⑧ チカラの差は歴然
途中、カグヤ・ヒミコに向かって、槍や矢が多数飛んで来たが、彼女はチカラを使って、それらを全て、各々の持主の額に、正確に突き刺さしてしまった。彼女は、飛び道具を使う相手には、容赦しないのだ。
そう言う訳で、彼女の通った後には、死体が累々と横たわる事になったのである。
それを見た他の兵士たちは、皆恐れをなして、逃げ出した。
地上に降りて、死体の山を踏み分けながら近づいて来る、巫女姿の少女を見て、総大将のミクコはいよいよ震え上がるのだった。
「…キサマ、一体何者だ!?」
彼はやっとのことで、そのセリフを絞り出した。
「私は…ヒミコ。神の使いよ。警告はしたわよね?だから恨みっこなし。コレに懲りたら、二度とこの地方の領土を、奪いに来ないでくれるかしら?」
「そう言う訳にも行かんのだ。コレは上の者から言われてやっていることで…ワシも彼等に人質を取られていて、簡単には断われんのだよ。」
「分かったわ。じゃあ私が、その上の方と話をつけましょう。案内を頼めるかしら?」
「良いだろう。明日にでも。」
「決まりね。我が村の代表者も決めておくから、アナタは明日、案内人を寄越しなさい。ただし、この話にもし、嘘偽りがあったなら、どんな目に遭うか…想像出来るわね?」
「心得た。」
総大将は最後にそれだけ言うと、たった一人でスゴスゴと帰って行った。
カグヤ・ヒミコは再び空を飛んで、村人たちの待つ場所へ舞い戻った。村人は、ヤンヤ、ヤンヤのお祭り騒ぎだった。何しろ彼女が、たった一人で敵軍を壊滅させてしまったのだから。
彼女はすぐに、村長5名を招集し、先程判明した事情を説明した。そして明日に向けて、代表者の選出を考えた。
その結果、ヒミコと村長の代表者1名で行く事となった。留守中の祭宮の管理は、各種デバイスを貸し与えて、イヨにヒミコのフリをさせて、任せることにした。
翌日、約束を守り、狗奴国の代表者兼案内人の2名が、村にやって来た。
その二人にカグヤ・ヒミコが訊いたところ、目的地は中国だった。曹魏の国の文帝に会いに、首都洛陽の宮殿に行くとのことだった。
狗奴国の二人は船の準備もしてあると言ってきたが、カグヤ・ヒミコは断わった。
そんな船に乗って行けば、どれだけ時間がかかるのか分からないし、命が幾つ有っても足りないのである。
それに、それだけ聞けば、座標はほぼ確定できるので、彼女は4名で瞬間移動する事にしたのだ。
またもやボディバッグから、4名様用の転送デバイスを取り出しすと、彼女は早速、村長宅の作戦会議をしていた部屋に、器材のセッティングを済ませた。
ソレはフラフープの外側に五つの鏡状のモノが付いたような形をしていた。
彼女は、4名でその狭い輪の中に立つように指示して、念のために、皆で手を繋がせたのだった。
「コレは、とんだ呉越同舟だな。」
村長が呟いた。
「黙って目を瞑って集中しなさい。亜空間酔いするわよ。」
カグヤ・ヒミコはそう言うと、座標を入力して、装置のスイッチを入れたのだった。




