⑤ 誤解からシャーマン
カグヤが飛び出して来たポータルの出口は、丸太を組み合わせて作った簡素な鳥居だった。
それは、昔から村人がよく神隠しに合う場所を目印にして、祀ったモノだった。
当時の日本国内には、そういう場所が数多くあったのだ。そしてその中でも、強力なチカラを持つ場所が、長い歴史の間に、大きな神社になっていくのだった。
彼女が少々ふらつきながら出現した瞬間、目の前には、跪いて祈りを捧げる、数十人の村人たちの姿があった。
「初回ジャンプ終了。次回のジャンプに必要な満充電まで、太陽電池で10日かかります。」
ネックレス型デバイスから、AIが報告して来た。
出た場所は、間違い無くガイアのようだが、時間的には過去のようだった。
一番前で祈っていた、5名の長らしき者が頭を上げた。
「おお、皆の者。巫女様が現れたぞ。」
カグヤはその誤解を、直ちに否定したかった。
「私は巫女ではありません。むしろ戦士なのです。非・巫女なのです。」
「…ヒミコ様とおっしゃるのですね。どうか我々村人をお助けください。」
「ヒミコじゃなくて、カグヤ。私はカグヤよ。」
「…カグヤ・ヒミコ様ですね?」
「違う、違う。フルネームはカグヤ・イシュタルよ。」
「…イシュ?」
どうやら、万能翻訳機能の調子が良くないらしい。
「ああ、もう、ヒミコでイイわよ。ところで、ここはジパングで合っているのかしら?」
「ヒミコ様、ここは倭の地域の、邪馬台国にございます。」
「ああ、この時代のジパングの呼び名って訳ね。イイわ。それで、何か困ってるって?」
彼女は勾玉デバイスから表示されたホログラム画面で状況を確認した。今は西暦230年4月15日午前9時ちょうど。ここは日本国福岡県糸島市ね。最初に私が、この国でお世話になった頃より、700年程前かしら。
「連日、南の国から攻め立てられて、このままでは、各村の土地を全て奪われてしまいそうなのです。ヒミコ様、どうかお助け下さい。」
「…ああ、良かった。それなら、私の得意分野よ。」
カグヤはホッと胸を撫で下ろした。
雨を降らせろとか、死んだ者を蘇らせよとか、言われたらどうしよう。と、内心ビクビクしていたのだ。
とにかく神様扱いされている方が、何かと都合が良い。早々に村人たちの願いを聞いて、取り敢えず、10日間無事に過ごせる居場所を、確保しなくては。カグヤはそう考えた。




