⑦ デバイスの活用
やがて長の代表から、例の敵軍が、コチラに向かっている、との報告が来た。
「じゃあ、ちょっと出かけて来るわ。」
「道中、お気をつけて。」
「ありがとう。昼食前には戻るからね。」
「…えっ!?」
「ここでホントに言いたいセリフは"こんなの朝飯前よ"だったんだけど…今、食べちゃったから。」
そう言って笑うカグヤ・ヒミコを見て、イヨは目を丸くするのであった。
村長の屋敷に案内されると、5名の長が車座になって、今まさに、作戦会議中だった。
彼等の真ん中に、茶色い植物の皮のようなモノに書かれた、大きな地図が広げられていた。
ソレを見ると、敵軍のおよその布陣が分かった。
「いつもこの布陣なの?」
カグヤ・ヒミコが尋ねると、代表が答えた。
「そうなのです。まあ、もっとも、この辺りの地形のせいで、コレしかヤリようが無いのですが…。」
「相手の手の内が見えてるのに、毎回ヤラレてる訳?」
「…面目無い。ヒミコ様、神の使いとして、何とかして頂けますか?」
「もちろんよ。任せて。ただ出来るだけ、無駄な殺生は避けたいわ。弱い者イジメはキライなのよ。」
「はあ、そういうモノですか…。」
カグヤ・ヒミコは、屋敷の外に出ると、ボディバッグから、超小型のドローンを取り出した。
長たちは皆、ゾロゾロとついてきて、彼女の行動を見守っていた。
彼女は、ソレの電源を入れると、カチューシャ型のリモコン装置を頭に取り付け、脳波コントロールを使って、早速ドローンを飛ばした。
ドローンは一直線に、敵の布陣の総大将ミクコの所へ飛んで行き、その直上で静止した。
ドローンのスピーカーを通じて、カグヤ・ヒミコは徐ろに、ミクコに声を掛けた。
「始めまして。私は先日、5つのクニをまとめて女王となった、カグヤ…ヒミコです。」
突然降って来た女性の声に、ミクコはアタフタ、キョロキョロした。
そしてその声が、頭上からのモノだと気がつくと、今度はビクビクしだした。
その様子は、カグヤ・ヒミコの、手元の勾玉型デバイスから映し出される、立体ホログラムで、逐一確認出来た。
それを横から見ていた長たちは、思わず「おおっ!」と声を上げた。
それに構わず、彼女は話し続ける。
「今直ぐに撤退するならそれも良し。ヤル気なら、私が許しません。」
すると、ミクコが立ち上がって、前に向かって、指揮棒のようなモノを振るのが見て取れた。それは、全軍勧めの合図だった。
「…決まりですね。あまり気は進みませんが、彼等には、少々痛い目に合ってもらいましょう。」
カグヤ・ヒミコはそう言うと、その場でフワリと飛び上がって、そのまま敵陣総大将に向かって、一直線に飛んで行った。
村の長たちを始めとする皆の者は、口をアングリと開けて、ただそれを見ていたのだった。




