表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/200

第十二話「各地の調査」・1

四部構成です。

段々と日が落ち、周囲が暗くなり始めてきた時分、フィヨが夢鏡王国警備隊を引き連れてやってきたのは、リーヒュベスト帝国だった。隊員の最後尾には、光蘭が十分な警戒態勢で後を追いかけている。

しかし、帝国内に入って数時間が経過した辺りから、ふと先頭を歩いていたフィヨが周囲の異変に感づいて足を止めた。


「どうかされたのですか、フィヨ様?」


 足を止めたフィヨの背後から、訝しげに光蘭が問う。


「何か変じゃないですか? ……帝国内に入るには、帝国門を通らなければいけませんよね。そこには必ず門兵がいるはず……それなのに、さっき通った帝国門にはその門兵がいなかった。これはどういう事でしょう?」


 フィヨの言葉を聴いて、そう言われてみればと光蘭も考え込む。


「やっぱり何かあったんですよ。そろそろ暗くなるし、真っ暗になるとリーヒュベスト帝国の森は危険と言われてますし、急ぎましょう!」


「は、はい!!」


 そう言ってフィヨが駆け出し、その後から光蘭と隊員達も続いて走って追いかける。

そしてようやくリーヒュベスト帝国の城が見えてきた。相変わらず闇に紛れ、ジメジメとした暗い雰囲気が漂う。その不気味さにビクつく隊員も何人かいたが、フィヨはそんなものに怖気づく事なく歩を進め、城門の扉を叩いた。


ゴンッゴンッ!


 が、返事はない……。フィヨは光蘭や、周囲の隊員と視線を交わしたが、どの隊員も不思議そうに首を傾げるだけだった。無論、光蘭も似たような反応を見せる。


「はぁ……あんまり派手な事はしたくなかったんだけど……開けて頂戴」


「し、しかし………」


 相手は帝国。身分も同等ではなく上位。その帝国の城の扉を勝手に開けてしまえば、どんな事になるか分からない。下手をすれば戦争になるやもしれない。常に和平を重んじ、平穏な生活を望む夢鏡王国の人間である彼らは、酷くその事を気にした、


「あぁもうじれったいわね! 責任はあたしが取るから、早くなさい!!」


 男のくせにもじもじしている臆病者の隊員に痺れを切らしたフィヨがそう口にすると、渋々隊員達が扉を力いっぱい押した。

 そして、ようやく扉が開いたところで、その奥に広がる光景を見てフィヨ及び隊員達が目を丸くして驚愕した。


「な、何よこれ……」


「やっぱり、ここも襲われてたんだ……」


 周囲を見渡しても、地に足をつけ立っている人間は一人もいなかった。誰もが五体満足ではなく、どこかの部位を欠損していた。あちらこちらの壁や床は崩落し、瓦礫の下敷きになっている者もいた。血痕がその凄惨さを物語っており、その血の量は尋常ではなかった。爆発でもあったのか、火は鎮火しているものの真っ黒な煙を燻らせている。


「とにかく、リーヒュベスト帝国二代目帝王である嵐潤夜様たちを探すわよ!」


「は、はい!!」


 フィヨの指示の元、現在の帝王である潤夜の捜索と誰か生きている者がいないかどうか生存者を探した。

が、どこにも息のある人間がいる様子はない。


「帝王なんだから、玉座にいるはずですよね。ということは、一番奥の部屋かしら……」


 フィヨは光蘭と共に帝王の間へと向かった。

道中、廊下を歩いたが、真っ赤な絨毯が血痕によるものなのか、元々の色なのか分からないくらい血が広がっていた。周囲には、人の形を留めていない肉塊も散乱していて、思わず目を背けてしまう。光蘭も口元に手をやっていた。


「酷い……光蘭さん達が言ってた冥霊族って連中の仕業なんですか?」


 あまりにもの死臭に、フィヨは服の袖で鼻を押さえながら先へ進む。


「お、恐らく……気をつけてください、フィヨ様。何があるか分かりませんから!」


「……心配してくれてありがとうございます」


光蘭にそう忠告され、フィヨは一拍置いて優しい笑みを浮かべてお礼を口にした。

進む事数十分。ようやく辿りついた帝王の間。そこはすっかり静まり返り、崩落した天井の隙間から微かな光が差し込んでいた。周囲を見渡すが、人の気配はない。玉座のあったであろう場所にも大きな瓦礫が落下しており、モワモワと土煙が舞い上がっていた。


「潤夜様! いませんかー!」


 声を張り上げ、二代目帝王の名前を叫ぶフィヨ。


「暗冷さん、青嵐さん、紫音さん! いないんですかー!!」


 フィヨに続き、光蘭も仲間の名前を大声で呼ぶ。

と、近くの瓦礫で物音がした。


「フィヨ様」


「はい、確かに聞こえました!」


 互いの顔を見合わせ、聞き間違いでない事を確認しようと音がした方へ駆け出す。

そして、ようやく崩壊した落石や瓦礫の影になっていた潤夜を見つけた。


「くっ……ごほ、ごほ、……その髪の毛と瞳、リスマードの……なるほど、夢鏡王国からの使者か。すまないな、訪問する予定だったのだが、問題が起きてな」


「これは一体何があったの!? この惨劇からして、襲撃よね? もしかして、冥霊族に!?」


 咳き込む潤夜の問題という言葉に、畳み掛けるようにフィヨが早口で尋ねる。


「お、落ち着いてフィヨ様。潤夜様……えっと、暗冷さんは?」


「親父なら、紫音と……奥にいる。あんたには以前会ってたな、フィヨ姫……冥霊族つってたか? そいつらかどうか確信はないが……敵は二人だった。一人はぶくぶくと脂肪たっぷり肥え太った爆弾使いの男と、もう一人はガリガリに痩せ細った鎌使いのミイラ男だ」


