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俺の幼馴染み♂が怪しい  作者: シャチ
3/19

俺のハイスクールライフ@100万円未払い

 

2時限目が終わった後のことだった。


「おーちゃん!」


教室に太郎が入ってきた。

ちなみに、俺は1年1組で太郎は1年3組。

幼稚園からずっと一緒だが、小学校から今まで1度も同じクラスになったことがない。

太郎はなにかの怨念だとか、意味不明なことをぬかしているが、単に確率の問題だと俺は思う。


「なに?」


「日本史の教科書貸してくれ!」


「いいけど、太郎が忘れ物なんて珍しいな」


「まあ、俺も人間ってことだよ」


別に俺はお前のことエイリアンだと思ってねえよ。


「はい」

俺は机から教科書を取り出し、太郎に渡した。


「サンキュー」

そう言うと太郎は後ろを向いて、黒板の横の時間割表を見た。


「あー、おーちゃんのクラス、4時限目日本史なんだ。じゃあ授業終わったら、すぐ返しに来るな!」


「ああ、うん」


太郎は言ったとおり、3限が終わるとすぐに教科書を返しに来た。さりげにバレンタインの時にチョコをくれた女子達にお礼を言って帰っていった。





そしてーー


「きりーつ!礼!」

号令と共に、眠りを誘う悪魔の授業、日本史が始まった。

日本史の先生はおっかない奴なので皆真面目に授業を聞いている。


「えーでは前回の続き、明治の初期について…教科書の162ページを開いて下さい」




「うわぁっっ!!」

バサッ!

俺は驚きのあまり、教科書を放ってしまった。


「どうした?大滝?」


「いや、なんでもないっす」

クラスメイトの視線が痛い。

俺はいたたまれない気持ちで教科書を拾った。

…くっそー。太郎やつ。ふざけたことしやがって!


日本史の教科書162ページには、落書きにしては図々しいサイズで絵心0%の動物が描かれていた。

しかも、しっかりと蛍光ペンで色付けまでされている。

ふきだしで『おーちゃん、ファイト‼』と俺を激励していた。

ファイト‼じゃねえよ!今まさに終わったわ!

ん?よく見るとふきだしの最後に肉球が描かれている。ちょっと待て。このどう見ても干からびた馬のミイラにしか見えない生物は猫?猫なのか?



いつもは眠気との戦いになる日本史の授業だが、今回は笑いをこらえるので必死だった。




「大滝ー。さっきのマジなんなの?奇声あげて。しかもお前、そのあと小刻みに震えてたし」


授業が終わったあと、同じハンドボール部の中川が俺の席にやってきた。


「…それは、こいつが原因で」


俺は中川に162ページに巣食う悪魔を見せた。


「うわっ、なにこれ。気持ちわるっ!」


「太郎が描いたんだ」


「え?太郎が?あいつ絵は下手なんだな」



「私たちにも、それ見せてー」


“太郎”という単語に反応してクラスメイトの山田さんと岩下さんが近づいてきた。バレンタインデーに友チョコをくれた人達だ。

なんで2人は俺に話しかけてくるかというと、ご覧のとおり太郎に気があるからだ。


まあ、いいさ。

俺だってもし、学年いちの美少女を好きになったら、そうするだろうから。

とりあえず同じクラスの、美少女と仲がいい女子とお友達になる作戦だ。


でも、なんだかな。はたから見りゃ女子2人に囲まれてリア充っぽいのに…俺って残念すぎる。



「かわいー!」


太郎が描いた馬のミイラもとい猫を見て山田さんと岩下さんがはしゃいでいる。

どこが可愛いんだよ⁉よく見ろ!

