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城砦建築の召喚術師  作者: 狸鈴
前章 レガシー編
10/55

大魔王たぬき事件 7

3/16改稿しました。


 「口だけは達者なトーシロばかり良く集めたものだよな、全くお笑いだ」


 「只の案山子だったな。今の俺達なら瞬きする間に皆殺しに出来る」


 とは商人に協力していたPKerのアジトを、別働隊として壊滅してきた義賊(笑)さん達の言である。貴方達、ノリノリですがその装備はレンタルだからちゃんと返すように。


 引っ立てられた商人の足元に、ある『押収物』が叩きつけられる。


 「これは?」


 「今PKerのアジトから押収してきた『戦利品』のアイテムリストだ」


 隊長さんまじかっこいい。一方、商人の顔が青くなった。


 「分かったようだな、元々疑惑はあったのだがそれを見て確信に変わった。お前はPKerからアイテムを買って店で売っていたな。この証拠で今までの繋がりは確定だ。さらに『アイン城砦』を襲撃する日に二人一緒で居た事も状況証拠になるな」


 うん、状況証拠は真っ黒である。 


 「俺達を騙してアイテムを独り占めにしようとした事については、気がつかなかった此方にも非はあるだろう。だがな、俺達を煽動して無辜のプレイヤーを襲わせようとした事は断じて納得できん!『アイン』は言っていた。『争いになる少数の装備を提供するよりも、全プレイヤー対象での技術力の底上げが必要』だと。『私達の商品が出回ると、一般プレイヤー達の商品が売れなくなって全体的に不利益しかない』と」


 まあその結果を出した実験の被害者が元ギルドマスターなんですが。


 「元ギルドマスターははっきりと宣言したよ。自分達は『アイン城砦』が『ツヴァイ』に技術支援をしていたのを知っていたとな。一部クラフター達の中では周知の事実だったようだな。あの街で安く手に入れる事ができた理由を、商人であるお前が知らないわけは無い。すでに半年以上『アイン城砦』のプレイヤー達は、『レガシー』や一般プレイヤーの事を思って行動していたのだから!」


 知らなかったら今回の『ツヴァイ砲撃作戦』も立てられないんだから、盛大な自爆だよね。あと、照れる。


 「そもそも今になって考えると、あの戦いは最初からおかしかった。人員募集は攻める三日前。聞くと此方から使者もなにも送ってないそうじゃないか。そりゃ向こうから降伏以外で使者が来るわけがない。極めつけはあの宣戦布告だな。『アイン城砦』側が情に訴えて、『剣を置いてほしい』=『話し合い』を求めているのにいきなり全軍突撃だぞ、ありえん。攻めるにしてももう少し普通は話すだろう!」


 明らかに士気が下がりそうになったから突撃だったものねぇ……狙ってたんだけど。


 「言ってて情けなくなってきた……まあ我々からいう事は一つ。今回の事は『事実』として全プレイヤーに発表する。後はお前達が関わってきた人達が判断するだろう」


 皆商人達から離れていった。





 この采配は甘すぎると思われるかもしれないが、実はそうでもない。商人もPKerも信頼が第一なのだ。商人は言うに及ばず、PKerも舐められたら終わりだ。下手をしたら外部から嵌められるので、ここまで醜聞を持った有名PKer達を仲間に入れる所はまずない。すで試合終了なのである。


 被害が大きかった商人については特に、このままで良いのかという意見もあると思う。でも、もう商人についてはPKer以上に『終わって』いるのだ。


 彼らは絶対にやってはいけない事に手を出した。その罪状は『プレイヤーイベントを用いたPK計画』である。こんなのがまかり通ってしまったら誰もイベントに参加しなくなるだろう。また今回はイベント自体が一年前の再来を引き起こす可能性もあった。過去に運営は『同じ事が起きないように全てのプレイヤーにはモラルを持った行動をするように願います』と異例の声明をだし、同じプレイヤーを連続でPKするだけでBANされる事例もあったくらいだ。主犯はほぼ確定だろう。連帯BANの可能性が高いとは思うが、これ以上の断罪は運営に任せようと思う。



 こうして『大魔王たぬき事件』は幕をおろした。




 え、大魔王たぬき事件の名前の由来がまだ出てないって?


