―プロローグ―
――命には限りがある。
全ての生き物には命があり、それが尽きると死ぬとされてきた。だが、その生命の理から外れたものが存在する。
ある辺境の地に冥府――冥界が存在した。当時はそんな名前で呼ばれていたが、現在は違う。では、どうしてそうなったのか……。
ある時、異形の形をした怪物が突如として世界に姿を現した。その『異』は形こそ取り繕ってはいるものの、完全なる形を成し得てはいなかった。影さえ存在しないものもいた。
そんな『異』を収集するために出現したのが、後の冥霊界なのだ。
――争いによって命は尽きる。
第一次光闇戦争。太陽の神と月の神の奪い合いによって勃発した人族同士での争い。それにより多くの命が失われた。
これにより世界は闇に包まれ、暗雲が包み込む星は暗黒の星とも呼ばれた。そして、太陽の光が届かず低温ばかりの毎日に、ついに人々は耐え切れず病を患う者が現れ始めた。病床に臥せ、ついには死ぬ者も現れはじめた。
怪我や戦争などで死に絶えた場合、肉体も壊れるため、失われた命は肉体を失い霊魂として存在することになる。
一方、病気などで死に、肉体が残って魂だけが抜け出た場合、抜け殻となった肉体は器として残る。それは、火葬されたり水葬されたりいろんな方法で葬られるが、時折姿を変えることがある。それが『異』になるのだ。異形の容になったそれは、次の容れ物を求める魂に器を提供し、使用してもらう。
こうして新たな魂が肉体に入ると、異形が再び起動し活動を再開するのだ。
それ即ち――冥怪獣……。
――戦いは終わりを告げない。
戦いはなかなか終焉を迎えず、人々の命が失われ魂と肉体が周囲に残っていた。人々に発見してもらう事が出来ず葬られなかった肉体は、やがて腐敗し、何の因果かあらゆる生き物と融合を果たした。それがどういうメカニズムなのかは分からない。ただ、合体するのだ。そうして完成する新たな肉体は、行き場を失い、まるでゾンビの様に地上を跳梁跋扈した。
――聖なる巫女は霊力を持つ。
噂を聞きつけた『巫女族』のトップ『鳳凰 輪廻』は、人々のためにこれを鎮圧せんと動いた。力を借りようとあるものに頼んだのだ。
『異』を止めるには『異』の力……。伝説に聞く、『魔豪鬼神』の力……それを借りようと思ったのだ。
だが、怪物は力を貸さず輪廻を襲った。輪廻は成されるがままだったが、決してまっすぐな意思だけは折れなかった。
その結果、輪廻は呪術によって七体の魔豪鬼神を術中にハメ、霊力を七つの力に封じ込め七つの力を得た。それ即ち『七力』。
これを用い、冥獣と霊魂を鎮め冥府――後の『冥霊界』へと送還した。
やがて冥霊界は、冥霊神『シャルドゥカス=ピフェロニック=ガ=ヴァルドムルン』によって治められ、それ以降冥霊界が表舞台に立つことは決してなかった。
――仲介役は平和を求める。
第一次神人戦争によって多くの血が流れた。神族と人族が争い、それを両者の間に産まれた『神王族』のトップ――『神崎 王都』が止めた。
神々は異を唱えたが、王都は断固として和平を覆すことはなかった。互いに条件を出し合い、それぞれ対価を支払う形で和平は成された。
神々は人族の中で一番最強の存在――『皇族七家』に天候を操る力を授け、人族は平和を保たせるため、欠けた『世界四大神』の後を継いで『四帝族』がパワーバランスを担う任に就き、その平和を誓わせるために、神王族として王都が自身の『命』とも呼べる品――『七つの秘宝』を小七カ国の王に封印させ守らせた。
こうして平和がもたらされ、その後神々との争いが繰り広げられることはなくなった――はずだった。
だが、事件は起こった。
――強大な力を持つ者は、それを失いし時裏切られる。
