新たな任務
夜――。
街のビル群は、巨大な影の山のようにそびえ立ち、無数の窓からこぼれる灯りが夜空にちらちらと瞬いていた。
その頂のひとつ、ひんやりとしたコンクリートの屋上に、五つの影が並び立つ。
令和の月が、静かにその光を忍び装束に落とし、黒い布が銀色に縁どられて見えた。
遠くからは車の走る音、信号の電子音、そしてどこかの店のBGMが微かに混じって聞こえてくる。江戸にはなかった、絶え間ない街の息づかいだ。
ヨシロウが前へ一歩出て、低い声で言った。
「……行くぞ。令和の里に、笑顔を取り戻すために」
月明かりを受け、彼の手の中で刀が静かに抜かれる。
その刃には、まだ江戸の土の匂いと、人々のぬくもりが染みついているようだった。
「おーし、任務開始だな!」カズマが肩を回しながら笑うが、その声には少しの緊張が混じっていた。
「ふふ、また人助けできるかな。コンビニの店員さんもびっくりするかも」アヤメがくすっと笑う。
「油断は禁物よ。現代の闇は、江戸とは違う形で潜んでるから」ミオは真剣な目で街を見下ろす。
「でもよ、どんな闇だって、俺たちなら斬り払えるだろ?」タケルが拳を握りしめる。
ビルの下では、信号が青に変わり、人々が一斉に横断歩道を渡っていく。誰も空を見上げない。
五人はその様子をしばらく黙って見つめ――そして、視線を前に戻した。
令和の街に光を灯すのか、それとも令和の闇に呑まれるのか――
その答えは、まだ夜の中に隠されている。
「行くぞ!」
ヨシロウの掛け声と同時に、五つの影は屋上から闇へと飛び降りた。
風が忍び装束をはためかせ、月がその背を静かに見送っていた。