王城襲撃作戦 5
最後に少し残虐表現があるので苦手な方は飛ばして下さい。
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インフルで執筆出来ていません。数日休むかも知れませんが回復し次第書くので、今後ともよろしくお願いします。
私が王様達に制裁をすると伝えると神2柱も表情を引き締めた。
ここからはどうしても必要な事ではないが、満場一致でやるべきであると言う有罪判決になっていたのだ。
「思い当たる節はある?」
「王だからな、有りすぎてわからん。が、奴隷関係の事だとは思う」
「うん正解。王だから仕方がなかったと言うのは分かる。けど王様達は報告書しか見ないから実際に何があったかは知らないよね。だから王様達には実際に何があったのかを見てもらう。たぶん疑問に思っている、私が何故ここまでお膳立てをしたのかも分かると思うよ」
知らなかった事は納得出来ても、知る必要がないとは思えないんだよ、と王様と宰相さんの目を見て言う。そして二つのペンダントを二人の前に置いた。
「それを首にかけると映像が始まるけど、映像を見ている間体は動かないし目を逸らす事もできない。一種の呪いのアイテムだから注意ね」
そうこれは私とウェスタだけは内容を知っている、リーシャちゃんの記憶の再生端末である。本人に無断で記憶を見た上にそれを手札として使うのは心苦しいが、この二人には自分達が知らなかった事で何が起きていたのかを知る義務がある。
実は王様達も私達が物申すまでは奴隷達の事を『どうでも良い物』だと思っていたのだ。重要な事案だと理解していればあのカカシに仕事を任せなどしなかっただろうし、現場の腐敗を諌める事も出来ただろう。だが実際にはリーシャちゃんは行政による救いの手から零れてしまった。後に別の手で救われていたが救われなかった者も一杯居ただろう。
どうしても王様達の認識を根本から変え、今後零れる者を減らす為に見て貰う必要があったのだ。
「半ば強制で見させるようなものだけど、王として、宰相として、各々の『義務』としてその映像は見て貰いたい。でもこれを見ても現場に怒りを覚えるのは間違ってるよ。王や宰相が現場がちゃんと動けるように法整備をしていなかったのが一番の原因なんだ」
王と宰相の責任について言及する。
「一応聞くけど、どうする?」
「ここでリーシャ殿をつれて来ていた理由が分かる訳か……先ほども叩かれ損ではなかった訳だな」
「うん、ああでもしないと普通王族を叩けないからね。あれで本人も水に流す訳にはいかないだろうけど、少しは溜飲が下がったはずだよ。今後リーシャちゃんが変な方向に育ったら困るから必要な事だったと理解して欲しい」
「なんですって!?」
フェズさんから非難の声が上がってくる。どんな状況だったかを一番良く知っているのだから当たり前だろう。
「ごめんフェズさん。この国で今後同じ事が起こらないように王様達に知ってもらう必要があったんだ」
「別にリーシャで無くとも……」
「リーシャちゃんと王様達が会う事もあるだろうからね、不用意な発言をされると困るんだよ。それにあの子と同じ様な境遇の子はまだまだ居るはずだから、絶対にその子達を救ってもらわないといけないんだ……ごめんね」
酷い事をしている自覚あるのでフェズさんに頭を下げて謝る。フェズさんは一応理解したのか渋々と引いてくれた。
「……アイの言うとおりだな。これは王として背負うべきものだ。王には取捨選択をする必要があるが、捨てたものがどういう結末になったのかを知らずに進歩が有るわけがない。私が今後も王である為にも必ず見る必要がある」
「同じくですね。ですがこの点では私のほうが責任が大きいでしょう。王を補佐するのが私だったのですから気がつかなかったでは済まされません」
二人とも同意してくれたようだ。
「同意してくれたようで良かったよ。覚悟が出来たらネックレスをつけてね」
「王と宰相になった時、いや、その前から覚悟はしてきている。だといっても慣れる物ではないんだがな」
「それは正常だよ。もし何も感じなくなっているなら王を他の人間に譲り渡す事を勧めるね」
古今東西、痛みを知らない者、忘れた者が為政者になると政治は必ず混乱する。『その人を知りたければその人が何に対して怒りを感じるかを知れ』って某マンガ家が書いてたけど、リーシャちゃんの過去にあった事を見て怒りを覚えないのは異常者だ。どういう反応を返すかも今後の為に見ておく必要がある。
「よし、じゃあ見るとするか」
「はい」
ようやく決心がついたようだ。二人とも首にネックレスをかける。
少しするとウェスタが話しかけてきた。ずっとだんまりだったね。
「ふぅ、で、アイはどっちのネックレスを渡したんだ?」
