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第十八話「風焔纏いし包れた凶刃」・2

※グロ多めです。

「うっく!? しつこいですね!」


 躱しても躱しても攻撃を止めない回転刃。伸縮自在の包帯故か、回転刃との距離を離そうとしてもそれを許さぬというように距離を詰めてくる。風を纏い、さらに勢いを増したそれは、階段を下りきって一階の壁の隅に追い詰められた光目掛け、一気に突っ込んできた。それをどうにか間一髪避ける光。標的を逃した回転刃は、構わず屋敷の床を穿ち、回転刃で床を抉り取った。細切れになった瓦礫が周囲に飛び散り、砂埃が舞い上がる。

 一旦敵との距離を取って息を整えていた光は、それを見て冷や汗を流した。あと一歩回避が遅れていれば、あの瓦礫は自分の血塗れの肉塊だったかもしれないのだ。

 そう考えただけで、体の震えが止まらない。

 それにしても、ただの包帯がまさか床を抉り取るほどの硬度になるだなんて。これが、人ならざる存在――冥霊族の力だというのか。宣言した手前もう引き返せないが、今更ながらこんなやつ一人で相手に出来るのだろうかという不安が襲い掛かってきた。

 と、そこに、ドナルドの声が聞こえてくる。


【ちょこまかと逃げてばかり……それでこの私に勝てるのかしらぁ? さっきまでの威勢が嘘のようねぇ? 言っておくけど、逃げた所で無駄よぉ? 貴方は私の秘密を知ってしまった……弱みを握られた以上、消す他ない……あの女みたいに、惨たらしい死がお望みかしらぁ? それとも、何かリクエストがあるんなら、応えてあげてもいいわよ? ヒィハッハッハッハッハ!】


 明確な弱点がなく、包帯全体をどうにか消し去るしか相手を倒す方法がない光は、必死に考えを巡らせた。こちらを煽る敵など無視したい。だが、ドナルドが口にしたあの女が雷落である事に気づいてしまい、光は悔しさに歯噛みした。そして更に、禁句である言葉を口にする。


【――"(ひかる)"だなんて、まるで女の子みたいな名前だわよねぇ? "(ひかり)"ちゃんでもいいんじゃないかしらぁ?】


 小馬鹿にしたようなそのセリフに、疲労から冷静さを欠き出していた光は、怒り心頭になってお返しとばかりにその場に立ち上がり、叫んだ。


「くっ! あなたとて、男にも拘わらず女のような口調で……まるでオカマではないですかッ!」


 言われたままではいられなかった光の言い返しに、ドナルドは痙攣したように全身を震わせた。


【ぬぁんですってぇぇええええええええ!?】


 轟く低い声音と、不気味に震えるその体。

 次の瞬間、目にも留まらぬ速さで光の背後から包帯が襲来し、彼の四肢に一気に巻き付いて磔状態にした。


「しまった!?」


 後ろから不覚を取られ、光速移動で躱す事も出来なかった光は、完全に油断していた。武器やワイヤーは四肢が封じられているために使えない。光は焦燥感に駆られた。


【ヒィヒヒヒヒヒヒ!! つ・か・ま・え・た……♪ いいわよぉ、その怯えた顔……恐怖に彩られた表情を眺めながら、愉しませてもらうとしましょうかぁ!】


 頭部を失ったドナルドが、さっと目の前に移動してその両手の包帯を変形させていく。完成されたのは、両手から伸びた包帯で形作られた回転鋸だった。複雑に入り乱れた四方八方に殺意を飛ばす、鋭利な形状。その刃部分もなかなかの長さで、あんなもので斬りつけられればたまったものではないだろう。本来の使用用途に用いられるものとも明らかに形状が違う。明らかに木材加工用などで使用するものではない。残虐な殺人マシーンで用いられるかも怪しいその残虐性に、光は顔面蒼白になる。