…まあ、『あのなんでも出来る太郎くんが絵が苦手なんて!ギャップがあって可愛い!』ってことなんだろうけど。






ーー放課後


俺は部室でハンドボールの運動着に着替えていた。ちょうどシャツを脱いだときだった。


「ぎゃあ!!おーちゃん!」


太郎が部室に入ってきた。

うるせぇ。


「びっくりしたー!心臓に悪いだろー」


「そりゃ、こっちの台詞だよ。入ってくるなり叫ぶな」



「今日は日本史の教科書、ありがとな!」


着替え終わると太郎は、笑顔で俺に言った。ーーふっ。お前の魂胆は分かってるぞ。あの落書きについて、何か言ってほしいんだろう。でも、触れてやるもんか!!


「ああ」


それだけ言うと俺はグラウンドに向かった。


「筋トレだりーな」


俺は隣を歩く太郎に言った。

つもりだったが、太郎はいなかった。

なんだよー。俺、独り言言ってるアホになっちまったじゃねえか。


ガチャリ。

部室からがっくり肩を落とした太郎が出てきた。


「おーちゃん、絵、見てくれなかったんだ…」


そんなちっぽけな事で落ち込んでんじゃねえよ!つーかばりばり見たし!


「一生懸命描いたのになあ…」


「見た!見たよ!でも人の教科書に落書きするなよ!」


「めんご、めんご☆」

うぜぇ。




グラウンドで筋トレやシュート、パスの練習をする太郎は下校中の女子達の注目の的だ。

ちなみに、俺たちの高校は私立なので太郎ほど明るい茶髪の奴はいない。おまけに長身なので、遠くからでもよく目立つ。

なかには立ち止まって太郎を眺める人もいた。外見だけで太郎のことが好きな女子はあいつの本当の性格を知ったら、驚くだろうな。

そんなことを考えながら、俺は寒空のもと人工芝の上で筋トレにいそしんでいた。


え?なんで屋内競技のハンドボール部がグラウンドにいるのかって?そんなもん、体育館は他の部活でいっぱいだから、弱小ハンド部はグラウンドの隅に追いやられたってだけのことさ。



部長の挨拶が終わり、両面テープの塊を投げあったあと今日の部活は終わった。




「気になってることがあるんだけど」

自転車を押しながら、太郎が言った。


「なに?」


俺は自転車に跨りかけたが、足をもどして太郎を見た。


「おーちゃんってさ、好きな人いないの?」


急になに言ってんだよ!そういうことって突然切り出すもんじゃなくね⁉もっとタイミングとかさ、あるだろ。


「…いない」

俺は自転車を押しながら答えた。


「えーー」

なんだ?不満か?


「宮野さんとか可愛いって思うけど、接点ないし」


宮野さんってのは俺のクラスで1番可愛いくて人気のある女子。まあ、今日の日本史の授業のハプニングの時、ゴミを見るような目で見られたけど…。あの猫の絵のせいで‼


「ふーん。じゃあさ好きなタイプとかは?それはあるだろ?」


「なんだよ、急に。そういうお前はどうなんだ?」


こういう会話の逃げ方は心得てる。


「俺?俺は猫みたいな子が好き」

猫みたいってなんぞ?


「と言ってたら、猫きたーー!!」

突然、太郎が大声をあげた。

目の前の道路を大きな猫がのそのそ渡っていた。


「ニャンコ〜、危ないよ〜」

バカみたいにオロオロしている。少し落ち着け。

猫は太郎の心配をよそに道路を渡りきると茂みに入っていった。


「俺さ、前々から思ってたけど、そんなに猫が好きなら飼えばいいじゃん」


「馬鹿だなあー」


えっ⁉なにがっすか?


「俺は野良ニャンコが好きなんだよ!」


普通に野良猫って言いやがれ!


「だから、今は世界一可愛い野良ニャンコを探してるわけ。で、見つけたら連れて帰るつもり」


それ誘拐じゃね?


「あ、雪!」

太郎が空を見上げた。

確かにポツポツと降ってきた。でもこれは…


「雨だろ」


「雪だって」


「雨」


「雪!じゃあ、明日積もってたら100万円な!」


お前は小学生かっ‼


そうして俺は家路に着くのであった。



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