王城襲撃作戦 6
なんとかスマホでちょこちょこ打って作り上げました。
次の作品も出来次第上げる形にさせて貰いますね。
「この結果は私達が引き起こした物だというのに、私たちはリーシャちゃんに謝る事も出来ない。立場上奴隷達に謝罪するわけにもいかない。どうすれば罪を償えるのでしょうか……」
「こんなに堪えるものだとはな……王としての根本が揺らいでしまいそうだ。たが我々は王と宰相なのだから結果を出す事で償うしかない。迅速に正確に、漏らすこと無く、だ」
「うん、王と宰相はするべき事をするのが一番あの子達の役に立つ。といっても奴隷達の特別扱いも駄目だよ。逃げるためじゃなく、未来に向かって背負って欲しい」
宰相さんと王様の言葉に返事を返す。
「私が出来る事はここまでだね。後は王様達の手腕に期待するけどあまり時間が掛からない事を祈るよ」
とはいえ、王宮内部の意見の調整と公布に一週間くらいは少なくてもかかるだろうとは思うが……
「その辺りは最大限善処しよう。アイ殿には感謝している。未来の後継者にこの重荷を背負わせなくて済んだのだからな」
「うん、政権が磐石でも反発は必至だからね。でも王様なら材料あれば簡単に押さえ込めるでしょう?」
「当然だ。一人二人処刑してでも速攻でみとめさせてやるわ!」
なにそれこわい。
「うん、私が言うのも何だけどやり過ぎないようにね。宰相さんも、知らないまま平穏に暮らす事と、知って悲しみをバネに行動する事、どっちが良かったと思う?知る事が出来たんだからまだ間に合うよ」
「……ええ、私はもう大丈夫です。さしあたってはこの状況を私達に上げないようにしていたものを処断しなくてはいけませんね。自らの利益のために私達を大量虐殺者に仕立て上げた者にはそれ相応の罰を与えます」
うん、宰相さんも大丈夫そうだ。
「ああそうか、まずデールを拷問しなければな。国家反逆罪を適用すれば拷問も可能だから許可しよう」
王様が酷いことをいう。罪を憎んで人を憎まずの精神はどこに言ったのか。
「んー、あのカカシは皆の前でやらかしたから仕方がないけど、犯人全員一族郎頭処刑とかにはしないようにね」
「それでは国の法がなぁ……」
「そこはほら……」
王様は不服そうだったのでウェスタに視線を送る。ウェスタも仕方ないと言いながら続けてくれた。
「神からの恩赦と言う事で当人のみ罰する事にすれば良いだろう?恩赦の条件は奴隷制度が撤廃される事。アイが言いたいのは多分こういう事だ」
「アイ殿の行動は甘いように見えて全く甘くないよな……結果は激甘なのに過程は何故ここまで苛烈なのか……」
ウェスタの言葉に王様は私をディスって来た。
「アイだからな」
「アイだからね」
「ちゃんと皆に利益があるように考えているんだから良いじゃないですかー」
ウェスタとファレンの言葉に私は不満の意を返す。
「じゃあリーシャちゃんも待たせているし、そろそろ帰ろうか」
「ちょっと待て、この剣はどうするんだ?貸して貰えるなら説得には役立つだろうが、こんな兵器をぽんと渡されても困る」
「あげるから好きに使えば良いと思うよ。王様にはオリハルコンのレイピアが渡される予定だし、説得おわったら宰相さんにあげるといいかも?それじゃあね」
考える事がめんどくさくなっただけの逃げ台詞を残して、私は転移陣に入っていった。
「こんな物を惜しがりもせずに、ぽんと渡せるアイ殿は一体何者なんだ……?」
「王よ……まず何故神の代理人をやっているのかという所から疑問に思うべきかと思います。さらに明らかに我々とは違う行動原理で動いているのに、為政者の心得すら熟知していました。さしずめアイ殿は『神に認められた賢者』と言う所でしょうか」
宰相は言ってくるがその通りだろう。今回我々はアイ殿の掌で転がされていた。転がしまくった挙げ句に珠玉にされてしまったようなものだ。見た目通りの年齢ではないのだろうが、人間でそのような事が可能なのだろうか。
「最初から最後までアイ殿の予想の範疇からは出なかったんだろうな。ここまでだといっそ清々しい。次いでに国内も清々しくするぞ!」
「はい!」
宰相がよい返事を返してくる。
「アイ殿にしてやられてばかりでは立つ瀬がない。今日中に法案を認めさせるから気合いを入れろ!」
「え?」
「一日足りとも現状を放置するわけにもいかん。一人でも多く救う為にどれ位本気なのかをアイ殿達に見せてやる!」
宰相は微妙な顔から諦めた顔、真剣な顔に変わって頷いた。
王様達がやる気をみなぎらせている一方、フェズさんの店舗に戻ってきた私がまず考えた事はもちろん昼食である。
「フェズさん、この国ってお昼ご飯は食べるのかな?」