 心臓の鼓動が徐々に速度を増す。


【んっふっふっふ……あの女と違って、貴方はどんな声で啼くのか、愉しみだわぁ♪ ンヒィ……ヒヒ、ヒィッヒッヒッヒ!】


 と、ドナルドが左右の手を引っ張ると同時、回転鋸が回転を始めた。包帯で出来ているとは思えない見た目。その回転速度と徐々にこちらに近づいてくる凶器に、光は恐怖で歯を鳴らす。


「く、くるな!? くるなぁああああ!?」


 もしものためにと光属性のオーラを防御で纏わせるが、果たしてそれがどこまで持ちこたえてくれるかは分からない。鋼土系属性のオーラならばまだ防御力にも期待が出来ただろうが、雷光系属性は防御というよりは瞬発力などスピードに特化している。

 光は必死に己の持つ力に願いを込め、目の前に迫る恐怖に目を瞑った。直後、激しい金属音と共に肉の抉れる音が木霊した。


「ぐぁああああああああ!?」


【ヒャッハッハッハッハッハ! いいわ、いいわよぉ! もっといい声を聞かせて頂戴ッ!】


 味わった事のない激痛に、光は絶叫をあげた。身体から激しく血が迸り、鮮血でドナルドの回転鋸が赤黒く染まっていく。

 必死に光の纏っている光属性のオーラが防御するが、やはり防御力はそこまで期待出来るものではなく、多少痛みが軽減されるレベルの気休めにしかなっていなかった。




 一分経つ頃だろうか、嗤い狂っていたドナルドは、ようやく凶器の回転鋸を止めた。

 周囲は凄惨な事になっていた。壁や床には光の血飛沫が飛び散り、磔にされた光の足元には真っ赤な血だまりが出来ている。並大抵の人間であれば失血死か、その痛みのあまりショック死していたかもしれない。だが、光は辛うじて一命を取り留めていた。それは、光属性のもう一つの力――回復によるものだった。彼は、攻撃を受けながら回復を自分の体にかけ続けるという荒業を咄嗟に思いつき、実行していたのだ。

 元々相手をすぐに殺すようなタイプではないドナルドも、すぐに死なれては面白くないと、回転鋸の接近距離に制限をかけていた。あくまで傷つけるのは彼の肉体表層部に留め、内臓やその他の器官には影響しない範囲に決めていた。その方が長く相手の激痛に泣き叫ぶ姿を愉しめる……そう考えているからである。これも、光が瀕死に近い状態で一命を取り留めた要因だった。


【なかなか愉しませてくれるわね……でもねぇ、貴方のせいで色々思い出しちゃったのよ。忌々しい思い出を蘇らせてくれちゃって……この落とし前、どうつけてくれようかしら】


 光の体を回転鋸でいたぶっている間、ドナルドは生前の忌々しい過去を思い出していた。

 何故このような口調になったか、何故このような姿になってしまったか……全ては忌々しいあの女のせいだと、怒りに震えつつ光を見据えた。


「……うっく、はぁ、はぁ……それならば、私が聞いてあげますよ。あなたの、その忌々しい過去とやらをね……」


 相手が話している間にどうにか回復を図ろうと考え、そう提案を持ち掛ける光。

 その言葉に、しばし沈黙していたドナルドだったが、両手で形成していた血塗れの回転鋸を解き、笑った。


【……いいわ、せっかくだし……話してあげようじゃない。私の忌々しい過去を……ね】


 そう言って、ドナルドによる彼の生前の昔話が始まった。




――▽▲▽――




 ここは、まだ初代伝説の戦士が生まれるより以前の時代。その風の里に、一人の少年が住んでいた。彼は風属性を持つ、有属性者の一人だった。しかし、その事実に彼自身が気づいた時には、何もかもが遅すぎた。

 少年は、髪の毛が長く、女の子のような見た目と華奢な体躯をしていた。ひ弱な性格も相まってからか、よく里の子供達からいじめにあっていた。だが、彼はやり返さなかった。力がないからではない。力を振るう事を恐れていた。

