⑮ 朝のウォーキング
玄米ご飯に、味噌汁に、京野菜の漬物、そして緑茶。
貞子の祖母の用意してくれた朝食は美味しかった。
というか、カグヤにとっては、どこか懐かしい感じがしたのだった。
それは多分、記憶のどこかに隠されている、輝夜姫時代の朝食の味が蘇るせいなのだろうと、彼女は自分なりに分析していた。
単純な甘い、辛い、とは違う繊細な味わい。そうか。コレが、旨味と言うモノなのね。などと思ったりもした。
流石、先程の世界から1500年以上経過しただけのことはあるなあ。と、変に感心したりもした。
兎にも角にも、シンプルに美味しかったのであった。
「ご馳走様でした。大変美味でした。」
カグヤは思わず大きな声でそう言った。
「まあ、まあ、そんな大袈裟な。」
貞子の祖母は、そう言いながらも、満更でも無い様子だった。
「せっかくですから、腹ごなしに、近所を散歩しませんか?」
貞子にそう誘われて、カグヤも同行することにした。
ニビルとガイア。
出自の違う二人の巫女姿の美しい少女が、連れ立って下鴨神社周辺を歩いた。やはりちゃんと風呂に入って、身だしなみを整えたカグヤは、ひときわ美しく、道行く人々の視線を集めたのだった。
「同じ女性として、ちょっと嫉妬してしまいます。」
貞子にそう言われてカグヤも困った。
「私の容姿が、たまたまガイアの殿方の好みに合った、というだけの事ですよ。」
カグヤは変な謙遜の仕方をした。
「それにしても…。」
カグヤは話題を変えた。
「…立派なものですね。コレが下鴨神社というモノなのですね?」
「ええ。確か、京都で最も歴史が長い、神社のはずですよ。」
「…だからポータルとして、色々な種族に使われてしまうのですね?」
「最近は、結界のチカラを強めたので、オカシナ訪問者も、かなり減りましたけどね。」
「…まあでも、私もそのオカシナ訪問者の一人なんですよね?」
「カグヤさんは、イイんです。天下の輝夜姫なんですから。むしろ大歓迎ですよ。」
「でも、最初の印象は、薄汚れた哀れなオンナだったんでしょ?」
「…もう、それは言いっこ無しですよ。誰だってあの年季の入ったボロボロの服を見たら…。」
「うん、今は私も、そう思うわ。」
カグヤがそう言うと、二人で笑った。
同じ巫女の衣装を借りたせいか、カグヤは何だか貞子に親近感が湧いた。
よくよく話を聞いてみれば、彼女も巫女で有りながら、有事の際は、氷雪系のチカラを使って闘う、戦士の一面も持っているとのことだった。
なるほど。シンパシーを感じる訳だ。