「20分のダイジェスト版、表現緩い方だね。激しい方は交渉決裂時の最終手段だし、メンタル豆腐だと気絶する可能性あるよ」
「私は激しい方でよかったと思うがな。リーシャの苦しみを全て背負うべきだと思う」
「王様にも言ってたけど、王として間違った事をやってた訳じゃないんだ。失敗はしているけど、人間誰しも失敗するから失敗する度に全責任を押し付けてたんじゃ何も出来なくなる。私は今後改善してくれると信じて緩いほうにしたんだよ」
私はウェスタを諭す。次はファレンが口を開いた。
「火姉ぇとアイはリーシャの記憶を見たんだよね。私は見てないんだけど?」
ちょっとファレンはお冠のようだった。
「うん、私の判断でSTOPした。ウェスタは自分の国の事だから知る必要があるけどファレンは無理に知る必要はないでしょ?」
あまり進んで見せたい物でもないしね。
「でも私にはフェズの事を知る必要があるよ。さっきもリーシャの記憶を見られる事に否定的だったし、私はまだフェズの事を信用したわけじゃない」
むー、確かにそういう見方もあるなぁ。フェズさんは今後働いて貰うわけだし、誤解は早めに解いておいて貰いたい。
なのでフェズさんを見るがかなり複雑そうな顔をしていた。というか変な顔だった。
「フェズさん誤解を解いておいたほうが良いと思うので、フェズさんが引き取った所から編集してファレンに後で見せても良い?ファレンもそれで良い?」
「まあしょうがないですね……でもリーシャは忘れたいと思っているので何も言わないようにお願いしますよ」
「わかったよ」
フェズさんとファレンから承諾を貰えた。ファレン結構フェズさんにキツい感じだったのは信用してなかったのかと納得する。そういえばどう良く言っても奴隷商人だし、仕方ないといえば仕方ないか。
「そうだな、ファレンもその辺りは見ておいた方が良いだろう」
保護者の同意を頂きました。
何とも言い難い雰囲気の中王様達が戻ってくるのを待っていたが、とうとう時間がやって来た。
王様と宰相さんが目を開ける。数瞬固まっていたが先に動いたのは王様だった。
『ポッコォォォォォォォォンッッ!!』
王様が突然凄い勢いで頭を机に打ち付けた。あの剣をまだ持ってて良かった。効果音は凄いことになっているが机に頭がめり込んでるので、顔面を粉砕骨折していたかもしれない。
「許せ」
私は王が頭を下げる意味を知っているつもりだ。だが私は許すつもりはない。
「私が許す事は何もないよ。今リーシャちゃんが言葉の謝罪を求めている訳でもない」
「許せ……」
「怒りも分かるし後悔もわかる。犯人は処刑済みだしあの子の心はフェズさんが救った。王様達にはあの子個人に何かをすることを許さないよ」
「……」
王様は黙ってしまった。宰相さんは王様すら見ずに涙を流している。
「まさかここまで国を腐敗させてしまっていたと言うのか!この私が!この国の民もこの状況を放置し、煽る者までいる始末だ!奴隷に権利が無いのは仕方がないと思っていたが、それだけで人はここまで残酷になれるのか!何をしていたのだ……私は……」
おうさまがこわれた。
「フェズ殿、質問がある。リーシャ殿と同じ状況の者でも本当に我が国の司法は無罪としたのか」
「……人権がないとはそういう事です。一切法によって守られる権利がありません。奴隷を守る為の特別法も私は聞いたことが無いですね。王よ、私が知る一番残酷な奴隷の使い方をお伝えしても構わないでしょうか」
「かまわん、知る必要がある」
「鉱山で俗にカナリアと呼ばれている使い方です。鉱山では新しい空洞等を見つけると、中にカナリアを離して生きて帰ってくるかを見て空気があるか、毒ガス等がないかを確認するんですよ」
カナリアは特に毒ガスに敏感で少量でも死んでしまうらしい。その性質を利用したやり方だね。
「ですが急に毒ガスが沸く事もあるので、自分達を守るためにも常に一体はカナリアが必要な訳ですが、死亡率の高い空洞にカナリアを毎回入れていてはカナリアの補給が間に合いません」
王様は先が気がついたのか眉を潜める。
「だから死んでも構わない上に、すぐに手にはいる安い奴隷を中に入れるんですよ。普通は働けない年齢の子供を……更に戻って来ない場合は助けもせずガスが出てこないように、ギリギリ入れた小さな穴を埋めるんです……」
「フェズさん、伝わったからもういいよ」
フェズさんの声は霞んでいた。ずっと王様に伝えたいと思っていたのだろう。
「リーシャちゃんの記憶を見たら分かったと思うけど、子供が一杯だったのもフェズさんが集めて教育し、死なない就職先に売っていたからなんだ」
「そうか……」
私の言葉に王様は言葉を失う。
「すまん、今は我らの不徳によって傷つき死んでしまった者達に黙祷を捧げさせてくれ」
王様はそれだけ言って黙ってしまった。