「大体の市民は一日2食ですね。昼を食べるのは一部のお金持ちだけです」
「じゃあこれから3食にしよう。成長期には3食プラスおやつ位食べないとちゃんと成長しないんだよね。お金持ちが食べてるのは経験でその事を知ってるからだと思うよ」
毎日朝食を抜いたり昼食を少なくしたりすると、成長しないんだよ。色々。
「……寒気がした理由は分かりませんが、アイ殿や神様達は食べるのですよね?美味しいものを自分達だけで食べて私達を生殺しにはしないとは信じていますよ」
要約すると皆で手伝うので、奴隷達にも美味しいものを食べさせてあげて欲しいと。
わかってるよーとだけ返事をしておく。
「ウェスター、肉は山盛りあるけどお昼何か作れる?」
「手っ取り早くやれる料理ならお好み焼きか焼きそばだな。……しかし肉質がお好み焼きには合わないかもしれないし、焼きそばは麺があるかどうかだなぁ」
「フェズさん、焼きそばってこの世界にある?小麦を練って作った麺が必要なんだけど」
「きいたことがありませんね……」
むー、麺の自作からか……
「ウェスタ、薄力粉と強力粉っぽいのは市場にあったの見たけど作れる?」
「中華麺はそう簡単に作れないんだぞ?重曹は発見されていたから作ることはできるが、高価すぎるからカンスイを探すところから始めないといけない」
「あー、何か聞いたことがあるフレーズだ……。閃いた!でもうどんなら出来るよね?あれは皆で麺を作ることも出来るし、今後の役にも立つかも」
「うどんなら出来るな。追加で必要なのは鍋と麺棒くらいか……いや待て、出汁のうどんなのか焼きうどんなのかそこも重要だ」
はっ!醤油、鰹節、バター、ソースなど足りないものが多すぎる!
「わかった!とりあえず厨房の調味料を見に行こう」
というわけで私とウェスタはフェズさんをその場に置いて厨房を捜索しに行った。
なんとアイは岩塩と香草を何種類か手にいれた!
「フェズさんは料理を舐めているとしか思えない。そう言えばくそ不味いコーヒーを私に出して来ていたよね。これは料理への冒涜だよ!」
いやまあ、多分結構いい値段するとは思うし、奴隷に塩+香草とかの味付けをしてあげているというのも多分結構な待遇なんだとは思うよ?でもそれは食料であって料理ではない。例えるならカップ麺を料理といってはいけないというのと同じだ。
「昨日のバーベキューでは中々通な味付けだと思っていたが、これしかなかったのか……しょうがない。街に出る訳にも行かないし、調味料に関しては後で王に『お願い』の手紙を送ろう。今日のところは龍の骨で出汁を取って、塩味主体の肉うどんにするか」
「そうだね、お好み焼きも可能だけど塩味しかしないお好み焼きは嫌だよ……」
つまり豚骨、牛骨スープならぬ龍骨スープか、なかなか出来上がりが楽しみになってきた。
昨日作った鉄板ではどうしようもなかったため、今日はうどんの釜茹で用の釜とスープを作るための寸胴鍋をつくった。素材はやはり鉄とオリハルコンで、釜と鍋の側面を薄くオリハルコンで囲った為断熱仕様となっている。
圧力鍋にすることも提案したがウェスタは『私がやるから時間はかからないさ』とのこと。
また粉を捏ねるのをどうするか迷っていたが、結局子供達に任せることになった。何か道具を作ってもよかったのだがやはりうどんは踏んで作る方が楽しいと思う。が、この世界にはポリ袋何てあるわけがない。中世の文化レベルの人間に衛生環境云々言っても仕方がないが、素足で踏むのは現代人として認められないのだ。
と言うわけで、子供達専用調理道具『黒龍王の地下足袋』を10足作った。これはあくまでも調理道具であり防具ではない。
子供達が捏ねて、ウェスタが切って、私が茹でて盛り付けをし、ファレンが試食する。OKサインがでる。美味しいらしい。
ファレンは試食以外何もしていない気がするなぁ……後で配膳くらいは手伝ってもらおう。
肝心の肉うどんは普通に美味しく大好評をいただけた。しかし惜しむべきはスープと具に麺が圧倒的に負けてしまっていたという事だろう。
だが美味しかっただけではなく龍骨にはかなりのコラーゲンが含まれいたらしく、スープが冷えてゼリーのようになっていた為に子供達がびっくりしていたのだ。それは冷えても食べられるよと言うと皆面白がって食べていた。
そして色々話しながら夜はまた焼肉パーティーという肉三昧。明日には調味料や材料が増えるといいなあと思いながらその日は寝る事になった。
……翌朝、ウェスタを筆頭に女性陣の皆様の肌がぷるぷるしている様に見えたので、肉に続いて骨まで狙われる対象になってしまったのかと黒龍さんに哀悼の意を表明しておいた。




