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第零話「鉛空に迫りし白き影」・2

「……話が少し逸れたな。時間がない、急ごう」


 時間を確認して、部下の研究員達を急がせる。


「ところで、結局この発明品は、一体何の用途に使用するものなんですか?」


「簡単だ。霊力を半ば強制的に与える物だ。ちなみに霊力は、レプリカ=鈴華の霊力サンプルを使用させてもらっている。こいつでこの石像に無理やり霊力を与える。元々霊力は、制御するのが難しい力だそうだからな。この力を扱えるのは、巫女族と冥霊族と、それに携わる者だろうな。そして、この力をこの石像に与えるとどうなる?」


「新しい霊力が体内に蓄積されます」


「するとどうなる?」


 連続的にレイヴォルに訊かれた女性研究員は、首を傾げて続けた。


「ええと、制御しなければならなくなります」


「だが、今まで制御していた霊力の上に、さらに別の霊力を制御するとなれば、それは少し大変になる。だから、今みたいにグースカとは寝れなくなるというわけだ」


「なるほど、それで起こすんですね?」


「ああ」


 レイヴォルの考えた作戦は案外単純なものであったが、それでもやるだけの価値はあった。それに、他にこのゴーレムが起きそうな手段が見つからなかったのもある。

 さっそく準備を終えると、レイヴォルは一歩後ろに下がった。


「さぁ、では始めよう。霊力を与えろ!」


「はっ!」


 指示通り、研究員がダイヤルを捻ってスイッチを入れる。同時、淡い水色の様な白っぽい光が現れ、周囲を包み込んだ。


「こ、これは……!?」


「超高圧縮された霊力だ。これだけ圧縮されると、さすがに本来目に見えない力も目に見えるようになるらしい」


 それを聴いて他の研究員達は度肝を抜かした。今目の前で目にしている物が、本来ならばお目にかかることが出来ない霊力だというのか? それが高圧縮によって視認出来るようになったというのか? もしそうなのだとしたら、これは相当凄い事だと彼女達は思った。


「霊力を視認出来るだなんて、思ってもみませんでした!」


「私も……驚きました」


 霊力の存在すらあまり納得できていなかった彼女達にとって、この霊力の視認は、その存在を確実に確信させるのには十分なものだった。

 だが、いっこうに石像――ゴーレムは動く気配を見せない。


「ちっ、まだ霊力が足りていないようだ。電圧をあげろ」


「は、はいっ!」


 舌打ちするレイヴォル博士の勢いに気圧され、女性研究員が慌てた様子でダイヤルを上げる。すると、さらに膨大な霊力がゴーレムへと送り込まれた。すると、それに呼応するかのように、徐々に周囲の気温が下がり始めた。


ブルッ!


「うぅ……! な、何だか急に気温が低くなっていませんか?」


「どうやら、この膨大な霊力に他のやつらが反応を示してるようだな」


「他のやつら?」


「……お前達は冥霊族についてどこまで知っている?」


 突然そんな質問を投げかけられ、どう答えていいのか少し困惑してしまう研究者の女性たち。


「えと、確か……その昔、冥霊族は冥獣族と霊魂族に分かれていて、冥府――冥界にて大人しくしていたと聞きます。しかし、第一次光闇戦争の折、たくさんの死骸が地上に散乱し、そこに霊魂が宿って暴走……。それが断続的に起こり、ついには暴動が起こってしまった。冥界に入りきれなくなって溢れ返ったそれらは地上を跳梁跋扈し、大戦が巻き起こったとか」


「……冥霊族大戦でしたか?」


「そうそう、それ! そして、それを止めたのが鳳凰輪廻……だった。彼女は絶大な霊力を使って両者を抑えこんだ。でも、どこか別の世界へと送還しようとして創造神アリシアに尋ねたけど、もうどこの世界も満員だと言われた。ならば、新しい世界を作れないかと協議し、他の神々に掛け合っている内に再び両者が暴走しだした。もう手が無いと、輪廻は魔豪鬼神の所へ赴き、それから七力を手に入れそれを用いて両者を鎮めた。その際限界が訪れ魂が抜け出た。そこへ現れたのが、今では冥霊神と呼ばれている存在――シャルドゥカス。彼は新たな世界――冥霊界に君臨し、そこを牛耳った。いけ好かない人物だが、治める人物が誰もいない今、アリシアも仕方なしに彼に一任した。そうして、今の冥霊界が出来上がったと……そこまで、くらいですかね?」


