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マイホーム・ザ・アトラス! ~新婚旅行は、快適無双なキャンピングロボで~【毎週土曜か日曜に更新!】  作者: 雨宮ソウスケ


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第7話 初めての街

 ――ハロンズ王国、王都グラスタ。

 そこは、人口が二百万人を超す近隣最大の大都市である。

 城砦都市でもあり、その防壁の高さは百メートルを超える。最大クラスの災害獣の襲撃にも備えた巨大防壁だった。

 中央区には都市の端からでも見える天を突くような巨大な王城。広大な都市内には鉄道網も敷かれ、魔導列車(マナトレイン)も活用されている。この都市が発展している証だ。

 しかし、百人単位の大人数や、大量の物資を運搬可能な魔導列車(マナトレイン)は便利ではあるのだが、魔獣や災害獣の襲撃を警戒して別都市にまでは鉄道を敷けてはいなかった。


「まあ、それはほとんどの都市がそうだな」


 愛機を動かしながら、操縦席でユージンが言う。


「外部からの流通や移動は魔導車輛(マナモービル)頼りだ。だから運送屋や行商人は多いんだ。重要だからこそ護衛には傭兵だけでなく、セラのような騎士がつくこともあるんだ」


「へえ~」


 と、後部シートのトワが声を零した。ただあまり説明は聞いてはいないようだ。その金色の瞳は操縦席に映される外の光景にくぎ付けになっていた。

 そこにはグラスタの街並みが映っていた。

 分厚い防壁をくぐり、《アトラス》は王都の中へと入っていた。

 敷き詰められた石畳に、規則的に並ぶ三角屋根の六階建ての建屋。道幅は魔導車輛(マナモービル)が走ることも考慮してかなり広い。歩道と車道が分かれており、人通りも多い。一階に店舗を開いている建屋も多かった。


「……街だ」


 トワが、ポツリと呟く。


「人だ。自動人形(オートマトン)じゃない。いっぱい人がいる。これが今の地上の街……」


「……ああ。そうだ」


 ユージンは瞳を細めた。妻の胸中はどれほどのものか。


「すまない。トワ。すぐに見物させてやりたいんだが、一旦、《アトラス》を別の場所に預けないといけない」


「え? どういうことだ?」


 トワがそう尋ねると、ユージンは「こればかりはな」と呟き、


「大規模な都市ほど街中を魔装機兵(アームドギア)で移動することは原則的に禁止されているんだ。騎士や衛士は例外だが、民間の機体は一定の区域のみに行動は限られている」


 それは俗称で『工場区』と呼ばれる区域だった。

 正式名称はそれぞれの都市であるのかもしれないが、どの都市においても大体は防壁のすぐ傍に築かれており、そこには来訪者用の魔装機兵(アームドギア)の有料格納庫があった。しかし、そこにあるのは格納庫だけではない。

 危険な外から来た以上、魔装機兵(アームドギア)が損傷している場合も多い。そのため、自然とそこには工房や整備工場も造られ、中には魔装機兵(アームドギア)自体を販売している店舗もあった。