 潤夜が口にした仲間の行き先と、敵の情報。その敵の情報を聞いた途端、光蘭が声を荒げた。


「そのミイラ男の特徴をもっと詳しく教えて!」


「……ッ!? っと……口調は、オカマだったな。後……やたら美しさを求めてるみたいだった」


 突然肉薄してきた光蘭に潤夜は一瞬言葉に詰まったが、すぐに情報をくれた。


「やっぱり、あいつだ。お姉ちゃんを殺したやつと同じ……」


 握っていた拳に力が入り、手のひらに爪が食い込む。


「そっちにも行ったのか……」


 潤夜が静かにそう口にすると、光蘭はどうにか湧き上がる怒りを抑え込み口を開いた。


「……はい、あいつだけは絶対許さない」


 と、近くから足音が聞こえてきて瞬時に光蘭達が武器を構えた。


「んだよ、仲間と敵の違いも分かんねぇのか……てめぇは」


「その声、暗冷さん!?」


「おやおや、久しぶりじゃないかい……光蘭」


「紫音さんも……」


 暗闇の通路から現われたのは、紫音と彼女に肩を貸している暗冷だった。 

と、二人の名前を口にした光蘭がふと紫音の手元に目をやり目を見開く。


「……紫音さん、どうしたんですか……その腕」


 一瞬暗闇に紛れて気付かなかったが、紫音の右腕が消失していたのだ。


「ああ、これかい? ちょいとオカマ野郎にやられちまってねぇ、まぁやつに大きな一撃を与える事は出来たし、対価としては十分だよ……なぁに、元々左利きだから問題はないよ。それより、部下が運んだやつの手首はどうなったんだい?」


「……」


 紫音の説明の後の問いに、思わず光蘭は顔を俯かせる。


「……なるほど、悪かったね。その様子だと、あいつはあの後あんた達の所に行ったみたいだね……雷落は?」


「……殺されました。……ごめんなさい、せっかく提供してくれた敵の手首も、取り返されてしまって」


「雷落が殺された!? くっそ、あんのやろォ……許さねぇ!!」


 ドゴンッ!!


光蘭が雷落の死を告げた刹那、暗冷が激昂して隣の壁を殴り、

パラパラと天井から砂埃が落ちる。

 そんな、苛立ちを押さえきれない暗冷を見やりながら、紫音が口を開いた。


「こっちもね……大勢の死者が出たよ」


「あ、あれ? あの……青嵐さんは?」


「……ッ!」


 ふと周囲を見渡し、暗冷の妻である五十嵐青嵐がいない事を思い出した光蘭が問うと、暗冷が異様に反応した。それを見た紫音が渋面を作りながら、ボソリ口にした。


「青嵐も……死んだよ」


 そう言われ、暗冷が再び壁を殴った。既に走っている壁の亀裂がさらに深く刻み込まれる。


「暗冷、辛いのは分かる……けど――」


「うるせぇ! てめぇに何が分かんだよ!! 青嵐だけじゃねぇ、俺は亜夜と咲夜も殺されたんだぞッ!?」


 心配そうに優しく声をかける紫音の言葉が、逆に暗冷の感情を逆撫でてしまい、暗冷は怒声を響かせ衝撃発言を口にした。


「えっ!? あ、亜夜さんと咲夜さんも!?」


「ああ……敵の標的は、どうやらあたし達だけじゃなく、それに関わる関係者全員……って事みたいだよ。まったく、虫唾が走るったらないね」


「……そんな。どうして、私達が殺されなきゃいけないんですか?

 ましてや、全く関係ない亜夜さん達まで……」


 紫音から紡がれた敵の目的に、光蘭は絶望した。あまりにも理不尽すぎる。百歩譲ったとしても、関係のない無属性者が狙われるだなんて、あんまりだ。


「てか、夢鏡王国の人間がどうしてここに?」


 暗冷の質問だ。溜まった鬱憤が、怒声を上げた事で僅かに解消されたのか、やや落ち着いた声音でそう尋ねる。


「あ、あたし達は月牙の命令で来たんです。今日、来訪予定なのに全然来ない上に連絡もないから心配して……それで」


 今にも誰かを殺してしまいそうな目つきで暗冷に睨まれ、フィヨはしどろもどろになりながら説明した。


「なるほどね、色々あってそれどころじゃなかったから……ただその様子だとまだ夢鏡王国には被害は及んでなさそうだね。ただ、恐らくそれも時間の問題だろう……あそこには多くの神族がいるから手を出しにくい。けど、伝説の戦士がいる以上間違いなく襲撃する。それに、冥霊族の二人でこの有様だ……全員でかかられたら、ひとたまりもないだろうねぇ」


 これからの敵の動きを紫音が推測して口にする。


「とにかく、この事を月牙に連絡しないと!」


 フィヨは慌てて連絡の準備を進めた。

というわけで、久々の投稿です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