 と、一人の女性研究員が人差し指で頬をかく。


「まぁ、及第点くらいはやろう」


「あ、ありがとうございます」


 鼻で笑うレイヴォルに、一応感謝の言葉を口にする研究員。次いで今度は別の女性研究員が口を開いた。


「その後、冥獣族と霊魂族は合併されて冥霊族になった。そして、その内部でも争いが起きぬようにと体制が成された。今では階級制度によって権限が与えられてるとかも聞いたことがあります」


「くく……よく勉強しているな、その通りだ。そして、その中でも冥獣族の中に『最強十三冥獣トリストカイ・ビースト』というのがいてな? そいつらは、冥獣族の中でも最強の十三人なんだ。その一人……9(ナインス)に『スヴェルカル=ディートヘイゴス』という男がいる」


 その名前に、この場にいる全員が顔をしかめた。


「ディート……ヘイゴス?」


 初めて聞くその名前に、一人の女性研究員が首を傾げる。


「やはり知らんか。まぁ、生前は相当有名な呪術者だったらしくてな? 様々な怪物を使役していたと言われている。それがあらゆる地方に存在する妖怪らしい。そして、その中でも()りすぐりの怪物達を集めて、一家を作ったと言われている」


「一家を……作った? 家族をってことですか?」


「まぁ、そんな生暖かい物だったら……良かったんだがな」


 少しトーンが低くなったことに、少しマズいことを聞いてしまったかもと、申し訳ない気持ちに苛まれる女性研究員。しかし、レイヴォルは案外そこまで気にしている風ではなく、続きを話し出した。


「その名も『ディートヘイゴス一家』」


「ディートヘイゴス一家?」


 ネーミングは普通だという素朴な感想は後にして、問題はその構成だ。


「一体どんな怪物が?」


「ああ、確認されているのは石像(ゴーレム)蛇女(ゴーゴン)吸血鬼(ヴァンパイア)人造人間(フランケンシュタイン)包帯男(ミイラ)魔女(ウィッチ)夢魔(サキュバス)鎧騎士(メタルナイト)幽霊(ゴースト)腐死男(ゾンビ)だ。噂によれば、最近新たに一人家族が増えたと聞いているが」


「そんなに豪勢なメンバーがいるんですか」


 意外にも大家族っぽい人数に、唖然となる女性研究員。それは他のメンツも同様のことだった。


「じゃ、じゃあまさか……ここにいるゴーレムって――」


「くく……ご明察。そう、ディートヘイゴス一家の一人と考えるのが妥当だな」


「そんなっ! それじゃあ、雅曇皇圓景楼は、冥霊族の中でも最強の存在である最強十三冥獣トリストカイ・ビーストの、スヴェ……なんとかって人と契約を交わしたってことですか!?」


「そうなるな。でなければ、一度に複数の怪物と契約を交わすなんて至難の業だ。今までの文献でも、そんな偉業を成し遂げたことのあるやつは存在していない」


 そうなると、やはり景楼は、生前呪術師をしていたという男と契約をしたのだろう。


「でも、それならこのゴーレム以外の家族は?」


「恐らくどこかに隠れているか、殺されたかのどちらかだな」


 前者の方が確率的には高い。ゴーレムがここに眠っているのだから、他のメンツも眠っていると考えるのが妥当なところだろう。まさかゴーレムだけ生き残って他の家族は死んだなんてことはあるまい。しかも、見た所家族構成的にも、このゴーレムの雰囲気からして大黒柱――父親という立ち位置であることは、なんとなく予想出来る。真偽を確かめなければ分からないが。


