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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第二章 奴隷解放編
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王城襲撃作戦 2

 名前も忘れたモブキャラが消えたのを見てから再度私は切り出した。


「王よ、弁明を聞く前に私からひとつ要望がある。さきほど王はあの者を信用している者だと言っていたが、『信用していた者』が王命を蔑ろにしていたのだ。最も『重用している者』一人を除いて退室するように命令してもらいたい」


 私は王に視線をやり口角を少し上げる。王は何かに気が付いたように顔を強張らせてからため息をついた。


「残念ながら反論できる理由は無いな。ではこちらは宰相以外は退室しろ、近衛兵もだ。この部屋の周りからも全ての人員を退去させよ」


「なっ、それでは御身を御守りすることが出来ません!」


「二度も言わせるな、王命だ」


 残った近衛兵四人に他の人二人は王命には逆らえずに退室していく。近衛兵に少し睨まれた気がするが、睨むならあのモブキャラにして貰いたい。


 全員出たことを確認してからファレンに話を振る。


「ファレン申し訳ないが、各種盗聴の魔法やアイテムの確認と完全な盗聴対策をお願いする。盗聴対策は中の音が漏れなければ構わない」


 その言葉に宰相は慌てた顔をするが、防音後に危害が加えられる事を懸念した為だろう。盗聴アイテム等がないのは事前に確認済みだ。





 ファレンから大丈夫と太鼓判を頂いたので、私は机に突っ伏した。


「王様……私達を利用するのは良いけど、あのレベルの馬鹿を自分達で処分出来ないのはどうなの?この状況に持っていくのに色々策略を考えていた私の苦労を返して欲しい」


「フッ、やはり気が付いていたか。あれでもかなりの権力を持っていてな……そう簡単に排除出来なかったのだ。この場に連れて来ればどちらに転んでも良いと思ってな」


「ああ、やっぱりウェスタが手紙に書いていた『私がウェスタを止めた』件を伝えてなかったんだね。結局自滅して人身御供になったわけだけど」


「今回の件は全てこちらの失態だが回答は変えられないぞ。先ほど話した事は我が国の現状だ。色々検討したがやはり粗がひどくてな、実現は到底不可能なものばかりだった」


 私と王が腹黒なやり取りをする。宰相さんはかなり驚いているが目が真剣だ、ぎりぎり着いて来ているかもしれない。フェズさんは既に考える事を諦めている。


「たが貴女は『火の神を止めた』のだろう?ならば神が納得する位の策を持っているのは明らかだ。我々にどれくらいの被害があるかは分からないがな」


「冗談でしょう?ほぼメリットしかないと言う所まで理解していると思っていましたが」


「……今の今まで半信半疑だったのでな。王家や国が傾けば一番被害を受けるのは奴隷や一般市民だ。その恨みは奴隷に向かい状況は今より悪化するだろう。ならばどうやって国が殆ど荒れずに奴隷を解放するのか……その先を貴女は持っている筈だが我々には分からなかった」


 まあそうなるだろうね。こっちは近代の知識を持っているのだから分かるのは当たり前だが、中世のどっぷり奴隷前提の考え方をしている人達が分かる訳がない。


 分かるのならば奴隷をかなり削減している筈だ。


「アイ、王と話をしたいのは分かるけど分かりやすく説明して。私と火姉ぇは事前に聞いてるけど、宰相さんとフェズさんも知っておかないといけない事だよ」


 ファレンが話を端折りすぎだと苦言を呈してきた。リーシャちゃんがはぶられたけどしょうがない。


「最初から?」


 私は宰相さんに一応聞いてみた。


「出来ればお願いしたいですね。このクソ王は多分火の神からの手紙の内容の殆どを握り潰していますよ。さっき貴方が言った『火の神を止めた件』や、この会議の参加要件が『王が信用している者』だと言うことも聞いていませんので」


「王様は腹黒だなぁ、仲間を嵌める気満々じゃないですか」


「貴女程ではないよ。こちらはそちらの策にそのまま乗っただけだからな」


 私が王に言うと王は即座に反撃をしてきた。


『はっはっは』


 私と王は笑い合った。王をクソ呼ばわりした宰相とフェズさんが凄く遠い目をしているのは気のせいだろう。


「そうだね今回の茶番劇はいくつか意味があったんだけど、最大の物が先ほど終わった奴隷解放の障害の排除だね。現場の粛清もしてもらわないといけないけど、あまりやると人員不足になるので見せしめ程度でいいと思う」


 その最大の障害が10分くらいで自爆したのだから悲しすぎる。


「あのカカシを連れてくるのが王側の最低合格ラインであったから、連れてきてくれて助かったよ」


 私は肩を竦めて言う。


「まぁ普通は『信用している者』ではなく、『信頼』か『重用』している者となる筈だからな。王城内部に信用が無い者が入れる訳がないのだから、言葉のままだと誰でも何人でも連れてきて良い事になってしまうだろう?火の神の件と合わせるとそんなミスをする人物な訳がないから、直訳すると火の神が怒っているから誰でも良いので連れて来いとなる。勿論こちらが神の怒りに捧げるのは、この件について責任重大だが簡単には処分が出来なかった腐った貴族だ」


 違っていても神の前で処分すればいくらか心証はよくなるだろう?と王は腹黒な台詞を続ける。


「お見事です。多分残りの二人は今後政策を円滑に進めるための脅され要員だよね、それなりに有能そうだった。でも目標の自爆が早すぎて消化不良だよ……ここからは説明ばっかりだから詰まらないんだよね……」


「すまなかったな。こちらとしてはその方が正直有り難かったがな。実はかなり強引な手段で来るものとばかり考えていた。そちらの少女がいた事でその懸念は少なくなったと思ったが、逆に思い違いをしたのかとヒヤヒヤしたよ」


 王が正直に言ってくるが、実は用意していた強引な手段の中で一番強引なのがリーシャちゃんを使った策なのですよ。


「彼女を甘く見ないで頂きたい。リーシャちゃんは私の切り札です」


 リーシャちゃんを手招きして呼び寄せる。膝の上に乗せてギューッと抱き締める。


「精神清涼剤な感じの!」


「それだけではないと思うがまあ良い。とりあえず我々に求めている事を聞いても良いかな?」


 リーシャちゃんの可愛さをサービスしたのに、王様が先を促してくる。宰相さんは目尻がさがっている。こうかはばつぐんだ!


 じゃあそろそろ本題に入るかと考え気を引き締め直した。

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