⑩ 陛下のジャッジ
「もう良い、それまでじゃ。認めよう。そなたはオナゴの癖に、とんでもない腕力じゃのう。」
文帝はむしろ喜んでいるようだった。
「ハッハッハ、愉快、愉快。是非、朕の側室に…いや、一個中隊与えて将軍に取り立ててやりたいぐらいじゃ。」
「それは平にご容赦を。我が祖国の太平のため、私は戻らねばなりませぬ故…。」
「良い、良い。面白いモノを見られて、朕は満足じゃ。そうじゃ、そちには"親魏倭王"の称号を与えよう。今後も故郷の平和のために、励めよ。」
「有難き幸せに存じます。狗奴国の家族も戻していただけますね?」
「無論だ。直ぐに手続きしようぞ。」
隣で代表の二人が小踊りして喜んだ。
「ヒミコ様、ありがとうございます。」
「いいのよ。これからは、邪馬台国と狗奴国は家族よ。」
「卑弥呼とやら。その名、しかと覚えておくぞ。」
この一言を残し、文帝は奥に引っ込んでしまった。
多分、楽屋ウラでは、冷や汗をかいて居るに違いないのである。
その後、金印やら鏡やらの、頼んでもいないお宝を大量に持たされ、帰って来た人質とともに、一行は直ちに帰国の途についた。"曹魏国としては、早々に帰ってもらいたい"という現場の雰囲気が、有り有りと伝わって来たのであった。
ガイアの童話に、コレと似たような話があったような…確かモモタロウ?などと、要らぬことを思い出すカグヤ・ヒミコであった。。
人数が増えてしまったので、帰りは瞬間移動という訳には行かなくなった。
結局、船員付きで、曹魏国の船が貸し出され、ソレで帰ることになったのである。
それは、邪馬台国の船より数段性能の高い船だったが、祖国に辿り着くまでに一週間を要した。
こうして、次の時空ジャンプのために必要な充電期間が、無事に?過ぎたのである。
邪馬台国に帰ると、カグヤ・ヒミコは、まず、イヨを労ってやった。
「ありがとう。お留守番、良く頑張ってくれたわね。何か困ったことは無かった?」
「特に何も…狗奴国も大人しくしていてくれて、助かりました。」
「ソレは何よりね。もっとも、ナニか仕掛けて来たら、この私が容赦しないんだけどね。…ところでイヨ、あなたに大事な話があるの。」
「はい。何でございましょう?」
「私はもう、次の時空に行かなくてはならないのよ。それで、今夜からアナタに、二代目卑弥呼になって欲しいの。」
「ええっ!?」
「こんな大切な事、アナタにしか頼めないの。お願いよ。」
「…そんな…無理です。」
「…やっぱり、このやり取りになるのね。じゃあ、こうしましょう。コレは、命令よ。」
「…ご命令とあらば。」渋々答えるイヨ。
「アナタが近い将来、困らないように、鬼道に使える色々なデバイスを、マニュアルと一緒にここに置いて行くわ。どれも太陽電池で機動するから、暫くの間は問題無いはず。アナタの弟と協力して、何時までも、卑弥呼の秘密を守り、その脅威が有効なように、振る舞うのよ。」
「お姉様、どうしても、行ってしまうの?」
「初めて"お姉様"と呼んでくれたわね?」
「ああ、申し訳有りません。つい…。」
「いいのよ。短い付き合いだったけど、私もアナタの事を、妹のように思っていたのよ。顔もどことなく似てる気がするしね…。」
「…。」
「とにかく、後のことはアナタに託すわ。邪馬台国の皆の事を、宜しくね?」
「お姉様は、これからどこへ?」
「私の愛しいヒトを探しに行くのよ。それこそが、オンナの幸せなの。」
「それは…分かる気がします。仕方が無いですね。」




