コントラスト 消失ショート7
別に熱気球にあこがれ等は無いです。新しいPCは欲しいです。
何事も始まるまでに膨大な時間がかかる。それはそれは気の遠くなるほどの時間だ。そしてそれはあなたにとって、とてもとても大事な大事な時間だったかもしれない。本当に。
人によっては、初デートが決まるかもしれない。またある人によっては子供が生まれるかもしれない。また別のところでは手術が成功するかもしれない。自殺を止められるかもしれない。お葬式の段取りが組めるかもしれない。世界が終わってしまうかもしれない。
僕にとってはそれが熱気球であった。僕は熱気球に乗らないといけないのだ。
熱気球に乗るまでに僕は一年の歳月を費やした。一年。きっちり一年だ。365日、8760時間、525600分、31536000秒だ。閏年じゃないのが幸いしたと思う。
この一年間、僕は熱気球強迫観念に襲われていた。熱気球に乗らなきゃ、熱気球に乗らなきゃ・・・。生活での多くのことが何も手につかなかった。一年を恐怖症で過ごすということはしんどい物だ。それを知ることだけがこの一年で得たことだ。
だったらもっと早く乗ればよかったじゃないか。あなたは言うかもしれない。でも違うのだ。僕はきっかり一年前から、その日に熱気球に乗らなきゃいけないということを理解していたのだ。いわゆる、天啓?でもまあ、僕自身そんな風に考えたことは一度も無い。
あと何日で熱気球。あと何ヶ月で熱気球。あと何秒で熱気球。こんな感じで生活した。
僕はこの一年間、何で自分がこんなに熱気球に乗りたいのかが、全くわからないままに生活をしていた。子供の頃から熱気球に憧れていた?違う。中学、高校で熱気球を語るような友人との出会いをした?してない。熱気球に命を救われた?全然救われて無い。
熱気球の何が楽しいのか?それがわからないまま僕は今日まで生きてきた。この一年間以前に熱気球について何かを感じたことは無い。まったく無い。0だ。
そしてついに今日、長い時間を経て僕は熱気球に乗る。出来れば僕一人で乗りたいが、さすがにそれは無理らしかった。僕以外にもう一人プロの人が乗ることになるが、仕方がない。背に腹は変えられない。とにかく早くしないといけない。
まだ朝の早い時間。天気のいい、雲一つない空。僕ともうひとりプロの熱気球ニストを乗せて、熱気球は空に飛んだ。そして熱気球は上昇した。どんどん上昇した。どんどん。
もう世界最高峰のエベレストを超えたくらいの高さになっただろうか?
僕は特に何も感じることなく:感動とかそういうものだ。普通はするのだろう?僕にはその機能が無い。まあホッとはしていたかもしれない。これで一年間の強迫観念も満足するだろう。さあ、明日からは真面目に暮らそう。ちゃんと働いて、そろそろ新しいPCが欲しい。そんなことだけ考えていたかもしれない。
しばらくして、一緒に乗っていたのにそれまでまったく沈黙していたプロの熱気球ニストが突然に大きな声をあげた。
「ほら、あそこ!あそこ見てください!」
何事かと僕がそちらを見るとそこには、空のある一部分に青と水色の二色のコントラストがはっきりと分かれている部分があった。
「スゴイでしょ。こういうのが見れるから、熱気球はやめられないんですよね」
「あんな事が本当にあるんですか?」
「あそこは、新しい道なんです」
?。この熱気球ニストが何を言っているのかわからなかった。
「あそこが道?トンネルか何かですか?」
「いえ、隧道です」
熱気球ニストのその言葉を聞いて「ああ、よかった」と僕は思った。その一言で僕はこの熱気球ニストの女性の事を好きになることが出来たからだ。もう僕が彼女が自分をどう思っているのか?それを考える必要は無いと思う。
「こちら側はもうすぐ、エイリアン3みたいになりますからね」
熱気球はゆっくりと吸い込まれるように、そのコントラストの方に近づいていった。
エイリアン3の映画見たこと無いです。