王城襲撃作戦 3
私はリーシャちゃんを膝に乗せたまま話を切り出した。
「そうだね、そろそろ本題に入るんだけど2つお願いしたい事がある。1つ目は私の考え方の前提が皆とは違うと考えて欲しいという事かな。違う世界から来た人間と考えてくれた方が納得しやすいと思う」
実は事実なんだけどね。
「ふむ……」
私の言に王様は考え込むが放置して話を進める。
「2つ目は『他国への侵略の禁止』と『私個人への領土の割譲』を契約として了承して欲しいという事だよ」
私だって遊ぶための土地が欲しい。
「ほう……前者は理解出来るが後者は何だ?普通は頷けない内容だが」
王様は意外とケチだった。
「私は色々やりたい事があってね、その一貫で神様達の手伝いをしているんだ。まぁやりたい事の為に土地が必要なんだよ。今後奴隷解放を各国に広めていくけど、どの国にもこの二つは契約させるよ」
奴隷解放にかこつけて各地に場所を確保するのだ。
「つまり奴隷を解放するための前提条件な訳か……どの程度必要だ?」
王様が深読みする。まぁ各地にフェズ孤児院建てる事の為にも領地が欲しいから、間違ってないんだけどね。
「んー、細かくは決めてないけど最初は一キロ四方位で良いと思う。場所や範囲に付いては自治権さえあれば無茶な事を言うつもりはないよ」
あまり広くても目が届かないと思うしね。
「つまり単一国に属さず、各国に自治領を作りたいという事か……神の力でこの世界から戦争を無くすつもりか?」
「この世界に住むのは人間なんだからそんなことはしないよ。それに神の威光を使いすぎると人間は駄目になる。……例え私の目論見が成功したとしても戦争のやり方が変わるだけだよ」
王様なら何かに気がつくかもしれないけど、理解したら話が早くなるから餌を投げた。
「なん……だと……」
王様は固まってしまったが数秒で再起動した。
「……つまり、奴隷を解放出来ない国はどんどん国力差によって疲弊していく訳か!なるほど、侵略するなというわけだ。戦争をしないからこそ国はどんどん富んでいくと言うのか!」
……一体何段飛ばしで回答を出したのか。天才はわざとじゃなく話を飛ばすから困る。
「うん、多分正解。私はその自治領で元奴隷の子供達に教育を施そうと思ってる。教育の場に政治が入るとろくな事にならないから自治領である事が必要なんだよ」
パチパチと拍手をして表の理由を伝える。本音は言うまでもない。
「物資は輸入も出来る……最大の問題は金銭面か……貴女はどのように奴隷を解放するつもりだったのだ?」
「王様、契約を忘れちゃ駄目」
この王様は頭は良いけど暴走癖があるなぁ。
「ああそうだったな、って契約に同意しなければ近い将来わが国が滅ぶわ!」
「この程度が分からない王家だったら将来待たずに滅ぼすよ」
だって自己保身しか考えない代表なんて要らないよね。
「滅ぼされなくて良かったよ、ローエングリン王家は貴女との契約を承諾する。お名前をお呼びしても良いのかな?」
そういえば王様の名前を聞いてなかったなーと今更ながらに気が付いた。まだ国の名前すら知らないので後でこそっとウェスタに聞こう。
「私は神ではなく人間だよ。あなたは国王なのだから好きに呼べばいい」
「ではアイ殿と。私の名前はフランツ・ローエングリンだ」
私とフランツ王は硬い握手をした。
「アイ様、頭の中がキモい王とばかり話さずに出来れば説明もお願いします」
「次、様を付けるとぶち転がすよ?」
あれ、つい最近同じことを言ったような気がする。だって一国の宰相に様付けで呼ばれるとか嫌すぎるよね。
「ええ!?」
宰相さんが驚く。そうだ犯人はフェズさんだ、しかも宰相さんを見て少し笑っている。なんかキャラ的にこの二人被ってそうだなぁ。
「まぁ、確かにあれだけで分かった王もキモいとはおもうけど」
「ですよね。何がどう繋がっているのか全く分かりません」
「キモいキモい言うなよ……王は色々考えないといけないから深読みするのは職業病みたいなものだ」
嫌な職業病もあったものだ。多分本人の性格によるところの方が大きいと見た。
「王様はもう少し好奇心を押さえないといけないよ。また説明が脱線したからそろそろファレンがお怒りになる」
「大丈夫。今回脱線させたのは王だから問題ない」
「私限定!?」
地味にファレンが酷かった。私のみがターゲットだったらしい。
まぁ契約に同意も頂いたし話を進める事にしよう。
「金銭面はあとで話すとして、王様には全ての奴隷を王家所有にして貰いたいんだよね。王家所有になれば一気に状況が進むと思う」
「まずその理由を説明しないといけないな」
私の言葉に王がにやにや顔で茶々を入れてくる。うざい。
「まず普通は皆奴隷は必要なものだと思うよね。でも私の考えだと人間を奴隷として使うのは非常に勿体無いんだ。それなら牛や馬を増やした方が何倍も良い」
食料にもなるし。
「安価に物を作るためにも奴隷は必要だと今までは思ってきたが、それは商人の考え方だった。国王としては全く別の回答があったんだなぁ」
王様邪魔!
「……ウザ王様に後は説明してもらおう。間違えていたら怒る」
「なんと、怒らせてしまったか」
「間違えたらね、ちゃんと補足はするよ」
「じゃあ、答え合わせをしてもらおうか」
王様に丸投げして話の先を促すが、乗り気のようだった。
「知っていた筈だがその意味を理解はしていなかったんだろうな、不甲斐ない。奴隷は安く物を作っても消費は殆どしなかったんだ。例えば全ての奴隷が一般市民並の給料を手に入れ、色々な物を消費をし始めたらどうなると思う?」
王様は宰相さんを見た。
「今の生産量では賄えないでしょうね、奴隷は4割も居るのだから一般市民からの暴動が起きますよ」
宰相さんの『普通の』言葉に王様はため息をついた。
「作って無いのだから賄える訳はない。逆に考えるんだ、作ればそれだけ売れる需要があると。奴隷が給料を手に入れれば今より売れる量が増える。売れる量が増えれば奴隷に払う給料も増える。それは一般市民も同じだ。特に奴隷は今までは自分が頑張っても生活が向上しないから意欲も低かったが、作る量を増やせばどんどん向上するんだ、やる気も出るだろう」
どこからどう聞いても戦後バブル経済の話である。
「つまり奴隷として強制的に仕事をさせていたのを、お金で仕事をさせるという事ですね。暴力を使う必要もなく生産効率や品質も上がると……」
宰相さんも追い付いてきたようだ、中々理解が早い。
「まぁ給料は必ず頭打ちになるし、上がりすぎてコントロールに失敗すると大変だけどね」
「そうなると他国からの人口流入や、需要過多による技術開発も恐ろしい速度で……」
「スタァァァァッップ!!今これ以上は必要ないよ。様々な問題は出てくるけど実現さえ出来ればメリットが十分あるとわかってくれれば大丈夫」
王様が暴走を始めたので止める。もう十分だ。
「そうだなここまでは仮定の話であり、真に重要なのは実現させる為の方策だ。既に私は数年国力が下がってもやるべきだと考えているがな」
王様は目がマジだ。やる気になってくれたんだから話を進めよう。
ここからは私お得意の力業になるので王様の驚く顔が楽しみだ。




