② 懐かしのニビルへ
ケプラー星系に到着するまでは、若干の時間を要するので、カグヤたち家族は、一旦与えられた船室で、待機することになった。
カグヤは部屋のソファで寛ぎながら、過去の故郷での思い出に浸っていた。
かつて私に果敢に挑んで来た、キンタロウさんやモモタロウさんには、残念なことをしたわ。
もう少し手加減してあげて、伴侶に迎えてから、もっと鍛えてあげたら、戦力になったかも…。
ううん、やっぱり私に負けるような殿方では、この広い宇宙では、生きて行けないわ。
あれは、正しい行いだったのよ!
結局、カグヤは自分にそう言い聞かせるのだった。
それより、やっぱり今後の問題は、"鬼"よね。
爬虫類族の中でも、特に好戦的な一族を、彼女の世界では、"鬼"と呼んでいた。
ウチの近所の鬼は、私があらかた駆逐したけど、先に故郷を脱出した連中も、居るかもしれないしね。
そいつらがもし、ケプラー星系で幅を効かせていたら、やっつけてやらなくては。
それはそうと…先程の話に出て来た。サン・ジェルマンの下僕とは一体、どんな人物なのだろう。無事に両親に逢えたことと、故郷に戻れる嬉しさで、うっかりスルーしてしまったけど…独りで惑星一つ移動させるとか…よくよく考えたら、とてもニンゲン技じゃ無いわ!
いつか味方になってくれればイイけど、敵にまわったら、この私ですら、勝ち目が無いかも知れないわ…ああ、だからこそ、私の花婿候補にピッタリじゃない!必ず探し出さなくては!
戦闘民族である彼女は、悲しいかな、強いか弱いかの尺度でしか、他人の価値を推し量れ無いのであった。
「ねえ、お母様。」
「なあに?カグヤ。」
「さっきの話に出て来た、サン・ジェルマンの下僕っていう方に、私会ってみたいわ。」
「それはつまり、花婿候補として、試合をしたい、という意味ね?」
「もちろん、そうよ。惑星一つ、時空の彼方へ跳ばせるなんて、きっととてつもなく、強い殿方に違いないわ。」
「逆に、強すぎて、相手にしてもらえないかもしれないわよ?これまではアナタが強すぎて、うっかり相手の方の命を奪ってしまったように。」
「…それでも、会ってみたいわ。」
「戦闘民族のサガね。分かったわ。お父様に頼んで、会う方法があれば、調べていただきましょう。」
「ありがとう!お母様、大好き!」
「なによ。現金な子ねえ。」
そう言って久しぶりに、母娘で笑ったのだった。




