⑫ 巫女とトラベラー
カグヤが風呂から上がると、バスタオルと巫女の衣装が用意されて居た。
「これじゃあ、いよいよ巫女じゃないなんて、否定出来なくなるわね?」
彼女はまた独り言を言って笑った。
カグヤがドライヤーで髪を乾かしていると、先程の巫女が入って来た。
「お風呂ありがとう。お陰でスッキリしたわ。」
「いえ、いえ。困った時はお互い様ですよ。あの、それで、先程のお衣装は…?」
「ああ、アレはもう要らないわ。捨ててくれて構わないから。」
「ああ、そうなんですね?」
「それで、お世話になるついでに、私の事情を説明したいんだけど、少しお時間よろしいかしら?」
「ええ、もちろんですとも。」
その後カグヤは、広い座敷に案内された。
畳敷きの部屋に座卓を挟んで、座布団を敷いて座るのは初めてだったので、ポジションを決めるのに、少々苦戦した。
「まずは、自己紹介から。はじめまして。私の名はカグヤ・イシュタルといいます。惑星ニビルからやって来ました。」
「こんにちは、私は藤原貞子です。隣の下鴨神社で巫女をやってます。」
あれ?この子、惑星ニビルのくだりを、顔色一つ変えずにスルーしたぞ?カグヤは少し驚きつつ話を続ける。
「実はどうしても逢いたい殿方が居て、遥々ケプラー星系からポータルを使い、時空ジャンプを繰り返してここまで辿りつきました。」
「そうですか。それは大変でしたね。」
そう答えながら、やはり貞子は平然としている。
「…あのう。」
「はい、何か?」
「私の話に全然驚かれないんですね?」
「ああ、それは…この屋敷と隣の下鴨神社には、割と頻繁に、そういう類の、異世界からのお客様がいらっしゃるので。」
「えっ?」
コレには、むしろカグヤの方が驚かされた。
「つい先日など、こんなことがあったんですよ。」
貞子はそう言うと、サン・ジェルマンらと体験した冒険譚を、カグヤに掻い摘んで話して聞かせた。
その話の中に、爬虫類族が出て来たことが、カグヤを特に驚かせた。
アイツら、こんな遠くのガイアまで来て、悪さをしていたのね。許せないわ。などと思ったのだった。
「爬虫類族なら、惑星ニビルにも居るわ。ろくでもない連中よね。」
そんな事で共感し合う二人だった。
「ところで、アナタの逢いたい人は、どんなお方なんてすか?」
貞子が尋ねる。
「それが、なんでも、サン・ジェルマンの下僕らしいんです。」
「えっ?私、サン・ジェルマンさんご本人とは、先日ご一緒しましたけど…。」
「それは…また奇遇ですねえ。でもそうか。だから時空ジャンプが、ココに繋がったのね?」
そんな事などを色々語り合った後、最終的にカグヤが貞子にお願いした。
「そういう訳で、あと20時間ほど、ここでご厄介になりたいのですが…いかがでしょうか?」
「良いですとも。お祖母様には、私からお話ししておきます。この座敷にお布団を敷きますから、どうぞごゆっくりお休み下さい。」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます。」
こうしてカグヤは その屋敷で一夜を明かすことになったのである。