「くく……随分と話し込んでしまったな。が、これでも起きないらしい。電圧を最大に上げろ!」


「だ、ダメです博士! これ以上は電圧をあげられません!!」


「そんなわけあるかッ! もっとだ! もっと電圧をあげて、MAXの霊力をぶつけるんだ!!」


「む、無理ですっ!!」


「チッ、どけ役立たず!!」


 眉間にシワを寄せ盛大に舌打ちしたレイヴォルは、無理やり発明器具の側から女性研究員をどかすと、ダイヤルに手を触れて言った。


「最大限というのはな……こう――やるんだよッ!!!」


 そう言って手の握力を最大にして一気にダイヤルを捻るレイヴォル博士。発明器具はミキミキと嫌な音を立ててゴトゴトと変な動きを始めた。


「や、やめてください博士っ! これ以上は器具の方がダメになってしまいます!!」


「だったら、力をさらに付加させてやればいいッ!!」


 女性研究員が止めるのも聞かず、レイヴォルはやけになってダイヤルを思い切り捻っている手に電撃を蓄積し始めた。だが……。


「い、いけませんっ! 外の天気を見たでしょう!? 荒れてるんです! 雷がゴロゴロ鳴ってて今にも落雷しそうなこんな時に、電撃技なんて放ったら感電してしまいますよ!?」


 必死に自分達が仕える博士の身を案じて声をかけるのだが、レイヴォルは聞く耳を持っていなかった。


「いい加減起きやがれ、この寝坊助(ねぼすけ)野郎がッ!!」


 ビシャァアアアア!!! ゴゴゴ……ビガァァァァァァッ!! 


「博士、危ないっ!?」


 ドォォォォォンッ!! ビリリリッ!


「ぐあぁああああああああ!?」「きゃあぁあああああ!?」


 一瞬の出来事だった。レイヴォルが器具を通してゴーレムの体に向かって電撃技を放ったと同時に、暗雲から一つの黄金の槍が轟音と共に真っ直ぐに落下してきた。それにいち早く気付いた一人の女性研究員が、助けに向かおうとレイヴォル博士に触れる。だが、一足遅かった。頭上より降り注いだ雷は、レイヴォルの脳天から足先にかけて真っ直ぐに流れ、同時に、その両肩に触れてしまった女性研究員の体にも、同様の代物が勢いよく流れ去った。


「は、博士ぇぇぇっ!」


「エレーネぇぇぇっ!」


 残った女性研究員達が、被害を受けてしまった二人を呼ぶ。

 一方――。


「ぐあぁあアあァ!? め、目がアアァァァァ!? 焼けるゥゥ! か、体がァガァア、も、燃えるゥ、あづぃィィッ!? だ、誰がァ、わ、私をだ、助げろォォォッ!!? ガァァァッ!?」


 大量の電撃を一身に浴びたレイヴォルの肉体は、真っ赤に焼け爛れていた。目は溶け、顔の皮膚はほぼ黒焦げて筋肉が見えている。さらに、衣服は全て燃えていて体を火達磨状態にされたレイヴォルは、そう訴えかけるように叫びながら周囲を転げまわった。


「ま、待っててください! 博士をすぐに助けるわよっ!!」


「で、でも……水なんてどこにも――」


 と周囲を見渡していると、ふとバケツに汲まれた水を発見した。


「どうしてこんな所にバケツが!?」


「そんなことどうでもいいから急いでっ!」


「え、ええっ!」


 女性研究員の一人に()かされて、急いでそのバケツを両手で運んでいく別の女性研究員。


バシャッ!


 水を勢いよくレイヴォルの体にぶっかける。それから熱を追い払うように他の女性研究員達が、脱いだ白衣を用いて一斉に仰ぎまくった。


「しっかりしてください博士っ!」


「う、ウグゥッゥ!?」


 だが、予想以上に被害は甚大だった。しかも、それどころではなかった。


【ええい、騒がしいったらないわい……人様がせっかく休んでおったというのに、それを邪魔しようとするとは……当然の報いだろうて】


 それはどこからともなく聞こえてきた。図太くも少ししゃがれた感じのガラガラ声。まさに爺さんといった感じだった。

 慌てて周囲を見渡す研究員達。すると、行きついた視線の先は例の石像だった。そこからは、感じた事もない冷気――もとい、霊気を感じ取った。ヒヤッとしていて、不気味な何か……エレーネを除いた十人の女性研究員は思った。

 そして、彼女達は後悔する。この場所に来るべきではなかった、入らなければよかった、石像に手を出さなければよかったと。その身を持って思い知ることになるのだった……。

というわけで、零話から始めた今回ですが零話から始めたのには理由があったりなかったり。

ちなみにこのレイヴォル博士はⅣで出たあのレイヴォル博士です。

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