 そんな彼らをターゲットにした飲食店も集まり、そこは大都市の中にあって独立した工場街のような場所だった。


 なお、工場区に対し、それ以外の場所を『一般区』の俗称で呼んでいた。


「一般区に入るには、まず《アトラス》を格納庫で待機させるしかない――」


 と、ユージンが言いかけた時だった。


『あの、ユージンさん。トワさん』


 不意に外から声を掛けられた。

 見ると、そこには《ソレイユ》がいた。声はセラフィーナのものだ。

 近くには、ここまで同行した商隊の魔導車輛(マナモービル)が一時停車している。


『私たちはこのまま騎士団の隊舎に行こうと思います』


 セラフィーナはそう告げた。

 騎士である彼女はそのまま街に入れた。工場区に向かう必要はない。


『ありがとうございました。本当に大変お世話になりました』


『気にすることはない』ユージンは答える。


『外では助け合いが基本だからな。それよりも伝えておこう。セラ。君が生き残ったことは断じて悪いことではない』


 一呼吸入れて、


『決して自分だけが生き残ったことを気に病まないことだ』


『……はい』《ソレイユ》が頷いた。


『お気遣いありがとうございます。私も騎士です。亡くなった彼らもそうです。私はその覚悟を抱いて生きていこうと思います』


『……そうか』ユージンは瞳を細めた。


『では元気でな。セラ。縁があればまた会おう』


『元気でな! セラ!』


 トワも声を上げた。《ソレイユ》は再び頷いて、


『はい。ユージンさん。トワさん。お元気で。またどこかでお会いしましょう!』


 そう返した。

 ややあって商隊の魔導車輛(マナモービル)が動き出す。《ソレイユ》も後に続いていった。

 ユージンたちは、彼女たちを数秒ほど見送ってから、


「では、俺たちも行くか。トワ」


「うん。ユージン」


 工場区へと《アトラス》の足を向けた。



 三十分後。

 ユージンとトワは、一般区の歩道を並んで歩いていた。

 シドはいない。念のために《アトラス》で待機していた。

 トワは、ユージンの左腕を豊かな双丘に納めつつ、両手をしっかりと絡めていた。

 仲睦まじい様子だが、トワの表情は少し緊張している。


「流石に緊張するか? トワ」


 ユージンがそう気遣うと、トワは「……うん」と頷いた。


「千年ぶりだしな。数人ぐらいならいいが、ここまで多いと少し人が怖い……」


 元々ここは人通りの多い大通りのようだ。

 それに加えて、トワの美貌に惹かれて視線も集まっていた。


「……ユージン」


 トワは不安そうな視線を向けて、ユージンの顔を見つめた。


「……これからどこに行くんだ?」


「ああ。まず先に用を済ませておこうと思ってな」


 ユージンは答える。


「必要なのは食料だ。少し心もとないからな。補填しておきたい」


 一拍置いて、


「次に地図だな。これも購入しておきたい。この辺りは俺も来たことがない場所だった。この国がどの辺りにあるのか知っておきたいからな」


 と、告げる。

 ハロンズ王国についてはセラフィーナから話を聞いていたが、隣国や近隣都市の名前も聞いたことのないものばかりで、そもそも地名からして初めて聞く名前だった。


「……ん。そうか」


 一方、トワはユージンの左腕をより強く掴んだ。


「買い物をするんだな。それは少し楽しみだ。それも千年ぶりだから」


「……まあ、お前は完全に自給自足の生活をしていたしな」


 三年間の《奈落(アビス)》での生活を思い出しつつ、ユージンは苦笑を浮かべた。

 あの地下世界で、トワは自らが造り上げた自動人形たちを使って、小規模ながらも農業や家畜の飼育をしていたのだ。個人で完結していた世界だったので売買の必要性もなく、当然ながら店舗があるはずもない。


「千年ぶりの買い物か。なら楽しもう。俺がエスコートしよう」


 ユージンは、トワの頬にそっと触れた。そのまま耳にも触れる。彼女が怖がっている時によくやるスキンシップだ。トワは少し緊張が解けたように「……ん」と瞳を細める。


「トワが大人数を苦手だと感じるのは理解できるが、もっと気楽に構えたらいい。ここにはトワを知る人間なんていないんだ」


 そう言ってユージンは微笑むが、そこで少し申し訳ないように眉をひそめて、


「ただ、買い物の前に確認しないといけないことがあるな」


 そこで「さて」と呟いて足を止めた。トワも足を止める。

 そこは国営魔導車輛(マナモービル)――運搬バスの停留所だった。


「場所は事前にセラから大まかに聞いていたが……」


 ユージンは双眸を細めて呟く。


「いずれにせよ必要なのは金だな。寄ってみるか。開拓者(シーカーズ)ギルドに」








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