⑨ 集団テレポート
一瞬ヴン!という音がしたかと思うと、もうそこは洛陽宮中の、文帝の眼前であった。
「な、何奴!?」
文帝は慌てた。
それはそうだろう。
何も無い所に、突然四人のニンゲンが出現したのだ。だが、そのメンバーを良く良く見ると、内二人には見覚えがあるのに気がついた。
「うん?そちらは以前拝謁に来た、狗奴国の者ではないか?」
「はっ、如何にも。陛下にはご機嫌麗しゅう…。」
「…ちょっとイイかしら?」
隣に居た少女が、不躾にも話に割って入って来た。
「なんじゃ小娘。朕の話に割って入るとは、不届き者よ。」
「…その不届き者が倭国を平定した旨、お伝えしに上がりました。」
「なん…じゃと?」
文帝は漫画"ブリーチ"のキャラクターのような返事をした。
「アナタが狗奴国のミクコに命じたことを、この私がやり遂げたと申し上げているのです。」
隣に居た狗奴国の代表も申し添えた。
「それは、本当の事でございます。ですから、我が国王の家族を、返していただきたいと、思う所存でございます。」
「そのようなこと、ニワカには信じ難いな。」
文帝は当然の疑問を口にした。
「では、如何なる事を示せば、信じていただけるのでしょうか?」
カグヤ・ヒミコは食い下がる。
「そうさのう…そこに居る我が国イチの怪力を誇る、衛兵を倒してみせよ。さすれば、信じてやっても良いぞ。」
文帝はそう言って意地悪く笑ったが、カグヤ・ヒミコはむしろホッとした。
「お安い御用でございます。陛下、男に二言は有りませんね?」
「言うではないか。では、やって見せよ。」
すると早速、槍を持った身長2mはあろうかという、屈強な衛兵が、入り口の扉を背にして立ち塞がった。ここから誰一人逃さないぞ、という構えだ。
カグヤ・ヒミコは逆に、文帝に背を向けて立った。
そしてそのまま、ツカツカと衛兵に向かって歩いて行く。
「エイ!」
気合いの掛け声とともに、衛兵は容赦無く、近づいて来た彼女に向かって、槍を前に突き出した。
カグヤ・ヒミコは、その切っ先を掌で受け止め、そのまま押し返した。
鋼鉄製の槍は、まるで飴細工のように、グニャリと曲がってしまった。
そして彼女は、サッと衛兵の懐に潜り込むと、両手を素早く突き出して、瞬時に掌底で、彼を突き飛ばしたのである。
大男の衛兵は後方へすっ飛んで行き、扉をぶち破って廊下に転がり出てしまった。
その間、僅かに10秒ほどの出来事であった。
衛兵は、何が起こったのか理解できず、その場に尻もちついて、目を白黒させていた。
「ご満足いただけましたか?陛下。それとも…まだヤリますか?」
カグヤ・ヒミコは不敵に笑った。




