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明石と従兄妹と - Akashic Records -

「単刀直入に話そう。私と彼女はとある魔術結社の一員でね。変に誤解されると面倒だから最初に説明させてもらうと、結社なんて御大層な呼び方はしているが、単なる魔術に関わる人間の連絡会みたいなものだ」

 明石は最初にそう説明してきた。

「元は大学のサークルだったんだがね、OBが増えていくうちに大学とは関係ない人間まで混じるようになってきて、結局今では学生や教師、魔道士問わず魔術に関わる人間なら誰でも参加する寄り合いになってしまったのだよ」

 普段は淡白なだけだと思っていた先生が言い訳をするようにまくし立てる。

 いきなりの身内の登場に慌てているのかもしれないが、こんな先生を見たのは初めてだった。

 むしろ喜一自身も心の中では『明石』なんて呼び捨てにしていたのが急に『先生』になっていたのだが、喜一本人もそれに気付いていなかった。

 他人のことに興味がなく無表情なだけだと思っていた相手が、急に人間味を帯びてきたのが原因かもしれない。

「えっと、その人……」

弥生やよいだ。如月弥生きさらぎやよい美須賀みすか大学の一年だ」

「ちょっとぉーーー!カズにぃーー!」

「だから教授(プロフェッサー)の言うことを真に受けるなって言ってるだろ!大体、そのアノ●マスのマスク、勝手に持ち出すなよ!」

 あんたの物かよ。喜一は思わず突っ込みそうになった。

「だってちょうどいいところで壁に掛けてあったんだもん!」

「友達にもらったものだから捨てづらいんだって言っただろ!今すぐ外せ!馬鹿、押さえるな!壊れたらどうするんだ!」

「やだぁーーー!顔見られたら教授(プロフェッサー)に怒られるーーー!」

 喜一は思わず笑ってしまった。

 今日までは怪しげな連中で、何をしてくるかわからないと思っていた人達が目の前で子供みたいなケンカをしている。

 それが演技じゃないかと思わないほど喜一は純粋ではなかったが、なんだかそれを見ていたら自分の悶々とした悩みが馬鹿馬鹿しいと思ってしまうのだった。

 従姉妹と妹の違いだが、年下の異性の身内がいる身として近親感を感じてしまったのかもしれない。

「何を笑っているんだね。喜一くん」

 普段の真面目な顔を出そうとしながら明石がそう言ってくる。

「いえ、なんだか俺と妹のやりとり思い出しちゃって。先生って今みたいな方が授業聞いてくれる生徒、多いと思いますよ」

 言い過ぎたかと思ったが、言わずにはいられなかった。

「そんなことは……、普段の僕の授業はよくないのかい?」

 思わず吹いてしまった。

 考えてみたらこの二人、喋り方がそっくりだ。

 笑いを堪えるのに苦労する。というか、堪えていられた自信がなかった。

「今の方が面白くて、きっと授業は聞く気になると……思います」

 笑いを堪えて喋るのが大変だったが、明石は逆に感心した様子だった。

「そうか……、教授(プロフェッサー)も最初にジョークを交えたほうが効果的な講義ができると言っていたな……。あの人の言うことだからそれこそジョークだと思っていたんだが……」

「だからカズにぃは真面目すぎるって何度も言ってたのにねぇ……」

「不真面目すぎるお前が言うと説得力ないんだよ!」

 ついに明石は如月弥生から仮面を取り上げてしまった。

「いーやーーー!やめてーーー!」

 最初は顔を両手で覆っていたが如月と呼ばれる女の子だったが、仮面を取り上げられて観念したのか潤んだ目でこっちを見上げてくる。

 どきりとした。

 眉は太いが、目は大きくてパーマのかかったアッシュブラウンの髪も相まって日本人離れした顔つきをしている。

 なんとなく、猫をイメージさせる顔だ。

 目が丸いこと以外は確かに明石に似ていると言えなくもない。

 明石も美形に入る部類だが、この女子大学生も明石に似ているだけあって美人だった。

「うぅ……、これで単位落としたらカズにぃのせいだ……」

 歳上とは思えないような小柄の大学生が目の前で半ベソをかいていた。

「だから教授(プロフェッサー)の言うことを真に受けるなと言ってるだろ……。話がややこしくなるから少しお前は黙ってろ」

 明石は疲れたように言う。

 ちなみに、おっさん顔の仮面は大事そうにドレッサーに立て掛けられていた。

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