王都が突如消息を絶った。噂によれば、何者かによって暗殺されたという。だが、四つの帝国に並ぶ新たな帝国――『ハルムルクヘヴン』を築き上げ、そこにずっと住んでいた彼を襲う人間など限られていた。しかし、真実が語られることはなかった……。
――事件とは立て続けに起こるもの。
悲劇はまさに真夜中に起こった。綺麗な月夜の晩に、皇族七家の内の六家の人間が、真っ赤な血の色に染め上げられた。
――強い力は敵を引き寄せ、あまりにも恐ろしすぎる力を所有する者は、仲間に不安感を覚えさせ、ついには内乱を引き起こす……。
皇族は、ついに滅んだ。
時は流れ、初代十二属性戦士が第二次神人戦争を食い止めてから数年後……。大きな戦争が繰り広げられた。
――ドルミラ龍鎧大戦。
鎧一族の帝王――オルガルト帝と鎧一族最強四天王亡き後、伯爵『オブタミス=ドルーミラ』という人物が指揮を執り巻き起こした戦争である。場所は一番陸面積の多いエレゴグルドボト帝国で繰り広げられ、そこで龍竜族の双龍――俊龍と聖龍と鎧一族の残党が戦ったものである。
それにより、鎧一族は大幅にその数を激減……。残ったのは、大公『ベラス』、公爵『フィラーデル』、侯爵『ヴァルーディア』、子爵『ロスパー』、男爵『ドルトムント』の家のみとなった。ちなみに、ドルーミラ伯爵の家は、オブタミスが亡くなった直後に無くなったと言われている。
また、鳳凰一族は先の大戦の影響により滅んだ。何でも双龍の強さに恐れ戦いた鎧一族の人間が、鳳凰一族を襲撃したらしい。
結果、四帝族の内、鳳凰一族は滅亡、鎧一族も存続の危機に陥り、パワーバランスを管理するのが難しくなり始めた。
同時、五大帝国という存在にも危機が訪れようとしていた。ハルムルクヘヴン帝国も現在トップを失っている状態、その上フレムヴァルトもエレゴグルドボトも大変な損害を生じて治安がとてつもなく悪くなっていた。
そんな国が長く保つはずもなく、一ヶ月後には滅んでしまった……。
一方で、大きな事件も起きず平和の続く二帝国――ウォータルト帝国とリーヒュベスト帝国で、一族の後継者と次なる帝王が決められた。
ウォータルト帝国の二代目帝王に『霧霊霜 鳴海』、二代目後継者として『霧霊霜 七海』が選ばれ、リーヒュベスト帝国の二代目帝王に『嵐 潤夜』、二代目後継者に『|嵐《あらし 慌夜』が選ばれた。
小七カ国の内の一つ――夢鏡国。この国だけは残ったが、他の六カ国は王が失踪してひっそりと滅んでしまった。
また、夢鏡国に一つの建物が設立された。それが、『王立魔法育成教育学校』――通称ロムレスである。これは二代目国王となった月牙によって建てられており、力を上手に使うための基礎知識や、いざという時のためのあらゆる戦闘訓練を、有属性者に行わせるための学校である。
だが、完成当初はまだまだ入学率が少なかった。しかし、学生寮が出来てからは一気にその数は倍増した。あらゆる大陸から有属性者の子供達が集い、その中には四帝族の内の二人もいた。
それから三年後、事件は再び巻き起こる……。
時刻は既に次の日を迎えようとしている。そんな真夜中に、真っ白な白衣を纏う幾人もの人間。
それらは、とある豪邸を目指していた――。
――冥獣は目を覚まし、そして失った主の復讐を誓う。
――霊魂は冥霊へと下り、残された後継者は仇を討つ……。
――特別な力を持つ者は、絆を手に属性を武器に、荒ぶりし四神龍を封じる……。
――そして、その十二属性戦士の二代目の物語が始まりを告げる……。
というわけで、新年を迎えると同時にⅤを書きはじめることにしました。今後はもう一つの作品と平行することになるかもしれません。あらすじは、少し適当になっているので、後で変更すると思います。