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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第一章 異世界入門編
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黒歴史の発表会 7

 ああもう、その言葉で大体の事態が理解できた。……やっぱりこの人達は人の良い神様なんだなぁ。この場合は神の良い神様か。


 この人達は私達の手が届かない所で亡くなってしまった人を、助けてくれていたのだ。後悔しかないあの結末を変える事ができるかもしれない可能性が目の前にあると言うのに、私には怒る必要性はない。むしろ私が怒るとしたら、その事で『私が怒ると思っている事』だろうか。


 まああまり言いたくは無いが、ここは言うしかないだろう。少し苦笑しながら切り出した。


「『許す』よ」

 

「……えっ?」


 ウェスタさんが私の顔を見てくる。


「私は今、貴方達に感謝してる。許すとさっき言えなかったのは、私には『許す資格』がないからだよ」


「……」


「あえて言うけど、同じ事を聞いたらほとんどのプレイヤーは貴方達に感謝し、自分達が傲慢と思われても貴方達を『許す』と言うと思うよ。貴方達が今まで感じた苦しみは私達も分かち合うべきものだった。後悔しかないあの結末を変えようと苦しんでくれた仲間になら、幾らでも言ってあげるよ」


 私達が許すと言う事で、少しでも気休めになるならね。と言葉を続ける。ウェスタさんは少し俯いていたが恥ずかしそうに横を見ながら話し始めた。


「そう、か。そう言って貰えるだけでも随分と気持ちが楽になった。ハァ、私もまだまだ小童という事か」


 うん、ウェスタさんの実年齢は一体何歳なんだろうか。ファレンちゃんも含め、神に年齢という概念はあるのかな?


「よしファレン、泣いてる場合ではないぞ!君からも彼女に言う事があるだろう?」


 ウェスタさんがファレンちゃんを促し顔を上げさせる。まだまだ泣き顔だったが、顔を振って再度胸に突撃してきた。まあ今はうれし泣きのようだったのでウェスタさんと目線を合わし、もうしばらく待つ事にした。




 泣きつかれたのかファレンちゃんは眠ってしまったが、寝たままコタツに入れると風邪を引くので膝枕+毛布だ。ほっぺたにいたずらをしたくなるが今は寝かせてあげよう。


 それよりもこの後の話をウェスタさんとしないといけない。


「ウェスタさん、いやウェスタって呼ばせて貰うね。今の話を聞く限り『彼女』のほうも保護してくれていると考えていいのかな?」


 もう二人とも『さん』や『ちゃん』は必要ないだろう。ウェスタいうに及ばず、ファレンも同列として扱うべきだ。とりあえずもう一人の被害者の事も気にかかったので、保護してないとは思えないけれど聞いてみた。

 

「その通りだ。彼女も死んですぐに保護できた。一時期は落ち込んでいたが三日で復活して我らへ協力を約束してくれた。すぐに保護できたというのも『レガシー』プレイヤーだったものが死んだら必ずここに来るようになってたんだ。そして協力するか否かを決めて貰って、否なら輪廻に入って貰うことになる。加えてあのポーション事件の後、余りに体か精神に傷を負ってしまったような場合はこちらに一旦来れるように調整している。後手後手に回ってしまったがな」


「改善してくれた事自体が凄く嬉しいよ、ウェスタ。あの彼女とも一度ゆっくり話してみたいけど、一体この一年間何をしていたのかな?」


「彼女は自分のためにアイが作ってくれた盾に宿って、今も土の神と一緒にあの少女を守っているはずだ。色々勉強しながらアイが悩んでる事も知って、彼女もずっと話したいといってたよ。しかし、あの子ほど清廉潔白な人間もめずらしい」


 少し驚きはしたがあの盾の事ならしっている。彼女は盾になっても元気にやってるんだろう。


「どうせ私は心が汚れてますよーだ」


「そういう意味で言ったんでは無いんだが……まあもう一人の『彼』のほうは少々特殊でな……、ここに来たときすでに自分の存在の形すら忘れかけていた。最初のうちは反応がある事もあったんだが、今現在は全く反応が無いといって良い状態だ」


 ウェスタは否定しなかった。ウェスタは否定しなかった。泣きたい。とても大事な事なので(


 ふざけられる話の内容ではないので考えている事を話す事にする。


「お願いがあるんだけど、私を『彼』に会わせて貰えないかな?私の後悔を少なくするためにも一度話をしたいんだ。たとえ話を全く聞いて貰えなかったとしてもね。これからも会えるとしても、今会わないと後悔する気がするんだ」


「もちろんアイにはその権利がある。だが今その様子では行く事は出来ないだろう?まず彼を担当している風の神を呼ぶので少しまってくれ」


 少しすると後ろの襖が開く音がする。あれ、そこ私が寝てた部屋だよね?他に入り口なかったよ!?


「呼びましたか?」


「ここに座ってくれ。今からいう事は事実なので質問は無しだ。彼女はあの『大魔王アイン』だ。いろいろあって生身でこの部屋にやってきた。彼女を彼に会わせてやってほしい、以上だ」


 ちょっと待て!はしょった事はめんどくさかったと理解してもその名前はおかしい!言われた風の神は呆然としている。先に『大魔王』の件を聞こうとするがその前に風の神が立ち上がり突進してくる。ファレンを膝枕しているので逃げられないし動けない。が、真横でとまり土下座をしてくる。


「どうか、彼を助けてやってください!お願いします!」



 あんたもかぁぁぁー!!



 風のような土下座を見せられて、この人への対応がめんどくさくなってしまったのはここだけの話である。



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