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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
第一章 異世界入門編
13/55

黒歴史の発表会 2

3/9改稿しました。

「神様……ですか?」


 どうみても見た目人間にしか見えない。神って一体何なのかという深遠な命題を考えていると火の神様から御神託があった。


「神といってもあなた達の世界で言われている神とはちょっと毛色が違う。絶対の存在ではないし、見たとおり肉を持った存在だ。ただ内包しているエネルギーと感じられる世界の次元が違う位かな」


 神だけに毛色が違うというのは聞き流そうと思う。なるほどとりあえず凄い人達だと思えばいいのか。分かりやすくて助かりました。疑問が解けてお茶が美味しい。うん、これは夢だ。でもなんだか嫌な予感がする。


「他人事のように感じているかもしれないけど、ここに居るということは貴方も神になったんだよ。『災厄の英雄』様?」



「ブフォーーーーー!!?」


 うなずいてちょうど下を向いていて良かった。火の神様に毒霧攻撃を仕掛けるところだった。


「え……?」


 魔の神様が笑いすぎて痙攣しているが、気にする余裕は無い。内心脂汗ダラダラである。




 『災厄の英雄』というのはもちろん自称ではない。他称である。どの程度の他称であるかというと、テレビの全国ネットで晒されたレベルである。トップニュースで読まれ、電車の車内広告にもこの二つ名が掲載されており、引きこもろうかと本気で考えた事もあった。


 この二つ名がついた事件はもう二年前になる。『レガシー』の前作である『レジェンド』というVRMMOの最新作があったのだ。このゲームは武器の自由度、魔法の自由度、製造の自由度を売りにしており、システムによるアシストなしという鬼畜仕様。更にグラフィックにも力を入れており、ハード、ソフトともに予約完売という大人気だった。


 サーバーオープンが17時であったので、授業が終わると即帰宅し準備をしてオープン直後にサーバーにログインした。


 この30分後に悲劇が起こる。町の中で魔法の練習をしていた一人のプレイヤーが、核撃魔法「メギド」を組み立ててしまい発動してしまう。町の建物を吹き飛ばし、NPCを吹き飛ばし、町とフィールドに居た合計一万弱のプレイヤー、MOBも全て焼き尽くし一人だけ荒野に立ち尽くす結果になったのだった。


 このプレイヤーが誰かという事は精神衛生上控えさせていただくが、破壊不能属性をつけていたはずの町とPKされないはずの一桁階層でオープン直後に起こった事件は、運営にサーバーを閉じさせ緊急メンテを行わせるには十分な事件であった。


 この後数日メンテが続き、この事件を引き起こした『アイ』というプレイヤーは、ゲーム入れないプレイヤー達のストレスの発散の的になって晒されまくったという。撃破ログを確認していた複数のプレイヤーが晒した事が原因だ。


 だが、この状況はゲーム会社の発表があった後180度変わる事となる。プログラマーの一人が殺人未遂罪で指名手配されたのだ。どうやらオープン初日の夜9時以降はゲーム内部からログアウトできないようにするプログラムと、強制的にハードを外すと廃人になるような仕掛けを行っていたようだ。ゲームの廃人ではなく植物人間的なほうだ。


 どうやらこの仕掛けをするために、各種制限を甘くしていた事が今回の事件の発端であったらしい。また会社がこの事を隠そうとした事が内部告発で発覚。大々的に世間に発表され、大スキャンダルとなった。結果的に一万人以上を救う事となった、プレイヤー『アイ』はマスコミ各社に一気に持ち上げられた。こうしてお茶の間に災厄の英雄として親しまれる事になったのだ。







「災厄の英雄何て知りません。見たことも聞いたこともアリマセンガ?」


 動揺を隠しきれておらず、挙動不審になっている自覚はあるがどうしようもない。リアルとその名前を繋げる可能性があるものは悉く潰してきたはずだ。使っていたハードも押入れの奥深くに封印したほどである。初期設定時に登録した住所等のデータについても、犯人によって自動的に破損されるように仕組まれていたらしい。犯人グッジョブだ。


 現に運営を引き継いだ会社が100万もの懸賞金を掛けたが、二年経っても私の元に連絡は無い。偽者が多数名乗りを上げたようだが、行動ログが残っていたらしく本人はまだ未発見となっている。となると相手が私の想像の外である存在か、今の状況は私が夢を見ているかの二択となってしまう。


「ほう、しらを切るとはいい度胸だな」


 火の神様の目がジト目になる。でも断固黙秘する。認めたくないものだな、自分自身の若さ故の過ちというものを。一方、魔の神様は少し落ち着いてきた。


 しかし夢と断定するには現実味がありすぎる。アラートが鳴りまくっている今の精神状態で目が覚めない事はまず考えにくい。全国区で名前を知られた事はもう諦めがついているが、神様に知られているのは想像外、酷い桁外れのワールドワイドだ。災厄を超えて最悪である。


「まず私たちはまだ信用されていないからね。彼女はそこまで迂闊な人じゃないよ。常識はどこかに置いてきているけどねー」


 魔の神様は毒舌だ。ひどい言い草である。


「とは言っても、どこからどう話したら良いものやら……ここまで順序をすっ飛ばしている上に、私たち神からしても存在が非常識だ。うまく説明する自信がない」


 またまた酷い言い草である。魔の神様が笑いを我慢しようとしているのは可愛いが、話が進まないので少し譲歩することにする。


「とりあえず、お二人が私の想像を超えているすごい『人』だということは理解しました。聞きたい事も聞きたくない事もあるようですが、とりあえず今私がここに居る事についての説明を頂いてもいいですか?」


 火の神様がちょっと引っかかる言い方をしていたので、そこから説明してもらう事にする。


「アイは死んだんだ」

「アイは死んじゃったんだよ」


 二人そろって回答を頂く。目の前に神と名乗る存在が居る時点でまあ想像している回答であったので全く驚かなかった。


「隕石が直撃してな」

「隕石が直撃しちゃってね」


「は……?」


 火の神様は呆れ顔、魔の神様は笑い顔である。


 どうやら、死因すら私の想像外のようだった。


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