逃走
長田の前に立っているのは紛れもない凛花本人だ
これは夢か⁉︎ 凛花ちゃんがこんなとこにいるなんて…
てか第一ここにいたらマスコミに報道されないか?だってここはそこそこ有名なライブハウスだぞ!
ちょっとまて、そういえば昨日はHenjiのライブで凛花ちゃん来てたじゃないか!
混乱で頭の中がぐちゃぐちゃになる長田
「落ち着いて下さい!もう気付かれてらっしゃると思いますが私、Henjiメンバーの凛花なんです。少しかくまってくれませんか」
えー!なな、なんだこの展開は⁉︎
凛花がぐいっと前に踏み出す
「私、昨日の報道でマスコミに追われてるんです。少しでいいので助けてもらえませんか」
「あっ、は、はい!なんなりと!」
凛花の必死な様子に状況を飲み込めない長田もドギマギしながらとりあえず落ち着きを取り戻そうとする
「じゃ、じゃあこっちへ!裏道を知ってるんで!」
「ありがとうございます!」
二人は駆け出した
十数分間の移動で二人は寂れた住宅街に着いた
ここなら隠れる場所はいくらでもありそうだ
しばらく息を整え、「え…っと、状況を説明してもらいたいんだけど…こんな場所じゃ安心できないよね」
長田が訊く
凛花は小さく頷いた
「ちょっと待ってね」
そう言ってポケットからスマホを取り出す長田
「心配しなくていいよ、友達に手助けを頼むだけだから!そいつは秘密を守るやつだし…
あっ、俺もだよ⁉︎」
凛花はふふっと笑って
「ありがとう… ちゃんと説明はします。私自身の問題に巻き込んでしまって本当に申し訳ありません」
「いいんだよ!俺、凛花さんの大ファンだしHenjiのライブもよく行くし!」
明るく言う長田にようやく凛花も肩の力を抜いたようだ
それを見て長田も安心して亀岡に電話をかけた
「もしもし、亀岡か?今からお前んち行くわ
急用なんだ。いや、着いてから話す。じゃあな」
一方的にまくしたてる長田への文句が聞こえてきたが長田は構わず電話を切った
「いいんですか?お邪魔では…」
「いいからいいから!凛花さんは何も気にしないで!さあ、行こう」
そう言って二人は亀岡の自宅へ歩き出した