④ 初めてのポータル
伝説のゲート…つまり時空間移動装置のポータルは、古都の中心にあるニビル史上、最古の神殿内にあった。
その神殿の名を"アヌンナキ"という。
カグヤはそこに、父の口添えでやって来た。
所謂、コネというヤツである。
その装置は本来、太古の昔から、神官が管理し扱うモノで、一般人は立入禁止の区域内に鎮座していた。
今回の旅の目的が"サン・ジェルマンの下僕の調査"という名目なので、この国の最高神官から、特別に使用が許可されたのだった。
神官の面々も、惑星移動のカラクリを知りたい気持ちは、カグヤと同じだった。
しかし、ぶっちゃけ、誰一人勇気を持って調査に出向こうなどと、考える者は居なかったのだ。
しかし、そんな所にカグヤの申し出である。
彼等にとっても、正に"渡りに船"の話だった。
いよいよカグヤが出発する事になった今日、父は仕事で手が離せず、見送りには母が来てくれていた。
「カグヤ、アナタより強いモノは、この世にそうそう居ませんが、気をつけてね。」
「はい。お母様もしばらく会えなくなりますが、どうかお元気で。お父様にも宜しくお伝え下さい。」
「これは、そのお父様からの餞別です。」
母はそう言うと、カグヤにネックレス型のデバイスを渡した。
「何でしょう、コレは?」
「これは時空転位ガイドや、万能翻訳機能などがついた、勾玉型のマルチデバイスだそうです。旅のお供にという事でした。」
「助かります。ありがとうございます。」
「…それからコレは私から。」
母はそう言うと、ボディバッグをカグヤに渡した。
「コチラのバッグにも色々入れておきましたから、困ったことがあったら活用してね。」
「何から何までありがとうございます。それでは行って参ります。」
カグヤはそう言うと、時空転位装置の方に向かって歩いて行った。
その装置は、大きなドーナツを半分に切って、床に立てたような形状をしていた。
ドーナツの外周には、細かな回路や配線が、複雑に絡みあっている。
神官がガラス越しの隣の部屋で、必要な数値を入力してオペレーションしている。カグヤの母も、その部屋で最後の見送りをしていた。
スピーカーから神官の声が聞こえて来た。
「惑星ニビル周辺に遺された、"アナタの想い人"のチカラの残滓を手掛かりに、時空ジャンプを行います。恐らく一度のジャンプでは辿りつけないので、違う場所に出たら、最寄りのポータルから、再度ジャンプを繰り返して下さい。いにしえの観測によると、目的地の、惑星ガイアのジパング地方には、あちこちにポータルがあるようなので、困らないはずです。」
「了解しました。」
カグヤは簡潔に返答した。
どういう条件にせよ、今更後に引く気は無いのだ。
「それでは、10秒前から、カウントダウンを行ないます。よろしいですか?」
「ハイ。」
「10秒前…9、8、7、6、5、4、3、2、1…今です!」
カグヤは、大きな半分のドーナツのような形のゲート…ポータルの中に飛び込んだのだ。