 きっかけは里の外れで一人孤独に遊んでいた時。

 その日は天気も良かったのだが、突如謎の雨が降り、彼はそれを浴びてしまった。

 それからである、少年が不思議な力を使えるようになったのは。不意に手をかざした際に、風が発生したのだ。


《え?》


 少年は自分の掌を見下ろした。単なる偶然だろう、そう思ってもう一度手をかざす。

 直後、発生した風が岩を破壊した。


《な、なんだよこの力……一体、ぼくの体、どうなってるんだ?》


 先程よりも大きな力。さっきのそよ風レベルならば、まだ偶然で片付く。だが、明らかな意思を持って、すぐ目の前にあった岩を破壊した風。あれは単なる偶然では片づけられない。恐らく、いや間違いなく自分の力によるものだと、少年は幼いながらに思った。

 少年は恐ろしくなって家に帰った。

 あれ以来、少年はいじめられる度に考えた。もしも、自分がこの力をいじめているやつらに振るえばどうなるのか、と。

 岩は簡単に破壊出来た。それも、粉々に……。つまり、あの岩が人間だったならば?

 子供の拙い想像力ながらにそんな事を考え、あまりにグロテスクな情景を思い浮かべてしまい、少年は吐いた。

 そんなある日の事だった。今日も今日とていじめに遭っていた少年は、里の外れで子供達の罠にかかり、岩で出来た洞窟に閉じ込められてしまっていた。

 そこへ、里にいたのだろう子供が、慌てた様子で駆けてくる。何やら騒がしい話し声。その後、一斉に子供達の足音がこの場から遠ざかっていった。どうやら、風の里に戻ったらしい。


――何か、あったのかな。



 少年は、数個の岩石で封じられた洞窟入り口に向かって手を振りかざした。

 直後、岩石はものの見事に細切れに砕かれた。

 入り口が解放され、ようやく外に出る事に成功した少年は、里の離れから見晴らしのいい場所へ向かった。そして、そこで彼は呆然と立ち尽くした。

 目の前に広がる風の里。渓谷が近くにある事もあり、風がよく吹き荒ぶこの地帯には、風力を活かすために風車が幾つも設置されているのだが、それはあくまで今までの少年が良く知る里の風景。

 今彼の眼前に広がっていたのは、地獄絵図だった。轟々と真っ赤な炎が燃え盛り、里の住人と思われる阿鼻叫喚の悲鳴が、ここまで微かに聞こえてくる。

 少年は顔を真っ青にして、血の気が引きながらも駆けた。必死に、必死に走って自分の家へと向かう。それには理由があった。いつもは仕事で働きづめの両親だが、今日に限っては二人とも家にいたのだ。いつも留守で、帰っても真っ暗な家。そんな暗い我が家が、少年は苦手だった。帰っても誰もいない、無音の空間。そこにただひたすら一人でいるのは、何よりも辛かった。それなのに、そんな自分の家の事が、今は気がかりでしかない。全力疾走で走る彼に、火の手が迫るが、邪魔だというように手を振るう。その度に、風の力が彼の助太刀をするように火の手を振り払ってくれた。

 そうして辿り着く我が家。膝に手をつき、肺が焼ける思いで必死に酸素を取り込む。熱気と炎、黒煙に包まれる風の里に、少年は汗を大量に流しながら顔をあげた。


《はぁ、はぁ、……っはぁ、はぁ、よかった……家は、燃えて……ない!》


 息を切らしながら、少年は少し安堵する。だが、隣近所には既に火の手が回っていて、ここも時間の問題だろう。

 両親の安否を急がなければと、少年は家の扉を勢いよく開け放った。


《た、ただいま……》


 恐る恐る帰りを告げる少年。だが、返事はない。胸が逸る。

 何やら血生臭い……もしかしたら、母親が料理をしているのかもしれない。

 と、その時、何かがつま先に触れる。


《え……》


 思わず声を失う少年。思えば、家の中にいるのに、どうして灯り一つ点けていないのだろうか。そう、考えるべきだった。


《うわぁあああああああああああああああああああああああ!?》


 灯りを点けた次の瞬間、目の前にあったのは、頭のない父親が血塗れになって変わり果てた姿だった。頭がないからといって、背格好を見れば自分の親くらい分かる。いや、この時ばかりは認めたくはなかった。だが、それも不幸にも分からされてしまう。