 運営が面白がって私の称号に『大魔王』を追加したんだよ。『特定のプレイヤーに今までの功績を評価して称号を追加しました』ってパッチ詳細に書かれてね。あの事件を知ってる人達にその事が広まって、大魔王たぬき事件と呼ばれるようになった。


 この後バハムートのサンドバックになったたぬ騎士軍団と、後方にいたら手柄が舞い込んできたペンギン軍団の仲が一時険悪になったりならなかったりもしたけれど、大体問題なく時間は過ぎていった。



 レガシー2年目を迎える頃になると技術も殆ど差がなくなり、アイン城砦との精神的な垣根も無くなっていった。お城も変形して機動獣騎士たぬ騎士に変形させるという一大イベントも終わり、次は無重力空間への挑戦でもするかーと考えていると事態は私の考えとはかけ離れた方向に進む事になる……。





『繰り返します!現在日本に隕石警報が発令されました!出来るだけ海から離れ、建物の中に入ってください!繰り返します……』


 と、町内放送で煩い位放送されていた。私は直前までVRMMOをやっていたが、いきなり強制切断され何事かと思ったらこの警報である。


 慌てるにしろ諦めるにしろまず情報を確かめる必要があるだろう。


 そう思いテレビをつけると落着予想のメインの場所は千葉東の近海とはなっていたが、確率が低い範囲に本土全てと四国が入っていた。肝心の隕石の大きさは数メートル予想らしい。


 私が住んでいるのは兵庫の山間なので、かなり付近に落着しない限り被害は少なくて済むだろう。


 しかしロシアの隕石の時に聞いた記憶では、10メートル規模が落着すると東京都23区が壊滅する筈だ。あのときも空中分解しなければもっと被害が多かったらしい。


 それ以下の被害だとはいえ、どこに落ちても地図が変わることになるだろう。私は仏教徒と言う名前の無信教だが後は祈るしかないので『解決出来る神様何とかしてください。普通の神様はいらないんで!』と神に祈っていた。


 ……目を瞑って祈っているとドサッと目の前になにかが落ちた。


「あいたた……間に合ったかな?」


「……誰ですか?」


 白い修道服を来た20歳くらいの黒髪の女性だった。私には残念ながらこんな美人な姉はいなかった筈だ。なんだ夢か。


「……!問答をしている暇は有りません、申し訳ないですが世界の為に死んでください」


 不審者はそう言って私の体に触れると消えてしまった。何が何やら分からない……と思ったら体が勝手に動いて自分では操作出来なくなっていた。


「凄い……普通の人間の50倍以上のエネルギーゲインがある。何貴女一体何者何ですか!?」


『それは私の台詞だよ!他人の体を勝手に使っちゃダメだって親に教えて貰わなかったの!?』


「そんな事教わりませんし……」


『間違った、他人の物をだった。話は出来るみたいだね、結局どういう事なの?』


「今落下してきている隕石をこの場所に落下させます。東京都に落ちると私達の世界がヤバイ事になるんですよ」


『拒否権は?』


「もう遅いですね、後数分でここに落下します。申し訳ないですが、この世界の数百万に私達の世界の億単位の人間の命と、この付近の方の命を比べると答えは一つになってしまうのです」


『……ふう、よくわからないけどどうしようもないなら協力するしかないね。何も出来ないと思うけど何かすることはある?』


「……ご協力感謝します。あなたはここまでで良いです、後は任せてください」


 見知らぬ人がそういうと、私の視界がどんどん擦れてしまい眠るように気を失った。

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