだった。


「ええ!なんでご先祖様がここにいるんですか!?」


「リーシャちゃん落ち着いて。たぬ騎士がどうかしたの?」


 ある意味ご先祖様なのかな……?


「顔の模様といい、伝説の通りですね……。私も集落に居たときに聞いた程度だったのですが、私達のご先祖様はある国で神獣として崇められていたそうなのです。ですが飢饉の時に狩り尽くされて、今は絶滅してしまったと聞いています」


 普通なら怒るところだけど、飢饉ならしょうがないよね。衣食足りて礼節云々っていうしね。


「リーシャちゃんも触る?」


「いいのですか!」


「もちろん良いよ」


 うん、たぬ騎士をモフるリーシャちゃんをモフるファレンもまとめて私がモフるから、一石二狸+神だ。


「アイ様も魔の神様もくすぐったいですよー」


 うん、すごく癒されるなぁ。


「……しまった!」


 何故かファレンが急に驚いて立ち上がった。脈略が無くて私が逆にビックリしたよ。


「どうしたのファレン?」


「リーシャ」


「何ですか?」


 私の質問をスルーしてファレンはリーシャちゃんに話しかける。


「私の事をファレンお姉ちゃんって呼んでも良いよ!」


「ええ!?」


 ファレンの言葉にリーシャちゃんが驚いた。ファレンはリーシャちゃんにお姉ちゃん呼ばわりをご所望のようだ。ウェスタ姉ぇって自分は呼んであげないのにひどい気がする。いや、呼んでも気が付かなかっただけなのかな……?


「リーシャは私の名前呼ぶの嫌?」


「そんなわけないですけど……」


 数瞬迷ってからリーシャちゃんから切り出した。


「ファレン……お姉ちゃん?」


 ファレンのことを上目遣いで見ている。たぬ騎士を抱えたままで。


「ほんとにリーシャちゃんは可愛いなぁもう!」


「きゅー!」


 リーシャちゃんが悲鳴をあげるが私はそのまま抱きしめる。


「あー!アイ、それは私の役目だよ!」


 苦情が来たのでファレンも一緒に抱きしめる。ファレンも可愛すぎるので纏めて抱きしめると天国だ。


「リーシャ」

「ファレンお姉ちゃん」

「リーシャ」

「ファレンお姉ちゃん」

「リーシャ♪」

「ファレンお姉ちゃん♪」


 そんな可愛い二人と遊んでいたらどんどん時間が過ぎていった。




 二人+一匹を堪能していると、ウェスタが厨房跡地予定地にやってきた。


「アイ、やけに楽しそうだが進捗状況はどうなんだ?」


 はっ!忘れてた!


「スミマセン、あまりの可愛さに我を忘れていました」


 謝る時は素直に謝る。


「キュッ!」


 しかしたぬ騎士が前に出て、怒られた私を庇ってくれた。


「ああ、そういうことか。怒っている訳じゃないから気にするな」


 そういってウェスタはたぬ騎士を撫でる。そして自分の腕の中に収めてしまった。


「作業が終わるまで預かっておこう」


「ええ!作業を手伝って貰うために召喚したのにー」


 一人で穴堀はめんどくさいよーとぶーたれる。


「アイならクラフト魔法でこの範囲内なら一瞬じゃないの?掘る必要なんてないと思うけど」


 ファレンが当たり前の事のように言ってきた。


「……あ!その手があった!」


 確かに空洞予定地の土を天井や床、壁に持っていって圧縮して鉄筋コンクリートならぬ、超硬度鉄筋石にしてしまえば耐久性はバッチリだろう。鉄も余りまくっているので問題ない。ファレン様々である。


「あれ、じゃあたぬ騎士の仕事は?」


「さあ?」


 私の言葉に見も蓋も無いことをファレンが言う。


「まぁ、リーシャちゃんの護衛ということでいっか」


 領地が出来たら頑張って働いて貰わないといけないのだしまあ良いだろう。


「じゃあ集中するから少し離れていてね」


「ああ、頑張ってくれ」


 ウェスタが応援してくる。これは頑張るしかないだろう。


 厨房を作るための魔法に私は集中していった。




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