黒歴史の発表会 6
3/9改稿しました
「そして、レガシーのキャラクター『アイン』の保護を目的として監視していたのが私だったのさ!ちなみに大人気すぎて愛の事を知らない神はこの世界にはいないよ。特に『大魔王たぬき』事件は『レガシー』にいる全神が観せ……見守ってたからね」
は……?
この人達は何を言ってるんだ。あの事件の根底にあった物は笑いながら喋っていい事ではない。原因は人の業だったのだ。亡くなってしまった二人以外にあの事件を笑うような事は許せそうに無い。
神が見ていたのに止めなかったと?あれだけの悪意を目にして置きながら解決策を考えなかったのか?と考えてしまうのを止められなかった。
元々神に文句を言える筋合いでは無いとは分かっている。だが、あの最終的な事件ですら両陣営のほとんどが、『他のプレイヤー』の事を考え『レガシー』全体が良くなるようにと、怒りと悲しみを持って戦ったのだ。戦った当人達も笑えていないと言うのに、神であろうと笑う事を許す事はできない。
考えに耽って目を据わらせしまっていると、ウェスタさんがため息と共に話し出した。
「迂闊だぞファレン。君が嬉しいのは分かる。だが彼女はまだ君の事を知らない。君とてあの事件の根底にあった物を知っているはずだ。彼女も知らない『あの魂』の事も知っている。実際に見ていなくてもどれくらいひどい事が蔓延していたか、理解も十分しているだろう?面白可笑しくいきなり話されたら彼女とて怒るのはしょうがないぞ」
「え……」
ウェスタさんがファレンを叱る。理解されている事に少し心が落ち着くが、あの魂とは一体何の事だろうか。
「……ご、ごめぇんなさいぃ……」
私を向いて泣きながらファレンちゃんが下を向いてしまう。私のせい?!ちょっと不機嫌になっただけでこの状況にになった事に、一体なにがあったのか分からずウェスタさんに目線で助けを求める。
「いや、私が言い過ぎたんだ。しまったな……。しょうがない、こっちから話すか……」
とりあえず怒ってないよ、怒ってないよと抱きしめる。震えて泣いている。ウェスタさんも一緒に慰める。一体なにがあったのだろうか。
「まず、我々神がゲーム内での事を認識するのには物に宿る必要があった。テレビゲームならまだ何とかなったんだが、VRMMOは流石に無理でな。出来た事といえば精々海を漂って邪神の気配が無いか見回る事くらいだ。ファレンは見回りをせずに君の周りにいたんだが、その端末の技術が発見されたのが一年ほど前だ。と言うのも、君への感謝を元に作られかけている品物があったようでな、彼女も君への気持ちとして自分の力を上乗せしたようなんだ。完成したとたん回りを映像として認識できるようになったらしい。」
という事はあのパーカーに宿っていたのか……だからこそ、すでに家族のように感じてしまってるわけだ。
「お察しのとおりたぬきのパーカーに宿ったのがファレンだ……ってあーそうか、私も『顔が青ざめている』等言わなければよかったな。色々あった面白い方の話で顔が青くなっていたのかと思ってしまっていた、すまない」
「気にしなくて大丈夫だよ。半分くらい当たってるから。私のほうが大人気なかったと思う」
ファレンちゃんの背中をさすってあげる。少し落ち着いてきたようだ。
「まあその後は『宿る』方式にする神も増えて直接の監視も出来たんだが、例のポーション事件に関しては全く関われていなかった。本当にすまないと思っている」
「いやいや、本当にもういいってば。状況が分かってもう納得したから大丈夫だよ」
泣く子と地頭には勝てぬって言うしね。
「やはり……『許す』とは言ってはくれないのだな……」
むむむ、そこは重要な所なのかな?と、ちょっと不思議そうな顔をウェスタさんに向けてしまう。
「ここからは彼女のトラウマ……いや違うな。私も含め対応した神全体のトラウマとなってしまった出来事だと言って良い。私とて乗り越えられていないのに、ファレンに当たるとは大人気なさ過ぎる」
ファレンちゃんの様子から普通ではないという事を感じてはいるが、神と人間は感性が違うという事はあるんだろうか。無ければ聞くのが少し怖い気がする。ウェスタさんが頭を振って喋り始めた。
「君には聞く権利……そればかりか義務もあるだろう。あの世界を生きてきたのだから。だがファレンは怒らないでやってくれ、彼女もかなり努力をしたんだ。私よりも熱心にな」
何がはじまるんです……?第三次大戦とか、私の世界終わっちゃうよ?
「ポーション事件での犠牲者。イジメに合った男子学生の魂を我々は保護している。彼はこの一年半ずっと壊れたままだ。数日に一度『殺して』としか言えないくらいに壊れてしまっている……がな」