 なぜなら、すぐ傍に、両目を抉られ、その眼窩に小型のナイフを刺しこまれた父親の頭が転がっていたのだから。


《そ、そんな、なんで……なんでぇ!?》


 悲痛に泣き叫ぶ少年。目から溢れんばかりに涙を流し、現実離れした目の前の光景に、耳鳴りや頭痛がした。

 と、腰を抜かして後ろに下がったその時、今度は指先に何か柔らかい感触を感じた。

 それを認めたくなくて、恐る恐る後ろを振り返り、少年は絶句した。

 そこにあったのは、白目を剥き、舌を出して死んでいる母親の変わり果てた姿だった。よく見ると、その舌先は何者かによって切り取られており、首元には誰かが首を絞めた痕もあった。何より酷いのは、その衣服のボロボロさと切り傷、切断された手首である。血の量や衣服に着いた血痕からも、失血死というよりは、絞殺の線が強そうに見えた。

 子供ながらに不思議と冴え渡ってくる思考。

 風の里は強襲に遭っていた。それも、複数人による犯行。強盗団か何かだろうか? あまりのその残虐性に、思わず同じ人間による仕業なのかと疑ってしまうほどだった。

 鼻を突く死臭と目の前の凄惨な光景に、少年は堪らず嘔吐し、それから、こんなところにいられなくなって急ぎ家を飛び出した。

 直後、火の手が回っていたらしい隣の家が倒壊し、しなだれかかるようにして少年の家に倒れ込んできた。元々風の里の家は、乾燥地域にあるのもあって木製の家は程よく乾燥しているためか、よく燃える。少年の家も例外ではなく、あっという間に火の手が回っていき、ものの数分で家は全焼した。力なくその場にくずおれ、地面に両手を突き、絶望に打ちひしがれる少年。

 目の前でメラメラと燃え盛る紅蓮の炎は、容赦なく彼の両親を火葬した。


《父さん……母さん……》


 いつも苦手だった自分の家。そんな家にいつも仕事でいなかった両親がいた。そのせいで、少年は一度に二人のかけがえのない家族を(うしな)った。

 少年は無心で周囲を歩いた。誰か、生き残りがいるかもしれない。そう思って周囲を見て回る。もし自分がもっと早く帰ってきていれば。いじめの呼び出しに応じず、もういつぶりになるかも分からない一家団欒の時間を過ごしていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。自分の持つこの不思議な力を使って、両親を助けられたかもしれない。あるいは、仲良く両親と共にあの世に行けたかもしれない。そんな後悔が、彼の心の中で渦巻いた。暗く、冷めた心に蠢く怪しい影。その影が、徐々に心を蝕み始めている事に、まだ少年は気づいていなかった。

 しばらく周囲を歩き回っていた時だった。幼い悲鳴が聞こえてそちらへ走った。来てみれば、そこにいたのは少年をいじめていた里の少年が、襲撃犯の一人と思しき男に腕を掴まれている姿だった。どうやら、先に戻ってきた子供達が襲撃犯に見つかって捕まったらしい。

 少年は、刃を突きつけられて今にも殺されそうになっている少年を見て、すぐさま襲撃者に手をかざした。向こうとの距離もあるため、運よくこちらには気づいていない。今ならこの力を使って、あの少年を助けられるかもしれない。

 そう思った時だった。


(本当に助ける必要があるのか?)


