⑬ バーサス剣豪
その夜のことだった。
カグヤがふと目を覚ますと、月明かりの差す中、枕元に誰かが座っているのが分かった。
「そこに居るのは誰?」
カグヤほどの実力者ともなると、如何なる不審者も怖くはないが、幽霊だけは"暖簾に腕押し"だから厄介だ。ソレだけは勘弁してくれよ、と思っていると、ソイツが口を開いた。
「起こしてしまったのなら、済まない。拙者、剣豪ムサシと申す者。そこ元と手合わせ願いたく、ここでこうして待っていたのでござる。」
それを聞いて、カグヤは布団の上に身体を起こした。
「どうして私が、強い男を探していることを、アナタは知っているのかしら?」
カグヤが尋ねると、そのムサシは、座敷の上座にある、神棚を指差して言った。
「昼間、あそこで、話の一部始終を聞いていたからでござる。」
「…アナタ…神様なの?」
「否!ただの式神にござる。」
「…?まあ、いいわ。旅のダメージも回復したことだし、少しなら付き合ってあげる。」
「本当でござるか?かたじけない!」
「そこの庭に出てヤリましょう。」
カグヤはそう言うと、先に立って縁側に出て行き、草履を突っかけて月明かりに照らされた庭に出た。
「先に言っておくけど、アタシ、強いわよ?」
「望むところでござる。」
「すぐに死んだりしないで、楽しませてくれるんでしょうね?」
「誠心誠意、全力でヤラセてもらおう!イザ、参る!」
ムサシはそう言うと、イキナリ二刀を抜いた。
そして、抜き身の二刀を両手に構えたまま、ジリッジリッと近づいて来る。
自分からバトルを志願するだけあって、なるほど、隙が無いわね。カグヤは思った。どちらの剣から振って来るのか、予想が難しい。
次の瞬間、ムサシは「エイ!」という気合いと共に、何と両手の剣をクロスするように、カグヤに向かって同時に振り下ろした。
彼女はソレをギリギリで躱した…はずだった。
しかし気がつくと、寝巻替わりに借りた浴衣の帯が切られて、前がはだけて居た。
彼女は下着を身につけて居なかったが、それどころではない。今は命の遣り取りの最中なのだ。
それより、4月とは言え、まだ夜は冷える。
早く決着をつけて布団に戻りたかった。
「仕方無いわね。」
カグヤはもう少し相手の出方を見て、遊んでいたかったが、本気を出すことにした。
彼女は両手を前に突き出し、掌と親指で三角形を作ると、そこに向かって、「發っ!」と気合いをかけた。
すると掌から、断続的に三角形のエネルギー弾が打ち出され、ムサシに向かって飛んで行ったのだ。
ムサシは全てのエネルギー弾を二刀で弾き返しつつ、前進して来る。そしてもうカグヤが避けられない距離まで詰めると、更にそこから二刀で斬りかかって来た。
彼女は何と、その刃を掌で受け止めた…ように見えた。
その瞬間、何故か「ガキン!」という金属音が辺りに響き渡った。
彼女が両腕に着けていた腕輪型デバイスから、電磁防壁が現れたのだ。
そのまま二人は、純粋にチカラの押し合いになだれこんだ。腕力は拮抗している。お互いそのまま前にも後ろにも動けなくなった。どうやら単純なフィジカルパワーは互角のようだった。