《……え》


 突如脳内に聞こえてくる声。それは、紛れもない自分自身の声だった。


(あいつはお前を散々苦しめてきた人間だぞ? あいつに呼び出されたせいで、お前は両親を殺された。助けられたかもしれない命を、手放す羽目になったんだ。そんなやつを助ける義理がどこにある?)


 確かにその通りだった。謎の正義感からか、思わず手をかざしていたが、相手は大人。それに、武器を持っている。対してこちらは、まだまともに使いこなせてもいない不思議な風の力を使える程度。あの時は偶然にも岩を破壊したが、あれ以降怖くてあまり力を使って来なかった。上手く相手に当てられるかも分からない。パワー不足で返り討ちに遭うかもしれない。いや、それどころか照準を誤って、あの少年に当ててしまうかもしれない。その時、もし不運にも加減を誤ってしまったら? あの時の岩みたいに……。


(なるほどな、それもありかもしれないな)


――は? な、何言ってるんだよ……それじゃあ、ぼくは人殺しじゃないか。



(今までがツイていただけで、お前だって本当はいつでも死ぬ可能性があったんだぞ? 今回だってそうだ、運よく風の力を使って脱出は出来たが、もしも出来なかったら? 酸欠か、はたまた餓死か……突然の洞窟崩落で圧死、なんてのもありえるかもしれない。お前はいつでも死と隣り合わせなんだ。いつ死ぬか、早いか、遅いか……それだけの違いなんだよ。それは目の前にいるあいつだってそうだ。今この場であの男に殺されるか、お前が誤って殺してしまうか。いっそ、お前が殺してしまえばいいんじゃないか? 散々虐められてきた鬱憤……晴らしたくはないか? 今なら、あの男諸共殺ってしまえば、誰も見ていない……死体を見つけられても、この惨状だ。誰がやったかなんて、わかりゃしないさ……そうだろう?)


 まるで悪魔の囁き。それも、自分の声でそんな事を囁かれて、少年は激しく混乱した。構えていた手が、ずっと掲げていたのもあって段々と痺れて震えてくる。その震えは、恐怖も混ざっているのかもしれない。

 そんな時だった。悲鳴をあげていた少年の視線と、少年の視線がぴったりと合った。

 瞬間、一際大きな声をあげて少年がこちらの名前を叫ぼうと大きく息を吸った。


《なっ――》


 あまりに一瞬の出来事だった。叫ぼうとする少年に、捕まえていた男は仲間を呼ぶと思ったのだろう、瞬時に構えていた武器で捕らえていた少年の首をはねた。鮮血が迸り、男の体を紅く染め上げる。頭を失った幼き少年の体躯は、力なくその場に横倒れになって、斬首された断面から、倒れたワインボトルのようにとめどなく真っ赤な血液を零し続けた。


《はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……っ!》


 少年は物陰に隠れ、身体を震わせた。後もう少しあの男が捕らえた少年を殺すのが遅れていたら、きっと自分が殺していただろう。そう、思ったのだ。

 何故なら、あの殺された少年は、大声をあげて自分に助けを求めようとしたからだ。あんなに救いを求めても嘲笑うだけだったあの少年が、自分に請うように必死に泣き顔を浮かべて。

 名前を呼ばれれば、傍に第三者がいるのがバレてしまうではないか。そしたら、自分まで捕まって殺されてしまう。そんなの御免だ……そう、思ってしまったのだ。

 しかし、その考えを全肯定するように、あの声が囁いてくる。


(お前は何も悪くないさ、悪いのはあの餓鬼だ。実に醜い……自分は弱者を傷つけておきながら、所詮自分も弱者と分かれば、泣いて強者に救いを求めて媚びへつらい、縋りつく……全く、虫唾が走るよ。そうだろう?)


――そうだ、僕は何も悪くない……見捨てた訳じゃ、見て見ぬふりをした訳じゃ……な、……い。



 激しい動揺と、一気に見てしまったいくつもの惨殺死体というショッキングな出来事。それは幼い少年の脳に多大な負荷をかけたらしく、少年は目を回して気絶した。

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